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平成14年度 福祉産業ニーズ調査
―高齢者の福祉用具利用者等に関する調査―
 川崎市経済局では,市内の福祉施設や居宅介護現場において福祉用具や福祉サービスに対するニーズを拾い,産業界へ情報提供することによって,新たな用具やサービスの創出を促進することを目的に,高齢者が日常生活を送る上で必要となる福祉用具〔(1)ベッド及び付属品,(2)床ずれ防止用具,(3)車椅子,(4)杖及び歩行器,(5)ポータブル・トイレ,(6)入浴用具〕及び福祉サービスについての聞き取り調査を実施しました。
調査対象 市内において福祉用具レンタルサービス等を利用している在宅高齢者及び福祉施設入居者とその介護者(家族等)
調査方法 調査員による訪問ヒアリング調査(全数) 
※国の「緊急地域雇用創出特別交付金事業」を活用
調査期間 平成14年5月〜(※約1ヶ月間)
回答数 404件

1.福祉用具について

(1)ベッド及び付属品(抜粋)
調査対象者のうち276人(68.3%)が利用。「介護用ベッド」で最も重視されているのは背上げ機能であり,介護度が高いほど一日の上げ下げの調整回数が多く,その調整操作に関しては,概ね"扱いやすい"としている。但し,介護度が低くなるに従って操作性に関する不満が多いことから,介助者が操作するのでなく,介護度の低い高齢者が自ら操作することを考慮することが必要といえる。
背上げ機能では,介護度が高いほど利用者の身体負担感が大きいことから,背上げ時の身体負担を軽減させる機能が求められている。

(2)床ずれ防止用具(抜粋)
調査対象者のうち49人(12.1%)が利用。調査では床ずれ防止効果が確かにあることが確認されており,エアー素材を使用する「ベッド用クッションパッド」とスポンジ素材の「円形パッド」に効果が見られる。これらは"蒸れ"を抑える素材として評価が高いようである。ちなみに,「ドーナツ型パッド」は,利用者の立場ではその効果がほとんど認められていない。
床ずれ用具には,体を容易に動かすことができる要素と蒸れを防止する素材が必要といえる。

(3)車椅子(抜粋)
調査対象者のうち210人(52.0%)が利用。車椅子は高齢者の移動手段として重要な用具であり,その用途は大きく二つに分かれ,介護度「3」までは屋外での使用が中心であり,介護度「4」以上では室内での使用が中心である。車椅子は欧米の生活様式で開発されており,多くは屋内外の区別をせずに開発されていることから,室内での使用を考えた場合,日本の住宅事情(部屋の広さ,和室等)を考慮する必要がある。屋外での使用に際しては,"楽しい"要素が求められている。
また,利用者の41.0%が利用時に危険を感じた経験があるとしている。「どこが痛くなるか」の質問に対しては,「腰」と「お尻」とする回答が多い。様々な状況を想定して安全性,快適性を再確認する必要がある。

(4)杖及び歩行器(抜粋)
調査対象者のうち262人(64.9%)が利用。杖に関しては全体的に満足度が高く,高齢者にとっては安心感を与える用具となっている。しかしながら,「滑る」や「不安感」などを訴える高齢者もおり,杖先の形状や材質・加工方法等,更なる研究が必要と考えられる。
意外にも利用が少なかったシルバーカー(手押車)や歩行器に関しても,高齢者が外出時に利用する用具だけに更なる改良が必要といえる。

(5)ポータブル・トイレ(抜粋)
調査対象者のうち80人(19.8%)が利用。ポータブル・トイレに関しては,部屋の中に置いておくことが必要となるため,脱臭機能や部屋の中での違和感のないデザイン・配色の研究も必要である。
プライベートな問題であるため,高齢者が自ら操作できることも開発のポイントになると考えられる。

(6)入浴用具(抜粋)
調査対象とした入浴用具15品目(シャワーチェア,浴槽内シート,風呂昇降機等)について,6割以上の回答者から「安定感」があることが認められているが,入浴そのものに対する不安感がぬぐい去られているわけではなく,浴室での移動や浴槽からの出入りなどへの課題も残されている。


2.福祉サービスについて
 
 介護サービスに関しては全体の68.8%が概ね満足としているが,訪問介護については,1日の訪問時間が短いことと訪問頻度が少ないことが指摘されている。高齢者は身体的なサポートを受けるだけでなく,「話し相手」や「散歩」などの精神的なサポートを求めている。
「デイサービス」や「ショートステイ」,「移送サービス」に関する回答も多く,高齢者も外に出て人的交流を求めているようである。受入日数が少ないことや施設が少ないことも指摘されており,また,どこに施設があるのかという情報提供も不十分である。

3.今後の方向性について

(1)高齢者が自立した生活を送ることができるための福祉用具づくり
@ 高齢者の福祉に関しては,いつまでも元気で自活できることが最も重要な課題となることから,介護度に応じた福祉用具の開発が求められる。
A 世界各国で開発されている便利な福祉用具を,海外との産業交流などを通じて,日本人の体力・体格・生活様式に改良するような開発も求められる。

(2)高齢者が安心して暮らすことができるための生活支援
@ 毎日の食生活を支えてくれる身近な買い物拠点
A 散歩や買い物ついでに会話ができるコミュニティー空間
B 生活必需品を届けることできる御用聞き(宅配)体制
C 地域住民や子供たちと交流ができる交流拠点
D トラブルを知らせる緊急通報体制と即座に対応できる介護及び医療体制
E 日常の健康管理体制及び動けないときに面倒をみてくれる介護体制
F 高齢者が歩きやすい道路・歩道・店舗の整備

産業界としては,常に利用者側の視点に立って,実際に使ってみたいと思わせるような,安全性,機能性,操作性,ファッション性に優れた福祉用品や利便性の高い福祉サービスを,利用者の声を拾いながら開発することによって,急速に進展する高齢化社会をビジネスチャンスとして捉えて新たな市場を創造していくことが必要である。


 経済局 産業振興課 新事業創出担当 電話:044−200−2313
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