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第3部 「県内で実施したサービスロボットの実証実験の成果」

[テーマ]
ロボット実証実験実行委員会(構成員:神奈川県、川崎市産業振興財団、かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会)が、平成24年度に支援した実証実験の成果や今後の取組み等について報告を行い、発表者と参加者の意見交換等を通じて、ロボット関連産業への参入やロボットの事業化を促進する。

実験実施者の発表に先立ち、神奈川県商工労働局産業部新産業振興課 木部グループリーダーが、挨拶と事業の概要説明を行なった。

本県では今後成長が期待されているサービスロボットの実証実験を進めている。開発側から実用化のための実験場所を求める声が多く、本事業はこれに対応するものである。各実験実施者の発表を事業化の参考にして欲しい。

○発表1 無人環境観測ロボットCERESの実証試験報告

明治大学理工学部 准教授 黒田洋司氏

[内容]
無人環境観測ロボットCERESは、原発の外側の環境観測や放射線観測を行うロボットである。

現在も立ち入りが制限されている福島県双葉町は、20キロ圏内のデータが殆どない状態。

事故直後避難場所となった圏内病院周辺では、ホットスポットが無数に存在し、モニタリングポストや車で通りながらの観測では把握しきれていないのが実情である。

放射線は時間をかけて計測することが必要で、且つ、遠隔から計測でき、エネルギー交換の必要のないものが望ましい。

これを満たすため、通信機能や3次元計測機能等を有し、太陽光により自給発電し、エネルギー消費が少ない軽量ボディのロボットが求められた。

CERESは、携帯用の通信方式が採用され、遠隔での操縦と映像受信が可能で、今回の実証実験では川崎市の明治大学生田キャンパスと実証実験場所の横須賀追浜間、35kmで行われた。

ロボットに搭載のカメラだけでは、空間の広さ、段差を把握することが難しいため、独自にレーザーレンジファインダー(3次元センサ)を開発。走りながらドーナツ状に3次元点を取ることに成功している。

これにより、ロボット周辺の環境を鳥瞰図として把握することが可能になり、3次元で坂の形状を把握することで、地震の影響で地図との相違が出来ている箇所や、初めて進入する箇所でもロボットが活動できるようになった。

また、リモコン操作が難しい視界が限られている隙間も、3次元データにより自律走行が可能となった(誤差は10p以内)。

○発表2 マグネット吸着型目視検査ロボットによる、社会インフラおよび工場プラント等の点検困難箇所での目視検査実証実験

(株)イクシスリサーチ 代表取締役 山崎文敬氏

[内容]
当社のロボットは使えるロボット、使い続けられるロボットの開発を目指しており、これまで設備、インフラ検査用ロボットを個別に開発してきた。

高度成長期のインフラ老朽化への対応は、1次検査(グローバル検査、スクリーニング検査)、2次検査(有人検査)があるが、コストダウンにより維持費用が削減され、熟練技術者のリタイアに伴う検査の質のばらつきが大きな問題となっている。

ロボットの場合、足場が不要で、均質な検査が期待される。当社のロボット技術は笹子トンネル事故に代表されるインフラ維持にも対応出来るものと考えている。

マグネット吸着型目視検査ロボットは、カメラと全方位移動可能なオムニホイールを装備。今回6箇所で実証実験を行ったが、原油タンク(幅30メートル高さ17メートル)ではウインドガーターの溶接部のパノラマ画像を撮り、拡大することで腐食部が確認できた。

また、別のタンクでは表面の塗装剥離により、ロボットが滑ることもあったが、撮影に支障はなかった。

さらに別のタンクでは内壁の検査も実施。上部は人が上がれないので、釣り竿の要領でロボットをケーブルで吊り下げた。局面移動も可能なことがわかった。

吊り橋の実験では、横風を避ける壁面三角部分を検査した。

今後は、鉄以外の材質(コンクリート系)の検査ロボットも開発していきたい。

○発表3 外壁調査診断ロボットの走行及び検査性能の検証

(株)小川優機製作所 代表取締役 小川安一氏

[内容]
当社は1960年に法人化。従業員は13名。コネクタ等電気部品の製作している。

建築基準法改正により打診検査が義務づけられた。外壁診断の精度確保ため、ロボット化に着手。

外壁調査診断ロボットは、移動装置と診断装置からなり、移動装置は壁面との距離を一定に保ち、吸盤で吸着する。診断装置は、打診ハンマー、カメラ、打診音声収集が可能。

「あーすぷらざ」(横浜市栄区)での実験では、壁面がラスタータイルであり、吸着は不安定であったが、外壁のモニタリング、マイク波形を記録、確認できた。その際、異常音を捉えた箇所があったため、建築業者へ確認したが、施工時の気泡を捉えたもので問題なしとの結果だった。

今後は、外壁診断専門業者や施工会社と提携し、ロボットと赤外線の連携を目指していく。また、トンネル、橋脚等への展開も考えている。

その後、会場の参加者や発表者からの質問や意見が出された。

◆主な内容

参加者 → 明治大学黒田准教授

Q. CERESを小型化したり、非常時に役立つように、他の観測機器も搭載したらどうか?
A. 大きさはソーラーパネルの大きさに規定される。可搬性を上げるため小さくしたいが、エネルギー供給とのバランスになる。走破性は階段を降りられるなどかなり進歩している。観測機器は現在気象観測計を搭載している。災害時はソーラーセルを非常用電源として利用できる。また、無線データ送信機も付いているので災害時でも利用は可能だと思う。

Q. 通信制能を向上させたとのことだが、電力消費がアップしたことによる電力設計の変更はあったか?
A.電力設計は変えてはいない。性能向上でも数値はあまり変わらなかった。それよりも携帯電話契約の通信容量上限を超えてしまうことが問題だった。

Q. CERESは軽量化を念頭に置いているとのことだが、風の影響は?
A. 風は最大の敵、ダウンフォースを検討中。強い場合は避難せざるを得ない。

参加者 → 小川優機製作所

Q. 打診を人が行うのは大変なことなのは納得できる。赤外線も同様に搭載できればよいのでは。
A.現在赤外線カメラで検査している会社と提携しているが、機材は安くても300万円。搭載するとロボットの単価があがってしまう。外壁診断予算は低いので、コストとの戦いになる。

小川優機製作所→イクシスリサーチ

Q. 当社の外壁調査診断ロボットの重量軽減を考えているが、磁力吸着目視検査ロボットの重量はどれぐらいか?
A. 5Kg程度。命綱はあるが、吸着しているので、落下の危険性は低い。

意見交換の様子

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