溝の口駅から少し歩くと、ゆったりした時間が流れている複合施設『フィオーレの森』が現れる。レストランやショップなどが軒を連ねており、入口の門の横に構えているのが、プランヒール株式会社のメインレストラン『Francais La Porte(フランセーズ ラ・ポルテ)』である。「気軽にフレンチを楽しんでほしい」との思いから、フランス料理への入口となるべく、様々なアイディアを紡ぎ出す同社の代表兼総料理長である片岡竜也氏と取締役の江里子氏に話を伺った。
片岡氏はプルミエアベニューの取締役になり、他に寿司等の店舗を展開しつつ、少し高級感を増したプルミエの2店舗目を2012年、現在の地にオープンした。しかし、積極的な店舗展開と裏腹に経費は制約されていった。そこで会社に交渉して、自らリスクをとる兼業の形で溝の口にビストロをオープンさせた。しかし、裏方役に制限される契約だったので、片岡氏の料理の出ない店は1年足らずで閉店となり、個人で負った借金だけが残ってしまった。片岡氏は「心配をかけたくない」と江里子氏には細かく伝えていなかったが、正直に打ち明けて再起を図った。幸い金銭的な支援者がいたので、2016年に個人でプルミエアベニューから店舗を買い取り、フランス語で入口・門という意味のLa Porte という店名に改めた。“ 一門” という家族・仲間を大事にする信条の表れであり、実際にスタッフもついてきてくれた。江里子氏は「同じ職場にいるとケンカが増えるので一緒にやりたくなかった」と当時を振り返るが、プランナーの仕事の他に簿記の資格も取っていた。「いよいよ来たか」と心の中で準備はできていた。江里子氏もホールに入った店は、売上を伸ばして1年足らずで借金を返済し、2017年には、(片“ 岡” +企画)の意味を持たせたプランヒール株式会社として法人化した。
La Porte の総料理長として片岡氏は、出汁を使ったり、日本料理の食材を融合させたりして、日本人の繊細な味覚に寄ったフレンチを追求している。また、旬の野菜を仕入れて一気に作ることで、リーズナブルな価格を設定している。そのため食材の組み合わせによって都度メニューが変わる難しさに対峙しながら、頭の中に残っている味覚の経験値を紐解き、求める味を一発で表現できるのが、片岡氏の強みである。