株式会社 カフェサウダージ
こだわりの自家焙煎コーヒーで
「また行きたい」と好評のカフェを運営
カフェサウダージ代表取締役 須崎 孝
ファゼンダサウダージ業務執行役員会長 前田 茂生
川崎駅から徒歩7分、川崎市産業振興会館2階におしゃれなカフェがあるのをご存知だろうか。2022年7 月に開店した「カフェサウダージ」を運営するのが当社である。サウダージとはポルトガル語で、辞書を引くと哀愁や郷愁と出るが、「また会いたい」や「また行きたい」という意味合いがある。川崎南部市場にある自社工場で焙煎するこだわりの製法で、大手メーカーとは一味異なるコーヒーを提供する当社について、カフェサウダージ代表取締役の須崎氏と、コーヒー豆を生産する農業法人ファゼンダサウダージ会長の前田氏に話を伺った。
川崎南部市場で自家焙煎したこだわりのコーヒーを市内6ヶ所で販売
カフェサウダージはランチメニューも充実しており、スパゲティナポリタンやハンバーグ、野菜カレー、牛すじカレーなどであるが、メイン商品はコーヒーである。市内では川崎市産業振興会館の他に、浜川崎、JFE 本社内、三菱ふそう内、KBIC 内、南部市場の計6 店舗がある。いずれの店でもコーヒーを楽しめるが、コーヒー豆を買うこともできる。まず、知っているようで知らないコーヒーの基礎知識と、当社こだわりのコーヒーとはどんなものか、どういう作り方をしているのかを伺った。
コーヒー豆とはコーヒーノキからとれる緑色の果実の種子部分であり、これを焙煎して粉に挽いたものをペーパーフィルター等で濾したものを飲んでいる。コーヒー豆はコーヒーベルトと呼ばれる熱帯・亜熱帯地域でほとんどが生産されており、アラビカ種・ロブスタ種などがある。レギュラーコーヒー用には風味とコクに優れたアラビカ種が使われ、ロブスタ種は缶コーヒーやインスタントコーヒーに使われる。生産量はブラジルが最も多く、ベトナム、インドネシア、コロンビア等が続く。実は日本でも1933 年頃に国の事業としてコーヒー豆を生産していたが、太平洋戦争開戦後に中止したという。現在ではわずかながら生産されてはいるが大部分は輸入している。
当社のコーヒー豆はアラビカ種で、主に南米・中南米から生豆の状態で輸入している。生豆とはコーヒーの果実から果肉と種皮を取り除いたもので、黄緑色をしている豆であるが、こだわりその1は収穫後3ヶ月以内のニュークロップ(新豆)のみを使っていることである。できるだけお求めやすい価格にするため、前年に先行発注している。これをまずピッキング(虫食いや異物を除く)して上質なコーヒー豆のみを選別するが、ピッキング作業はすべて目視と手作業で行っている。こだわりその2は、川崎南部市場の自家焙煎場で熱風式焙煎をしてから120 時間以内に提供していることである。大手コーヒー業者は1トン釜で焙煎するため焼けムラが起きやすく、焙煎後から流通の間は倉庫保管の期間が長く、その間どうしても風味が落ちていく。一方、当社は10 キロ釜という小型の釜で、直火ではなく釜の中に熱風を送る方式をとっているため、片焼けせずムラのない焙煎が可能なのである。焙煎が終わった後のクーリング中に再度ピッキングすることで、更に選別されたコーヒー豆になる。それを南部市場という近距離から直送し、焙煎から120 時間以内に提供するので、とても高品質で新鮮なコーヒーが提供できるのだ。店内で販売しているストレートコーヒー豆のおすすめは、ブラジルNo.2(No.2 が最上級でNo.3、No.4 と数字が大きくなるごとにグレードは落ちる)や、ニカラグア、エルサルバドルなどである。袋を手に取ると少しふくれており、ガス抜きの穴がある。これは豆から発散するコーヒーアロマ(炭酸ガス)で、ふくれているのは新鮮な証拠である。市内のカフェサウダージ店舗を是非訪れてほしい。店内ランチと共にコーヒーを楽しむのも、こだわりのコーヒー豆を購入して自宅で楽しむのもおすすめである。
50 年に渡るブラジル移民での経験 夢は「国産コーヒーの一貫生産」
前田氏は1959 年の生まれで、7 歳の時に家族と親戚の14 家族でブラジルに移住し、サンパウロにて将来の大農園経営を夢見てひたすら開墾作業を行っていた。両親はコーヒー農園を手掛けるも冷害で失敗し帰国してしまったが、前田氏はその後もブラジルに残った。電気工事店・クリーニング店・食堂の皿洗いなど様々な職業を経て、30 歳の時に独立して飲食店等の店舗経営を始めた。ラーメンや焼き鳥、寿司などブラジル人にはなじみの少ないメニューをヒットさせ、輸入業にも事業拡大し、50 歳になった頃かつて両親が成しえなかったコーヒー農園を始めることになった。2016 年、両親の介護のため50 年ぶりに日本に戻って、川崎市でエムケイ商事を設立しカフェや食品製造販売を行った。両親を見送った後、「日本でコーヒーを生産したい」という夢を抱き、鹿児島県や宮崎県でコーヒー栽培を試したが、流通の利便性の高い千葉県の南房総市に決めた。南房総市のある内房は2℃以下にはならないので、コーヒー栽培に適した土地だという。現在ハウスを使って1万本のコーヒー苗を育てており、2026 年には収穫できるので、苗から一貫生産された国産コーヒーに乞うご期待である。
須崎氏は1967 年の生まれで長らくサラリーマン生活を送っていたが、コーヒーとは無関係ではなかった。須崎氏はコーヒーに入れるスジャータを販売する㈱東京めいらくの川崎地区担当営業マンであった。そこで取引先として出会ったのが前田氏であった。最初は顧客として接するうちに、元々「何事もパイオニアになることがすごいこと。どうせ働くならコロンブスの卵的な常識破りの仕事がしたかった」須崎氏と、前田氏の国産コーヒーにかける思いが一致した。須崎氏は2022 年に会社を退職し、生産は前田氏が経営する農業法人ファゼンダサウダージが担当し、販売は須崎氏が経営するカフェサウダージが担当することになった。最後に、カフェサウダージについて今後の抱負を伺ったところ、「料理はちょっとした工夫を加えたメニューを手作りして、お客様の喜ぶリアクションを感じたい。千葉のコーヒー農園で収穫された新鮮な国産コーヒーをお届けしたい」と締めくくっていただいた。カフェサウダージはその言葉の意味通り、「また行きたい」と感じる素敵なカフェである。