有限会社 ダイコー精機製作所
品質と革新への飽くなき挑戦
― 人とデジタルが織りなす明日のものづくり ―
代表取締役 遠藤 大輔
事業内容 | 金属加工(マシニングセンタ・NC 旋盤・溶接 他)機械加工・試作品製作 |
企業名 | 有限会社 ダイコー精機製作所 |
創業 | 1973 年(昭和48 年)5 月 |
所在地 | 川崎市高津区下野毛2-2-2 |
電話 | 044-850-1521 |
従業員 | 20 名 |
代表 | 遠藤 大輔(エンドウ ダイスケ) |
URL | https://www.daiko-seiki.co.jp/ |
数センチ単位の精密部品から数メートル単位の大型部品まで、多様な切削加工技術で確かな品質を提供する―。有限会社ダイコー精機製作所は、3 軸・5 軸マシニングセンター、NC 旋盤、ワイヤーカット、溶接機、研磨機など多彩な設備を駆使し、産業用機械、精密測定器、宇宙関連部品、医療機器など幅広い分野で高い評価を得ている。多様な設備によるワンストップ製造体制や、他社に先駆けた設備の導入など、常に最先端の技術と品質管理を追求している。大田区から川崎、横浜の金沢八景まで車で数十分圏内という立地を活かした協力会社とのネットワークも強みだ。
ものづくりの継承 ―父から25 歳で受け継いだ覚悟―
1981 年、現社長の遠藤大輔氏が生まれた翌年、父である遠藤功氏が設立。社名の「ダイコー」は、父の名前の「功」と遠藤大輔氏の名前「大輔」から取られたものである。創業当初は従来型のフライス盤や旋盤で事業をスタートし、当時川崎に進出してきた大手精密測定機器メーカーミツトヨとの出会いが転機となり、協力工場として、着実に業容を拡大していった。
遠藤社長は技術系短大を卒業後、21 歳で入社。当時5、6 人の職人がいる現場の中で技術を学び、NCのない従来型の機械での作業などを経験。「とても良い経験だった」と振り返る。しかし、父が体調を崩し、25 歳という若さで急遽経営を引き継ぐことに。「人一倍も二倍も稼がなければいけない」と、夜遅くまで機械を動かし続けた。気が付くと、そんな働き方についていけないと職人気質の強い従業員たちは次々と退職し、残ったのは自分と1人程だけだった。
経営の重責を背負った遠藤社長は、「将来は絶対に良くするから」と当時別会社に勤務していた同級生に声をかけ、遠藤社長、弟の遠藤達郎氏、同級生と共に新たな体制を築いた。彼のために「40 歳までに工場を建てよう」と約束し、2021 年に藤沢に第3 工場を新設し、同級生は現在その工場長を務める。この工場は大型加工に特化し、大型測定機の土台部分や産業用機械のベース部分を製造している。
経営改革への挑戦―困難を乗り越えた成長の軌跡―
一見大胆な決断を次々と下す遠藤社長だが、その実は極めて堅実な経営者でもある。取引金融機関からも「結構堅いですね」と評されるほど、慎重な計画立案を心がける。事業拡大や設備投資においても、補助金を積極的に活用しながらリスク管理を徹底。川崎市補助金を活用し、工場間の情報共有システムを構築した他、国や県の補助金を活用した藤沢工場の設立、三次元測定機の導入など、着実な歩みを重ねてきた。
とはいえ、経営の道筋が常にスムーズだったわけではない。リーマンショックや東日本大震災など、経済環境の激変も経験。先代から続く取引先から「やる気があるのか」と厳しい指摘を受け、取引を打ち切られそうになることも。品質や納期で厳しい要求を突き付けられ、「作れば売れる」という考え方を改め、経営者としての意識がこの時期から備わるようになる。
「お客様に育てられた」と感じた遠藤社長は、品質管理や業務改善に真剣に取り組むようになる。また、人から学ぶ姿勢を大切にし、税理士や金融機関、親戚の元大手情報機器メーカー社員など、多くの人々から経営の知恵を吸収。これらの経験を通じて、経営者としての確かな礎が築かれていった。
同社はデジタル技術の活用において先進的な取り組みも行ってきた。クラウドという言葉が一般的でなかった15 年程前から、インターネットを介した販売管理システムをいち早く導入し、図面のデジタル化やリピート品の履歴管理など、業務効率化と情報共有を推進。「早め早めに必要な設備を整えていく」という経営姿勢で、当時では先進的な5 軸マシニングセンターも導入。取引先からの要請ではなく、将来を見据えた先行投資だった。
未来志向の経営改革―デジタル化と人材育成で描く新時代―
今後は社内の情報システム部門や別会社の設立も視野に入れており、ICT 人材の確保・育成にも意欲を見せる。社員が楽しく働ける職場づくりにも注力。ボートレースや釣り大会など、部署の垣根を越えた交流の機会を積極的に設けている。「みんなで楽しくワクワクしたい」という遠藤社長の思いが、社内の一体感を高めている。
2024 年現在、県と市の立地促進関連の補助金を活用して第1 工場と第2 工場の統合を進めており、2025 年2 月の稼働予定。1 階を工場、2 階・3 階には地域の人々が集まれるスペースを設ける構想だ。
「人が集まる場所を作りたい。そこから新しいアイデアが生まれる」と期待を込める。外国人社員の受け入れやシェアハウスの設立検討など、多様な人材が活躍できる環境づくりにも取り組んでいる。従業員30 名体制への拡大を目指す遠藤社長は「オーナーが全てを握るのではなく、様々な意見を聞きながら意思決定できる環境を整えたかった」と語る。この思いを形にするべく、2024 年3 月には東京中小企業投資育成株式会社からの出資を受け入れ、経営基盤の強化とさらなるオープン化への取り組みを加速させている。
「一人では何もできない」。遠藤社長の経営哲学である。「社員にとって最高の環境を作ることが私の仕事。スキルアップは会社のためではなく、自分のため。みんなで楽しくワクワクできる会社にしたい」。社員一人ひとりの成長が会社の成長につながると信じ、環境づくりに全力を注いでいる。
「技術と人、そして地域とのつながりを大切にしながら、新しい時代に向けて挑戦を続けていく」。創業期からの取引を大切に守りつつ、着実な設備投資と技術革新で築き上げてきた事業基盤と共に、遠藤社長の情熱は新たな未来を切り拓いていく。
(左)藤沢工場外観 (右)藤沢工場設備