株式会社 ニックナック
ママ&ベビー向けやペットオーナー向けに
自社ブランド縫製商品を展開
代表取締役 國原 沙央里
事業内容 | 縫製商品の企画デザイン、製造、販売、OEM 請負 |
企業名 | 株式会社 ニックナック |
創業 | 1984 年(昭和 59 年)7 月 |
所在地 | 川崎市麻生区王禅寺西 1-2-6 |
電話 | 044-955-0079 |
従業員 | 6名 |
代表 | 國原 沙央里(クニハラ サオリ) |
URL | https://knick-knack.co.jp |
百合ヶ丘の閑静な住宅地に MAMA’S DOOR と表示された入口が見えるのが、株式会社ニックナックである。木製品の企画デザインと製造販売で創業した当社は、現在はママ&ベビー向けやペットオーナー向けなどの縫製商品を、オリジナルブランドや OEM ブランドで幅広く展開している。その商品ひとつひとつを手にとると、「ホッコリ感」が伝わってくる。当社の商品が時代の変化と共にどのように展開してきたのか、今後の抱負も含め、代表取締役の國原沙央里氏にお話を伺った。
ママ&ベビー・ペットオーナー向けなど、育児体験やライフスタイルから商品開発
当社は 1984 年の創業時は東京の渋谷で木製品を主に製造販売していたが、時代やマーケットニーズの変遷を見ながらニッチ戦略に舵を切り、現在は縫製商品を企画デザイン・製造販売している。國原社長に当社の4つの主力商品群を紹介していただいたが、どのジャンルもフエルト生地に刺繍を施したものが多く、柔らかな感触と雰囲気を持っている。その1つ目は、2005 年から始めたママ&ベビー向け商品である。ママ向けには母子手帳が入るマルチケースやトートバッグ、おむつバッグなどがあり、ベビー向けにはリュックサックやスクエアバッグなどがラインアップされる。それらには当社デザイナーによる約 20 種類のオリジナル動物キャラクターの刺繍が施されていて、可愛らしさだけではなく、使いやすさにもこだわっている。たとえば、おむつ入れはお尻ふきを楽に取り出せる作りになっているが、社長自身や社員の実際の育児体験から、自分達が使いやすいもの、いいなと思う機能性をデザインに取り入れたのが特長である。
2つ目は、最近のペットブームに向けたペットオーナー用商品、たとえば犬の刺繍をあしらったオーダーメイドの T シャツやお散歩用のトートバッグなどである。少子化が続く中、ママ&ベビー向け以外の商品を模索していた頃、ペットと共に過ごす楽しさをファッションに取り入れるライフスタイルが高まっていると感じ、商品化したという。ペットそれぞれの個性の表現までは難しいが、お客様からの要望に応えるためできるだけ犬種と色を増やしていく予定である。動物キャラクターがついた自社商品はオリジナルブランド POETICⓇと名付けられており、商標権も取得している。また、商品を通して殺処分ゼロ活動を行っている団体に、寄付をするなどの CSR 活動にも力を入れている。
3つ目はバレエ教室の生徒向けの衣装ケースやシューズケースである。お話を伺った中では最もニッチマーケット向けと感じる商品であったが、そのニーズを伺うとなるほどと思わず膝を打った。他のスポーツではシューズバッグは1足入る作りがほとんどだと思うが、バレリーナにとっては3つ以上のポケットがあると便利なのだそうだ。つまり、トウシューズのソールが固めと柔らかめの2足と、それらをケアするグッズを入れる3つのポケットがあると大変使いやすいらしい。そこに当社のデザインセンスでエレガントな要素を加え、「大人可愛い」シューズケースや衣装バッグ、ポーチなどを作って、バレエを学んでいる子供たちに大好評である。
4つ目は、現在では売上の柱に成長した OEM ビジネスである。誰でも知っているアニメキャラクターのキーホルダーやポーチ、幼児教室のリュック、水族館・動物園の土産用の小バッグ、各種ノベルティグッズなど多岐に渡っている。当社の強みでもあるオリジナル商品を数多く持っているため、他社の目にとまりやすく、OEM 先に安心感を持って選ばれたことが、売上が伸びてきた理由である。
また、デザイン力に加え、長年信頼関係を築いてきた上海の協力工場での高品質な縫製と、求めやすい価格設定も欠かすことのできない強みである。縫製商品というと日本製に高品質なイメージを持たれる方が多いが、実際はそうではないという。コロナ禍で上海の工場がストップした際に、いくつかの日本企業にあたってみたところ、品質も量産対応も中国製を上回るものではなかった。今では、20 年以上信頼関係を培った上海の協力工場と、阿吽の呼吸でものづくりができるまでになった。
「いつも誰かの太陽に」をモットーに、変化を恐れず時代に合った商品を提供する
國原社長は 1987 年に川崎市の百合ヶ丘に生まれた。アイドルグループやミュージカルが好きで、公園で友達と歌ったりしていた少女時代を経て、映画やデジタルコンテンツ・語学が学べる都内の大学に入学した。在学中に1年間アメリカのサンディエゴ州立大学に留学して英会話や CM 作りに取り組んだ後、復学して起業のノウハウを学んだ。その間、父親の経営するニックナックのネットショッピングサイトを作ったりしたが、「他社で働くビジョンが思い浮かばなかった」とのことで、卒業後は鎌倉のニックナック店舗の店長を任された。百合ヶ丘の自宅から毎日2時間以上かけて通った店では、大仏エコバッグなどのオリジナル商品を販売する日々が続き、やがて百合ヶ丘の本店に戻って営業や商品企画に専念することになった。2018 年に父親から代表取締役を受け継いだが、社長になって始めたのは単発で売れる「売り切り商品」の企画だった。折しもコロナ禍になって、テイクアウト・デリバリー・除菌グッズが注目されはじめ、保温・保冷ができるテイクアウトバッグや除菌ボトルホルダーを作ったが、お客様に評価され単発では終わらず、現在も売れ続けている。
社長就任後はコロナ禍だけでなく低成長や物価高が続き、景気が良い時代を経験していないとのことだが、「楽観的な性格なので、苦労と感じることがない」と言う國原社長に、今後の抱負を伺った。「宣材写真をよりよくしたり、SNS での発信にも力を入れていきたいが、何よりも当社は『いつも誰かの太陽に』をモットーとしており、お客様がいつも明るく元気になるような商品やサービスを企画したい。変化を恐れず、時代のニーズに合った商品を生み出すために、社員全員で話し合って臨機応変に決めていきたい」と笑顔で締めくくっていただいた。ニックナックはみんなで応援したくなる、ハートフルで素敵な会社である。
(左)オリジナルブランド POETIC® (右)バレエシューズケース