株式会社 光洲産業
『楽しさ』が開く環境ビジネスの未来 : 産業廃棄物に新たな価値を
代表取締役 光田 興熙
事業内容 産業廃棄物の収集運搬、中間処理、リサイクル業、環境ソリューション事業 企業名 株式会社 光洲産業 創業 1982 年(昭和57 年)12 月 所在地 川崎市高津区久地4-10-11 電話 044-822-0795 従業員 354名 代表 光田 興熙(コウダ トモキ) URL https://koushuu-sangyou.com/
産業廃棄物の処理。かつてはネガティブなイメージが付きまとっていた。しかし環境保護やサステナビリティへの意識が高まる現代、廃棄物の適切な処理とリサイクルは持続可能な社会実現の重要な役割を担う。最前線で活躍するリーディングカンパニーである株式会社光洲産業は、環境と地域、未来をつなぐ架け橋だ。
創業者・光田栄吉氏の情熱と挑戦
光洲産業の歴史は、先代社長である創業者の光田栄吉氏の実家にまで遡る。同社の近くで金属スクラップの収集運搬を行っていた家業を手伝う中で、栄吉氏は建設現場から出る廃棄物の処理に大きな可能性を見出した。「廃棄物は建設業がある限りなくならない」。そう確信した栄吉氏は、日本経済が成長を続ける1982 年12 月、生まれ育った地元川崎に光洲産業を設立した。多摩川を挟んで大田区、世田谷区、渋谷区など都心部へのアクセスが良く、当時建設需要が高まる都心から廃棄物の収集運搬に最適だった。これは現在も同社の大きな強みとなっている。
光田栄吉氏は、現場での経験を積み重ねた上で、処理技術と処理機械の研究開発に人生を捧げた人物である。その仕事への情熱は、家族の結婚式当日のエピソードによく表れている。式に向かう往復飛行機の中でさえ、栄吉氏は新規設備の図面を見続け、「ここについてどう思う?」と熱心に話しかけてきた。普通なら家族の大切な節目の話でいっぱいになるところを、「こんなハレの日にまで…ほどほどにしてほしい」と内心思うほどだったと、現社長は笑いながら振り返る。しかし同時に、現場を知り尽くした上で技術開発に打ち込む父の姿に「本物」としての深い敬意を抱いていた。それは決して仕事を義務などとして捉えているのではなく、まさに息をするかのように仕事と向き合う姿勢だった。
もう一つの柱の建材販売は、クルーズ社長の父でもある北原会長のチャネルで、工務店やゼネコンから受注するB to B ビジネスである。ブロック、フェンス、タイル、砂利や砂など扱う建材は様々であるが、最も多いのは生コンである。生コンは使用時間の限度が厳しく決められており、25℃以上のときは練混ぜから打込み終了まで90 分なので、やはりビジネスエリアは近郊に限られているが、60 年以上の経験を持つ会長のコネクションで、遠方の現場の手配も行う。生コンのみならず広範囲の地域への建材全般の手配を得意としている。
同社も決して平坦な道のりを歩んできたわけではない。2007 年、光洲エコファクトリーYOKOHAMA BAY の立ち上げに、当時年商に匹敵する数十億円を投資。並行して進めていた収益の柱となる最終処分場開設計画が頓挫するというダブルパンチに見舞われた。資金繰りが逼迫し、多くの社員が離職する事態に陥ったが、栄吉氏は強い信念でこの危機を乗り越え、残った社員と共に同社の強靭な基盤を築いた。
次世代リーダーが描く環境ビジネスの未来
2016 年1 月、光田興熙氏が入社した。機械の輸出入を手掛ける専門商社で5 年半の勤務経験を持つ彼は、母の闘病生活をきっかけに「長男として家業をなんとかしたい」という思いが芽生えた。母からは「苦労が多いから継いでほしくない」と言われたが、むしろ「継ぐ」と宣言することで母を安心させたいと考えたこと、また父の期待に応えたいという気持ちもあり30 歳になる年の決意だった。当初、興熙氏は現場からのスタートを希望したが、父から「幹部や現場の長の方が分かっているから、現場を少しばかりかじるのは中途半端で意味がない」と言われ、経営管理からキャリアをスタート。商社での経験を活かし、世の中にある技術やリソースを効果的にマッチングさせることで、従来とは異なるビジネスモデルを追求している。
光洲エコファクトリーYOKOHAMA BAY では24 時間の受け入れが可能で、鉄道の軌道工事や店舗施設などの営業時間外での建設工事など夜間に行わざるを得ない現場など多様なニーズにも応えている。また、蛍光灯1 本といった小規模な相談も受け入れ、「困ったときに頼れる存在」でもある。
特に注力しているのが、廃棄物の付加価値向上だ。ユニークなリサイクル手法により、廃プラスチックから製造する加炭材「エコマイト」は、製鉄所でコークスの代替として使用される。炭素をCO2 として大気に放出せず、鉄に吸着させることでリサイクルを実現できる。コークスの7 割程度の性能を持ち、カーボンニュートラルに貢献する環境配慮型の製品として注目を集めている。
同社ではさらに、他企業との連携にも積極的だ。石膏ボードのリサイクル事業では、スタートアップ企業㈱GYXUS と協力し、今後3 年以内に、発生した廃石膏ボードをやはり石膏ボード板の建材として供給する「水平リサイクル」の立ち上げを目指している。興熙氏は「自社だけで行う取組には限界がある。世の中には素晴らしい技術やアイデアがたくさんある。それらを組み合わせて新たな価値を創造できるはずだ」と語る。
地域と未来をつなぐ取り組み
同社は環境教育にも力を入れている。「環境問題は地球規模で語られがちですが、実際の取り組みは身近なところから始まります」。地域の小学校との連携で、廃棄物の回収コンテナにお絵描きをしてもらうイベントや、子どもたちにリサイクルの大切さを伝えるワークショップなど、環境を身近に感じられ取り組みを計画する。また、産業廃棄物処理業界の堅いイメージを一新するため、ウェブサイトを親しみやすいデザインに刷新し、2024 年7 月にはSNS での情報発信も開始。2024 年9 月には、プロレーシングドライバー中山雄一選手とのコラボレーションで安全運転の啓発イベントを開催するなど、新しい視点からの取り組みも進めている。
「どの企業であっても社会貢献はしている。だからこそ、私たちは『楽しさ』を新しい価値として創造し、発信していきたい」と興熙氏は意気込む。この新しい価値の創造への挑戦について、「企業は50、100 年と永続していくべき存在です。私はそのバトンを20 年から30 年預かっているに過ぎません。楽しく働ける環境を作り、新しい価値を創造し発信し続けていきたい。それが私たちの使命です」と展望を語る。
光洲産業は、これからも川崎の地から、環境・地域・未来をつなぐ挑戦を続けていく。
(左)事務所外観 (右)オリジナルキャラクター「エコマイト三兄弟」