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川崎元気企業調査報告書(川崎 元気本)
掲載企業紹介

DELE株式会社

消すことは、未来を守ること
―累計100万台の実績が支えるデジタル社会の安心基盤―


代表取締役社長 福地 真由香

事業内容データ消去トレーサビリティ事業、データ消去プラットフォーム事業、データ消去装置の販売・レンタル、データ消去サービス(出張・送付)、リサイクル事業
企業名DELE株式会社
創業2005年(平成17年)(前身企業) 設立:2021年(令和3年)2月2日
所在地本社   :横須賀市光の丘8-3 YRPベンチャー棟2F
川崎営業所:川崎市川崎区南渡田町1-1 京浜ビル2F
電話046-854-5484(本社)、044-223-7820(川崎セキュリティルーム)
従業員8名
代表代表取締役社長 福地 真由香(フクチ マユカ)
URLhttps://dele.gr

情報社会において最も重要な資産の一つは「データ」である。スマートフォンやパソコンに保存された個人情報はもとより、企業の機密情報や行政データも膨大である。これらのデータは社会インフラを支える基盤であるが、廃棄や処分の際に管理が不適切だと、情報漏えいのリスクが一気に高まってしまう。そうした中、データ消去に特化したインフラ企業として注目されているのがDELE株式会社である。同社は多様なデータ消去方式を駆使し、「確実に消す」技術と証明力を提供。設立から、わずか4年で取引企業1000社の実績を誇り、官公庁や大手企業からも高い信頼を得ている。

自社完結の強み ―ADEC三つ星とワンストップ体制―

「お客様が求めているのは『消した』という事実ではなく、『確実に消えた』という安心と証明です」DELEの最大の強みは、単なるデータ削除ではなく「証明できる消去」を提供していることだ。前身企業であるリ・バース株式会社で培われた磁気破壊装置の「ERAZER(イレイザー)」によって、ハードディスクや磁気テープなどの記憶媒体を一瞬で完全消去。また、「ADEC(データ適正消去実行証明協議会)」の第三者認証付き証明書の発行も可能で、法的にも社会的にも高い信頼性を提供している。この証明書は国際標準の長期署名規格(PAdES)に準拠しており、電子的に改ざんできないフォーマットで管理。総務省の「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(2022年改訂)」にも準拠している。取引企業数も1000社以上となった今、官公庁や上場企業、中小企業など幅広い顧客から高い信頼を得ている。京浜ビル内に設けられた川崎営業所セキュリティセンターはADECの三つ星認証を取得しており、これは日本でわずか13社しか取得していない(2025年10月現在)最高レベルの認証だ。加えて、プライバシーマークも取得しており、多層的なセキュリティ体制が顧客からの信頼につながっている。
もう一つの大きな強みは、データ消去作業をすべて自社スタッフが担当し、社内で完結させていることだ。
「当社は自社スタッフが作業を担当することでコストを抑え、セキュリティ面でも安心していただけると評価をいただいています」
持ち込み対応のほか、オンサイト(出張)消去、機器のレンタル・販売と、多様な形態でサービスを提供。データ消去の方法も多岐にわたる。ハードディスクは磁気破壊で永続的に使用不可能な状態にでき、SSDやCD-ROM、カセットテープなど、媒体ごとの特性に応じて、磁気・物理・論理などさまざまなデータ消去方式を使い分けている。

磁気破壊装置の「ERAZER(イレイザー)」

広告営業から情報セキュリティへ ―ゼロからの挑戦と積み重ねが生む信頼―

「前職の広告業界では競合が多く予算取りも大変でしたが、データ消去は会社組織にとって必要なものであり、確実に現物を納品でき、感謝されるというやりがいを感じています。また、会社としての仕組みをイチから作るのはとても楽しいです。」
代表取締役社長の福地真由香氏は、広告業界で20数年にわたり営業一筋で活躍してきた。データ消去事業の拡大を目的とし、営業とマネジメントの経験を評価されて声がかかった。しかし入社時は社長ともう一人しかおらず、営業アプローチリストや既存顧客リストの整備、システムの導入などから始めた。その後、新規顧客の獲得を目指して、医療法人・学校法人・公益法人などセキュリティを重視する顧客への営業を展開した。さらに他社からのトップ営業や経験豊富な技術者が加わったことで、現在の取引件数は創業時の4〜5倍に増加し、予約数カ月が先まで埋まることもあるほど急成長している。

「テキパキしていた」「丁寧だった」 ―積み重ねが生む信頼―

そのような多忙な状況の中でも、同社が大切にしているのは技術力だけでなく「一工程ごとの丁寧さ」だ。
「データ消去業界は前職と比較すると差別化がはかりにくい業界と感じました。そこで人数も少ない当社が顧客から選ばれるためには、少人数だからできる細かな対応や安心感を積み重ねていくことが大切と思っています。データ消去するまでには工程がたくさんあります。機器を回収するとき、解体するとき、データ消去が完了したとき、お客様から『御社のスタッフは感じが良い』『テキパキと丁寧な対応をしてくれた』『説明が明確で不安が取り除かれた』という声をいただくことが多いです。また、それは記録に残して従業員に共有するようにしています。こうした積み重ねがモチベーションアップにつながっていくといいなと思っています。」
こうした顧客の声は、技術サービスでありながら「人の心遣い」が評価されていることを示している。データ消去という見えない作業だからこそ、一つひとつの工程での誠実な対応が、顧客の安心と信頼を生み出している。
特に印象的なのは、約2万台のデータ消去を一度に引き受けたケースだ。膨大な台数を処理する技術力と体制は、同社の高い実力を示すものだった。
横須賀本社では、データ消去後の機器を分解する作業を障がい者就労支援施設に委託しており、地域との共生・雇用創出にも取り組んでいる。また、消去後の機器をそのまま廃棄するのではなく、リユースやリサイクルへとつなげる循環型ビジネスモデルを展開。「古いものや故障したものは『捨てる、廃棄する』の選択肢しかないと思ってらっしゃる方が結構多いのですが、パーツで分けるとリサイクルできる部分があるとお話しすると、その考えに賛同していただけます」
同社は「かわさきSDGsゴールドパートナー」の認証を取得し、PC1台の処理でどの程度CO₂排出量を削減できるかを示す証明書も顧客に提供している。この数値の算出には、大学との共同研究により独自の計算式を開発し、環境負荷の軽減を見える化している。

進化するデータ保護 ― 法人も個人も安心のシステムへ ―

急速に進展するデジタル社会に対応し、同社は次世代技術の開発にも着手している。
「個人や少人数の企業でパソコンの管理が難しい方々に向けて、簡単に管理できるシステムを開発しました」
法人向けには遠隔ロックや遠隔データ消去ができる「Manalock(マナロック)」、個人向けには同様の機能を持つ「消しタイガー」を開発するなど、多様なユーザーの要望に応えている。特にユニークなのは、仏壇仏具メーカーと連携し亡くなった方のデジタルデータを適切に削除するサービスを展開。こうした取り組みにより、急増するデジタル遺品といった新たな社会課題の解決にも乗り出している。
今後はセキュリティルームを拡張し、これにより、100〜1000人規模の企業に加え、さらに大規模な企業への営業展開も見据えている。「急激な事業拡大はせず、着実に1つ1つ拡大していく予定です。まずはセキュリティルームが広くなれば採用も増やせ、顧客への対応もよりスピーディーに行うことができるので、そこを優先的に考えています」
「AIやクラウド時代になっても、データを『確実に消す』技術の重要性は変わりません。むしろ、より高度な消去技術と証明システムが求められるでしょう。また、最近は個人の方からのお問い合わせや相談も増えてきていることから、企業だけでなく個人の方にもデータ消去を利用すれば安心して生活ができるということを広めていきたいと思っております。IT技術の発展と同じくらい『消す』ということが重要と考えています。」
「確実なデータ消去で人々の不安をなくし、情報社会を守る」という使命を胸に、川崎から全国へ。見えないリスクを確実に取り除く同社は、安心・安全なデジタル社会を支える重要なインフラ企業として、その価値を今後もますます高めていくだろう。

磁気・論理だけでなく物理的にもデータ消去を徹底