○講演1 生活支援ロボットの普及に向けた取組みについて
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 技術開発推進部機械システムグループ 高津佐 功助氏
■概要
家庭、施設、オフィス等の生活分野での活躍が期待される生活支援ロボットをテーマに、企業や研究機関などの様々な取組みを紹介するとともに、今後の生活支援ロボットの本格的普及に向けた課題と方策について発表した。
■ロボットとは
世界共通の明確なロボットの定義はないが、ロボット産業政策研究会ではロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの技術要素有する知能化した機械システム」としている。ロボットはヒューマノイドロボットを指すだけでなく、富士重工の「EyeSight(アイサイト)」(自動ブレーキングシステム)、三菱航空機の「MRJ(三菱リージョナルジェット)や、スマート家電なども含まれ、既に広く普及しているといえる。
産業用ロボットの稼働台数は12万台に達しており、日本だけではなく、中国、東南アジアをはじめ、新興国での需要が多い。
将来の予測(2010年4月/経産省)によると、生活支援ロボット分野(日常的な歩行や、様々なシーンで人を支援するロボット技術全般)は、2035年に9.7兆円まで市場が拡大するポテンシャルがあると予想されている。
■生活支援ロボット分野の取り組み
生活支援ロボット分野は、歩行リハビリ支援、移乗支援、重作業支援、日常生活支援、コミュニケーション(見守り)等、様々な取り組みが行われている。
- (1)歩行リハビリ支援
- サイバーダイン:「HAL福祉用」が国内で330台を納入。
ホンダ:リズム歩行アシストが愛知県施設で現在、実証実験中(40台)。
- (2)移乗支援
- パナソニック、セグウェイ、ホンダなどが実証実験や実用化に向けて取り組み中。
- (3)見守り
- 産総研:「パロ」が欧州やアメリカなど30カ国に導入。
- (4)重作業支援
- スマートサポート:着用型で、4万円で販売。
東京理科大学:マッスルスーツ(パワーアシストスーツ)
- (5)日常生活支援
- セコム:「マイスプーン」は40万円程度で販売。公的助成もある。
iRobot:「ルンバ」は2011年に約20万台を販売。2012年には東芝、シャープ、LG電子などが参入し、掃除ロボットの国内市場規模は100億円に成長。
■社会的な課題
現在、高齢者人口は2975万人で、全人口に占める割合は23.3%(内閣府社会白書)。今後、65歳以上の高齢者が増加し、将来的な労働力不足が懸念される。介護職員は2015年に倍以上必要になると予測されている。
医療介護分野へのロボット投入は、国の重点施策となっており、政権交代後においても変わっていない。
■介護福祉現場でのロボット活用
厚労省のアンケートでは、福祉施設管理者の6割がロボット関連機器を「使用したい」としているが、「費用」、「メンテナンス」、「従業員の反応」を課題として挙げ、6.5割が情報入手先を持っていない。
一方、現場従業員の7割がロボット関連機器を「使用したい」としながら、8割が「情報入手先がない」としている。
介護現場では負担軽減の声がある一方、ロボット機器への警戒心もあり、興味はあるが情報先がわからない状況と言える。
メーカー側は、被験者の確保が困難であり、かつ、安全性確保が第一にもかかわらず、意見交換を行える場がないと感じている。
安全性ルールの確立と合わせ、ユーザー・メーカー双方の有機的なつながりの場を持つことが何より重要といえる。
■生活支援ロボットの安全基準
NEDOでは、「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(平成21年〜25年)で、対人安全性の基準作り、試験方法、認証手法の確立を目指している。
「生活支援ロボット安全検証センター」(つくば市)では、衝突試験等、様々な安全性試験を行っており、安全試験を通ったロボットについては、第三者機関の「安全認証機関」が審査・認証を行えるよう、国際標準規格ISO13482(2013年秋予定)を見据えた動きとなっている。
■広報
NEDOでは、上海万博、国際ロボット展、ジャパンロボットウィーク等で広報活動に取り組んでいる。
今年は国際ロボット展でのサービスロボットの展示を予定している。
■国の重点施策
国の「日本再生戦略」(平成24年7月閣議決定)では、重点施策のひとつとして、「ロボット技術による介護現場への貢献や新産業創出/医療・介護など周辺サービスの拡大」を掲げている。政権交代後もこの施策は継続され、経産省・厚労省は共同で、介護支援、移乗支援、移動支援、認知症見守りの4つを重要分野として位置づけている。
重点4分野については、今年度、ロボット介護機器の開発・実用化のための施策に反映することを目的とした「パートナーシップ」を立ち上げ、今後、介護現場のニーズ把握、シーズとのマッチング、導入支援を進めていく。
導入促進事業として2013年度は、23.9億円(予算要求額)を実施する予定。
■その他
ロボット以外にも、中小企業が事業化できることを目的にした「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」の制度も現在公募中なので、是非利用して欲しい。
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