防災から地域貢献へ
半世紀の歴史を誇る地元の警備会社
事業内容 | 防災警備、施設警備、交通誘導警備、雑踏警備及び環境衛生管理、設備維持管理 |
企業名 | カナケイ 株式会社 |
創業 | 1972年(昭和47年)12月 |
所在地 | 川崎市幸区大宮町14-4 尊昌ビル5F |
電話 | 044-544-6105 |
FAX | 044-544-6331 |
従業員 | 264名 |
代表 | 深谷 彰宏(フカヤ アキヒロ) |
URL | http://www.kanakei.co.jp |
戦後日本の成長を牽引してきた京浜工業地帯には今も、石油コンビナートや化学工場がひしめく。この地で創業以来、半世紀にわたって関連施設の警備や清掃、設備管理を手掛けてきた警備会社がある。専門知識や資格の保有者をそろえ、防災警備にも強みを持つカナケイだ。4代目の深谷彰宏社長の目標は「安全安心なまち、衛生的で快適な環境を提供し続けたい」。京浜臨海部の発展を警備事業で支えてきた会社の経営理念に、川崎の地元社会への関与が根を下ろす。
若手3人に「君たちが起業を」
設立は1972年12月。綜合警備保障(現・ALSOK)の若手社員3人が旗揚げした。
設立の2年前は、大阪で日本万国博覧会(大阪万博)が開かれた年でもあった。アジアでも日本でも初開催となった国際博覧会で、当時では史上最大の規模を誇った。このため、警備要員も全国から大阪に集められたという。その結果、京浜工業地帯の警備は手薄になっていた。
「君たちが会社を起こしてくれたら後押しする」。川崎に工場を構える大手石油会社の関係者の言葉に、3人がこたえた。警察庁OBを初代社長に迎え、「神奈川企業警備」の社名の元に、新しい警備会社が産声を上げた。
警備を担う主要な現場は、多摩川が東京湾に注ぐ河口に位置する「浮島地区」。石油化学コンビナートが集積する重要な地域だ。事故発生時には公設の消防団が来るまでの間、いち早く消火活動に入るために、防災基地を構えている。
カナケイの警備員たちは普段、工場の門で、立哨業務や入出門受付を担う。さらに、近隣で火災が起きれば、大型免許や消防関係の資格を持つ人員が活躍することになる。地域の企業で共有している消防車を運転して駆け付け、制服を消防服に着替えて消火活動に当たれるようになっている。なぜなら、京浜臨海部一帯は危険物が多い場所柄、火の手が回れば被害が広がりやすく、地域全体に甚大な影響が出かねないからだ。そのため、ユーザーと結ぶ警備業務契約には、防災業務も含まれている。防災を兼ねた「防災警備」を、使命と定めている。
様々な警備で地域の安全を守る
人材開発から業容拡大へ
警備業法では新任教育と、継続雇用者を対象にした現任教育が義務づけられているが、業界としても人材開発には力を入れる必要がある。一般的な警備のほかにも、特別なスキルが必要とされる難易度の高いものがあるためだ。
顧客企業の業態や、現場で取り扱うものの種類によって、警備の必要条件は異なってくる。原材料を扱うことの多い京浜臨海部では、化学薬品や重油などが誤って海に流れ込んでしまった場合には、拡散を防ぐために小型船舶を操ることもある。
消防操法の知識を体得していたり、現場によっては危険物取扱者、消防設備士、海沿いであれば小型船舶免許の有資格者が必要とされたりするような、専門性を問われるケースもある。そうした条件を満たす人材をさまざまな現場に割り当てる。現場では、企業が指定した講習や研修などを受けた上で、警備業務に入る。
同社は消火の技を競う毎年の総務省のコンテストで、初出場の2017年には7位となり、「消防庁長官賞」を受けた。2021年は2位となり、「総務大臣賞」も受賞している。
警備業としてスタートを切った同社だが、事業を進めていくうちに、顧客からの要望が多様化してくる。こうした要望にこたえるかたちで、清掃、クリーニング、設備工事、消防(防災)などへも業容を拡大していった。現在の事業のうち、4分の3を警備業務が占める。残りが清掃業務や設備メンテナンスだ。
警備に従事する人員は男性が多数派。これに対して、清掃業務の従事者は女性がほとんど。パートタイム勤務が多い。女性が働きやすい環境整備にも、同社は力を入れている。女性活躍推進法に基づく女性の活躍促進を促す企業に対する「えるぼし」の認定を取得した。それでも、警備業の女性雇用率の底上げは、なお課題だという。
「女性の雇用率も管理職における女性比率も高めていきたい」(深谷社長)。警備分野で専門的な経験や知識を積めば、キャリアアップにもつながる。資格も取得していけば、役職も上げることができる。女性活躍の道はそこにあり、いつでも来てほしいと待っている。
女性活躍の広げてゆく
安全・安心で「地域に恩返しをしたい」
「われわれの事業は『生活安全産業』」。そう位置づける深谷社長には「この地で50年事業を続けてこられた。地域に恩返しをしたい」という気持ちもあるという。このため、地域貢献にも力を注いできた。地元商店街では、防犯カメラの管理や警察への協力を続ける。自社の研修センターは災害時には帰宅困難者の支援施設として、50人程度の避難を受け入れるようにしてある。また、50周年記念として、市内に15台のロゴバスを走らせた。男子プロバスケットボール、Bリーグの川崎ブレイブサンダースのスポンサーでもある。
警備業には長年、「3K」のイメージもつきまとってきた。ただ最近の業界では処遇改善の動きが追い風となり、同社でも昇給や賞与の上積みを続けている。
新型コロナ感染を受けて、社員の福利厚生も見直した。感染した場合は、待期期間を有給で特別休暇の対象とする。PCR検査や抗原検査も会社負担とした。「感染してしまっても、それによって収入が減ることがないようにしたい。従業員もその家族も、会社が守るという気持ちでやっている」
そうした状況のもとでの地域社会活動にも、従業員のモチベーション向上につなげる目標がある。
深谷社長は「社員たちには、誇りややりがいを感じてほしい」。地域への認知度を上げることで、若い人たちにも、働く場として選んでもらいたいとの狙いもある。AIやロボット、ドローンの技術を活用し、警備の業務をハイブリッド化させた「新しい警備の形」も模索している。