株式会社 エヌシーイー

牛肉なのにマグロってなんだ??

プレミアム和牛「但馬玄」が川崎にやってきた

代表取締役 斎藤 玲
事業内容 飲食店経営、食肉卸、飲食コンサルティングほか
企業名 株式会社 エヌシーイー
創業 2018年(平成30年)1月
所在地 横浜市鶴見区東寺尾3-1-6(本社)
電話 044-201-7129
従業員 100名(アルバイト含む)
代表 斎藤 玲(サイトウ レイ)
URL https://nikukozo-takumi.com/

「但馬玄」と書いて「タジマグロ」と読む。但馬玄とは、兵庫県美方郡香美町町の上田畜産が育て上げた特別な但馬牛の肉である。

牛肉でありながら“マグロ”と呼ばれる所以は、脂が溶け出す融点にある。一般的な黒毛和牛の脂の融点が25℃であるのに対し、但馬玄の脂は12℃から溶け出すらしい。低温で溶け出す脂はサラサラとしていて、あたかもマグロの大トロのように口に入れた瞬間にとろけ、旨味が口いっぱいに広がることから、但馬牛と一線を画してタジマグロと命名された。

株式会社エヌシーイーが手掛ける「肉小僧グループ」は、川崎・鶴見エリアを中心に展開する、超人気の焼肉屋である。但馬玄や神戸うすなが牛など、最高峰の但馬牛を神奈川県で初めて取り扱っている。

すべての和牛は但馬に通ずる

日本が世界に誇る絶品グルメの一つ「黒毛和牛」。その中でも特に高品質とされるのは、日本三大和牛の「神戸ビーフ」、「松阪牛」、「近江牛」である。肉好きの方ならご存じかも知れないが、これらの素牛(生後半年~1年未満の肥育用の子牛)は全て「但馬牛」である。「米沢牛」、「宮崎牛」、「飛騨牛」、「佐賀牛」と言った高級ブランド牛も全て、但馬牛の素牛から肥育や改良が行われた牛である。実は、全国の黒毛和牛の繁殖メス牛の99.9%が、但馬牛の血統を引いている。そのことから“全ての和牛は但馬に通ずる”との言葉もあるほどだ。

和牛の頂点と言える但馬牛の産地、兵庫県北部の但馬地方は、冬には3mもの雪が積もる寒さ厳しい土地である。この冬を乗り越るために但馬牛は、エネルギーに換えやすい融点が低い脂(オレイン酸)を蓄えると言われている。

「但馬牛でも上田畜産さんのところは開放的で環境がいい、与える餌も健康的で上質、だから美味い」と、エヌシーイーの斎藤社長が但馬玄の魅力を説明してくれた。斎藤社長は31歳の若さでありながら、牛肉の世界で15年、牛の解体処理から、卸売、精肉店、焼肉店、さらに肥育まで手掛ける、牛肉界きってのスペシャリストである。16歳からこの道に進んだ経緯について伺った。

肉を知り尽くした男がリーズナブルに最高級和牛を提供

「野球推薦枠で高校に進学しましたが、行く末に疑問を感じ前期で退学し、幼馴染の実家が営む肉屋(卸売・精肉店)で働かせてもらいました。肉が好きな訳でもなく、そこなら幼馴染の下で副社長になれると思ったからです。“いらない”と言うところを無理やり就職させてもらいました。」

肉に対する特別な思い入れがあった訳でもなく、副社長への憧れだけで業界入りしたと言う。しかし、肉屋での仕事は16歳の少年にとって過酷だったに違いない。大黒の「横浜食肉市場」に出向いて、牧場から運ばれてきた生きた牛を解体し、枝肉処理や内臓処理も手掛けたらしい。“ショッキングだった”と斎藤社長は当時を振り返った。

肉屋では生肉の処理のほかにも、管理方法、生産者や肉卸業者からの仕入れ、小売に至る流通の仕組みも学んだ。その後、ご家族の不幸を契機に独立を決意し、焼肉屋を始めるために肉屋を辞めて、都内の有名どころの焼肉屋で調理の修業を積んだ。そして、24歳にして肉小僧グループの1号店「和牛肉小僧」を鶴見にオープンさせた。憧れの副社長を飛び越えて社長に就任したのだった。

和牛肉小僧はたちまち人気店となり、現在では川崎に4店舗、都内屈指の激戦地である西麻布にもグループ店を進出するほどに成長した。

但馬玄などの極致の但馬牛を始めとして、他店とは全く異なる上質の肉を、驚くほどリーズナブルに提供できる点がグループ最大の強みである。同等の肉質で比較すると、肉小僧で提供する価格は都内の焼肉屋の半額程度だ。

肉の目利き力、枝肉から内臓まで知り尽くした知識と処理技術、上質な肉を扱う肉卸業者とのネットワーク、流通の仕組みを知る者だけの価格交渉力など、斎藤社長が肉屋時代に培った全てが強力な武器となっている。

男塾のような肉漬け集団

肉小僧グループの成長の背景には、斎藤社長を支える仲間たちの存在もある。そして、斎藤社長にはそんな仲間を惹きつける不思議な能力があるようだ。

「うちは“男塾”のような肉漬け集団ですが(笑)、一度も社員を募集したことがありません。昔からの仲間が集まってきたり、アルバイトから転身した社員も多いです。退社したり独立したりする社員もいないので、創業以来これまで人材で困ったことがありません。」 このご時世に何とも恵まれているが、それは降って湧いたような運やツキだけではない。もちろん、男塾のような過激なスパルタ教育や強制も存在していない。話は変わるが、教育と言えば「お客様と幸せを共有したい、との思いがあれば接客マニュアルは不要」との話もあった。なるほど奥が深い。幸せの共有こそがサービスの神髄ということだろう。飲食業に限らず全ての仕事に言えそうだ。それはさておき、今度はカメの経営の話だ。

「以前は店舗数を増やすことが全てだと信じていましたが、30歳になってその考えが変わりました。店舗を増やすばかりでは、社員の誰かが疲れてしまうことに気付いたからです。それよりも、休みをちゃんと取れたり、みんなで旅行に行けるとか、利益を社員に還元するとか、“この会社にいてよかった”と思ってもらえるような会社を目指すことにしました。カメのようにゆっくりでいいので、社員が離れることがない“強い10店舗作り”が今の目標です。」と心境を明かしてくれた。

斎藤社長は、従業員がお客様から褒められるのが一番嬉しいそうである。仲間を失うぐらいなら、金持ちになりたくないとも語っていた。

今回は営業中の店舗にお邪魔して取材させてもらったが、従業員の方々がまるで一つの家族であるかのように感じられるのが不思議だった。その背後にあるのが、仲間たちと幸せを共有したいとの斎藤社長の思いなのだろう。それが人を惹きつけて離さない魅力に違いない。

最後にお知らせだが、但馬玄は希少なため食すには予約が必要である。そのことを知らなかった筆者は但馬玄に今回ありつけなかったため、食レポは次の機会まで取っておくことにする。

川崎市産業振興会館
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