川崎から世界へ発信 「ライスワインビネガー&フルーツ」
代表 瀧永 聡
事業内容 | 飲食業、ノンアルコールワインの製造・販売 |
企業名 | 天然素材蔵 |
創業 | 2001(平成13)年3月 |
所在地 | 川崎市中原区下小田中1‐3‐20 |
電話 | 044‐740‐6861 |
従業員 | 10名 |
代表 | 瀧永 聡(タキナガ サトシ) |
URL | http://ricewine-sangria.jp/ |
「ライスワインビネガー&フルーツ」とは、国産有機無農薬米を一部原料に使用する世界で初めてのノンアルコールサングリアである。アルコールを含まないため、お酒を飲めない人や未成年者、車を運転する人でも安心して飲むことができる。レストランやパーティーなどで、ノンアルコールのサングリアという選択肢も新しくて面白い。同製品は現在、国内外で大きな反響を呼んでおり、今後の動向が注目されている。中原区で飲食業「天然素材蔵」を営む、開発者の瀧永氏に話を伺った。
「こだわりのお米」と「奇跡の酢」
「天然素材蔵」はその名のとおり、天然の食材と調味料にこだわりを持つ、寿司とうどんを中心に提供する街角の和風食堂である。武蔵中原駅から中原街道を千年方面に向かって、5分ほど歩いた右側にログハウス風の店を構える。昼は地元の主婦や家族連れで賑わい、夜は近隣に勤めるサラリーマン達の憩いの場として人気の、地域では欠かせない飲食店である。
「おいしくヘルシーな日本食を安心して食べられるように!」とのコンセプトのもと、中でも妥協を許さず追及したのが「こだわりのお米」と「奇跡の酢」である。米は日本有数の米所として名高い山形県庄内地方の農家と直接契約を結び、無農薬の有機栽培米を一反あたりの収穫量をあえて抑えることで健康に育み、さらに瀧永氏が自ら現地に出向いて稲刈りをする。それほどの情熱と思いが込められた産物なのである。
酢は三重県のとある醸造所から特別に仕入れている。その製造には世界遺産「熊野古道」付近で採取された熊野杉の木樽を使用し、無農薬米を酸素すら送り込ませない静置法で発酵させ、浸透圧を利用して長い年月をかけて抽出している。生産量が極めて少なく市場に出回ることが無いため、奇跡の酢と呼ばれている。こだわりの米と奇跡の酢のコラボが生み出す寿司に、お客様は思わず笑みをこぼすと言う。
システムエンジニアからの転身
瀧永氏は異色の経歴の持ち主である。出身は市内高津区で都内の大学を卒業後、大手電機メーカーに就職。その後1995年1月に、赴任先の兵庫県で阪神淡路大震災に遭遇した。その時に、わずかな食糧を分け合う見知らぬ親子の姿に心を打たれ、生きるための原点である“食”を通じて「目の前にいる人に笑顔を届けたい」との一心で転職を決意した。安定したメーカーでの職を捨て、人と直接触れ合うことができる飲食業の世界に飛び込んだ。新天地は創業間もない回転寿司店である。瀧永氏はそこで寿司職人として腕を振るい、目の前の人たちと食を通じて向き合った。当初の従業員はわずか数名ほどの小さな所帯だったが、やがてスーパーバイザーとしてチェーン展開を任されるようになり、多くの新規出店や海外進出プロジェクトに携わった。その店は現在、売上高で国内トップを争うまでに成長している。無添加であることを売りにするお馴染みの回転寿司チェーンである。
しかし、瀧永氏はさらなる理想を追い求めて独立し2002年に「天然素材蔵」をオープンした。
ノンアルコールサングリア「ライスワインビネガー&フルーツ」
天然素材蔵は地域の人々から愛される人気食堂であり、瀧永氏は昼夜問わず多忙な日々を送っている。にもかかわらず睡眠時間を削って新たに取り組んでいるのが「ビバレッジ事業」だ。ビバレッジとは主にアルコールを含まない飲料を指す。2011年に軌跡の酢と道志村の天然水をブレンドした「横濱ビネガー」を開発し、2016年にこだわりのお米を原料とする日本酒をさらに発酵させてノンアルコール化し、ぶどうやリンゴ、レモンの果汁を加えた「ライスワインビネガー&フルーツ」を生み出した。生産は川崎市と縁のある島根県益田市の企業に依頼している。
新製品「ライスワインビネガー&フルーツ」はそのネーミングから、ワインなのかビネガーなのか、はたまたジュースなのかと疑問を感じるかもしれないが、これはノンアルコールのワインである。「サングリア(白)」と「サングリア(ロゼ)」の2種類があるが、どちらも香りはリンゴのすっきりとしたフルーティーさが引き立ち、口に運ぶと優しい酸味とまろやかな甘味が広がる。軽やかでありながら、後味には深みのある旨みが残る。これまで経験したことがない個性的な味だが美味い。恐らく、旨みと個性を引き立てているのは、奇跡の酢の働きと思われる。
国内での発売に先駆け、JETROを通じてイギリス(ロンドン)でマーケティング調査を行ったところ、設定価格が21ポンド(約3,200円)とやや高価ながら、5割近い消費者が「購入したい」と回答した。「良い意味で変わった味」、「飲みやすく美味しい」、「ギフトに良い」などの意見が付されている。味の好みに関して約7割が肯定意見であり、JETROもお墨付きを与えている。
川崎から世界へ発信、そして地元へ
これまでの販売実績と今後の計画については、「今年5月から発売を開始し、国内では最大手のコンビニエンスストアがギフト商品として扱ってくれたことで、これまでの半年間で5,000本近くが売れました。12月からは準大手のコンビニでも同様にギフト商品として取り扱いが始まりました。さらについ先日ですが、ある薬品メーカーから、自社ブランドで売らせて欲しいとの申し出がありました。それもこれまでとは桁が異なる大量の注文です。」売れ行きは上々である。
さらに「今年は5月に北京の日本国大使館で開かれた『大使公邸春の交流会』と、12月には瀋陽の日本国領事館が主催した『天皇誕生日祝賀レセプション』の場で、新製品を紹介する機会をいただきました。そのことで、日本の外務省にあたる外事弁公室からも直営店舗で販売したいとの話も来ています。」12月に入って、国内外から、しかも大口の引き合いが多数あるという。 現在、生産体制を整えるため、益田市に加えて京都に第二工場を設置する準備に追われている。
今後の目標を訪ねると、「前職の回転寿司チェーンが20年で1,000億円を売り上げたので、 私も一日も早く同じ高みに届き、お世話になった方々へ安心感をお届けしたいです」と夢は大きい。しかし、それはゴールではないと言う。
「売り上げの一部は地元に寄付するなど地域に還元し、生まれ育った川崎に貢献したいと考えています。お金の流れを作り出していくことで、笑顔があふれる街にしていきたいです。」と力強く語った。震災に端を発する「目の前にいる人に笑顔を届けたい」との思いが瀧永氏のチャレンジの原動力となっている。
商品写真
「ライスワインビネガー&フルーツ」