希少小麦「キタノカオリ」の芳醇な味わいと 食べてうれしい「ウェルネス」を両立
店長 石井 恵(右)
事業内容 | カフェとベーカリーの運営 |
企業名 | ベーカリー&カフェ くもい |
創業 | 2015(平成27)年11月 |
所在地 | 川崎市幸区塚越2-225 |
電話 | 044-742-8134 |
従業員 | 6名 |
代表 | 石井 恵(イシイ メグミ) |
URL | https://kumonoirutokoro.tumblr.com/ |
2021年11月、川崎市幸区の塚越銀座商店街に「ベーカリー&カフェくもい」が新たにオープンした。運営するのはオーナーの坂本良子さん(写真中央)と卓馬さん(左)、そして店長の石井恵さん(右)のご家族である。店の前身はカフェだが、隣接する店舗を新たに借り受け、カフェとベーカリーを空間で繋げ、お客様が往来できる並列店舗とした。
ベーカリーで焼く自慢の食パンには、希少品種の北海道産小麦の「キタノカオリ」がブレンドされており、漂う芳醇な香りが食欲をそそる。思わず食べ過ぎてしまいがちだが心配は無用。美容や体脂肪低減の効果が期待できる、ウェルネスパンも用意されている。
地元に必要とされ愛される店
店名の「くもい」とは、“雲のある場所”、“雲のたなびいているところ”、“大空”を指し、古事記や万葉集の和歌にも登場する古からの言葉である。そこには、お客様にのんびりと居心地よく時間を過ごして欲しいとの思いが込められている。
前身のカフェの創業は2015年8月に遡る。それまで、自宅でパン教室の講師を務めていた母良子さんと、書店に勤務していた石井さんの母娘二人で、「焼き立てのパンと本に出会えるカフェ」をコンセプトに開店した。 ベーカリー外観
無添加で安心なパン、採れたての“ハマっ子野菜”、宮前ブランド卵“HEBARA NO MEGUMI”などの地産食材にこだわるほか、絵本や名作が並ぶ空間を演出し、地元の比較的年齢が若いファミリー層を中心にカフェは賑わうようになった。
しかし、転機は突然訪れた。2020年春からのコロナ禍により、飲食業態であるカフェは、ご多分に漏れず来客数と売上高が激減した。要件を満たさないため、休業や時間短縮の協力金も得られず、苦しい日々が続いていた。光明が差したのは、翌2021年に入って隣接するテナントがたまたま空いたことだった。石井店長に話を伺った。
「お隣の店舗が空いてすぐに家族で話し合いました。実は以前からお客様に“くもいのパンを売って欲しい”との声が寄せられていたのですが、営業許可の都合でそれができずにいました。また、飲食店は当面、需要や売上の回復が期待できないだろうとも考えていました。そうした背景があったので、“テイクアウト販売のベーカリーを開こう!”と家族の思いが一致し、早速テナントを申し込みました。」
こうして、他店で修業を積んでいた弟の卓馬さんを加え、「ベーカリー&カフェくもい」が新たにオープンした。
「事前に開店の告知ができなかったのですが、コロナ禍で顔を見なくなっていた従来のお客様が、花を持ってたくさん来店してくれました。そのことで、地元のみなさまに“くもい”が支えられていたことを改めて知ることができました。」と石井さんが当時を振り返る。地元に必要とされ、愛されてきた証だろう。
大企業が所有する特許を使ってウェルネスパンを開発
開店にあたり、くもい独自のメニューを開発するため、大企業が所有する知的財産のライセンスを受けた。そして、身体に優しいウェルネスパンを新たに開発した。
ウェルネスパンとは“健康志向”のパンを指す。近年では食パン専門店の「高級食パン」が話題だが、新たなトレンドとして「ウェルネスパン」も注目を集めているらしい。
くもいが新開発したウェルネスパンは、「ハーブのちから」と「みかんのちから」の2種類の食パンである。どちらにも京都市に本社を置く医療機器メーカー「アークレイ」が特許権を所有する機能性食品素材が使われている。
「ハーブのちから」(1斤450円)には、カモミール、ドクダミ、セイヨウサンザシ、ブドウ葉の4種のハーブから抽出した「AGハーブMIXTM」が配合されている。AGハーブMIXTMには、加齢による糖化を抑える作用があり、肌の張りや弾力向上の効果が期待できる。アンチエイジングや肌の調子が気になる大人の女性にうれしい素材だ。「ミカンのちから」(同)には、温州みかんから抽出したβ-クリプトキサンチンを濃縮した「クリプトベータ」が配合されている。β-クリプトキサンチンは、悪玉コレステロールや中性脂肪を低減する効果が期待できる。メタボが気になる御仁にオススメだ。
また、これらの食パンには、北海道産小麦の「キタノカオリ」がブレンドされているので、芳醇な香りとモチっとした食感、小麦のしっかりとした味が楽しめる。筆者の好みでは、流行りの高級食パンの上をゆく。
なお、キタノカオリは育てるのにとても手間がかかる品種のため、生産農家が減少し手に入りにくくなっているらしい。開店以来、食パンは人気で品切れになる日も多いらしいが、この機会に是非味わってみて欲しい“イチオシ”の逸品だ。
ハーブのちから(左)とみかんのちから(右)
川崎市民は何が好き?
気になったので、川崎市のパンの消費額について、食に関する各種データと食品表示の専門サイト「食品データ館」を使って調べてみた。
まずは、一世帯当たりのパン支出額の全国平均の推移をみると、2013年が27,974円、2020年が31,456円と、この7年で市場は11%拡大している。既に2011年にはコメの消費額を上回っていた。
次いで都市別ランキング(全国都道府県所在地と政令指定都市を合わせた52都市)を見ると、2020年のパン支出額の第1位は京都市で、一世帯当たり39,078円と全国平均の1.24倍である。次いで神戸市、岡山市、奈良市、大津市と続き、関東では東京23区(6位)、千葉市(7位)、さいたま市(10位)と関西勢に押されている。そして、気になる川崎市の順位だが、支出額30,409円の33位と全国平均を下回っていた。“川崎市民はコメが好きなのだろうか?”と調べてみると、意外にもコメ支出額は36位とさらに下位。それでは“市民はいったい何を食べているのだろうか?”と食費の内訳BEST5を調べると、下から「肉類」、「菓子類」、「野菜・海藻」、「調理食品」、「外食」の順だった。1位の外食にかける支出額ランキングは、全国平均より17%多い7位である。恐らく、川崎は働く世帯(労働人口)が多いので、内食よりも外食で簡単に済ませたいと考える人が多いのだろう。そんなお忙しい市民のみなさま、くもいのパンを持ち帰って、時にはゆっくりと“中食”を楽しんでみませんか。