日本食文化の架け橋、豊富なネットワークを駆使して水産物を海外展開
代表取締役
佐藤 卓也
事業内容 | 水産物の輸出卸売業 |
企業名 | うおん 株式会社 |
創業 | 2009年(平成21年)7月 |
所在地 | 川崎市幸区南幸町3‐126‐1 川崎南部市場水産仲卸売場棟2階 |
電話 | 044‐548‐6010 |
従業員 | 4名 |
代表 | 佐藤 卓也(サトウ タクヤ) |
URL | http://www.uon.co.jp/index.html |
和食は2013年にユネスコの世界無形文化遺産に指定され、ここ数年で日本の水産物輸出金額は飛躍的に伸長している。その和食の食材である日本産の300種類におよぶ新鮮な魚介類を、インターネット受発注システムを活用し、中国他アジアのマーケットに50kgからの少量出荷および短納期対応で輸出している。日本の水産業は衰退産業と言われていたにも拘わらず、川崎南部市場に拠点を構える佐藤社長は、「日本の水産業を元気にしたい」「日本食文化の架け橋になりたい」と将来の夢を語る。
日本全国の生産地から厳選鮮魚を直接買い付け 最寄りの空港からアジア諸国や中東に、抜群の鮮度で多品種少量出荷対応
当社の強みは、一つ目は豊富な生産地ネットワークである。日本全国の約200ヶ所に及ぶ調達先(漁師・漁協組合・卸売市場・養殖会社・メーカー)から直接買い付けることができるため、顧客の希望に沿った商材を探し出して提案することが可能である。
二つ目は、短納期に対応した物流ネットワークである。水産物は工業製品と違って鮮度が命である。生産地に最も近い札幌から鹿児島までの12ヶ所の空港から、アジア諸国や中東の指定空港に鮮度を保持したまま24時間以内に届ける物流ネットワークを有している。
三つ目は、多品種少量出荷に対応していることである。約300種類もの豊富な鮮魚・冷凍品・加工品を扱っており、50kg以上あれば多品種でも少量出荷を可能としており、顧客である海外のホテルや有名和食レストランの多様なニーズに応えている。最近では中華圏で人気の高い「活魚」の輸出にも力を入れているというから驚きである。
四つ目は、ITを活用して受発注業務をシステム化しており(UONMART)、Web上でその日のお勧めの魚や相場など顧客が知りたい情報を提供し、受注を受付けていることである。
3年間で10社転職を経験した後にたどりついた魚の輸出事業
佐藤社長は、最初から水産物の輸出を目指して起業したわけではなかった。2002年に大学卒業後、3年間でIT、不動産、飲食、教育サービスなど10社を転職した。そんな折、一番長く務めた会社の社長が「今度、魚ビジネスをやるから、佐藤君一緒にやらないか?」と誘われ、水産物の輸入の仕事に2005年から役員として携わった。
魚の輸入ビジネスでは多くのトラブルも経験した。ある日、コンテナを開けたら入っていたのは魚ではなかったこともあった。3年間の輸入ビジネスで貿易のノウハウも習得し、諸外国の仕入先や日本の販売先との人脈もできた。しかし、衰退産業と言われていた水産業で持続可能なビジネスにしていくには「外に向かってやっていくしかない」と輸入ではなく輸出ビジネスに目をつけ、「うおん株式会社」を2009年に立ち上げた。当初は社名の響きから顧客に「韓国の会社ですか?」とか「イオングループですか?」と間違われたりもした。
当社の顧客は、海外で五つ星がつくホテルのレストランや有名和食レストランである。いわば富裕層が利用する施設をターゲットとした販売戦略をとっている。佐藤社長はインポーターの開拓のために、中国・ベトナム・タイ・マレーシア・インドネシア・アメリカ・カナダ・メキシコなどを頻繁に訪問している。エージェントは使わずに、顧客のネットワーク情報から新規顧客を開拓している。うおんから調達すれば「安心・安全・高品質」な水産物を短納期で仕入れることが信頼関係につながり、新たな顧客情報も提供してくれるのだ。
世界195ヶ国に輸出するシーフードソリューションカンパニーを目指す
農林水産省の統計によると、年間1,900億円前後で推移していた水産物の輸出金額は、東日本大震災後に1,700億円を下回った。ところが、和食が世界無形文化遺産に登録されたこともあり、中国・米国・タイ・台湾への輸出が伸長し、2015年には2,750億円となった。水産物の輸出はインバウンドビジネスと同様、ここ数年で伸びている成長産業のひとつなのである。現在のような状況になる以前に、魚の輸出ビジネスに目を付けた佐藤社長は、まさに先見の明があったのである。
日本は四方を海に囲まれ、黒潮と親潮が交わる位置にあり、豊富な漁場と魚種に恵まれた島国であるが、「日本は発信力が弱い。和食における魚の色んな食べ方や〆方などは世界に知られていない。例えて言えば、今の当社はジグソーパズルの一つ一つのピースを拾っている段階で、これを絵に仕上げて発信できたら、もっと魚の輸出が伸びて日本の水産業が元気になる。地方の活性化にもつながる」と、佐藤社長は胸を張る。「自然から獲れたものを食べる。自然に触れると人は元気になれる。日本人だから和食がわかるとかではなく、国の違いに関係なく会話が楽しめる。人と人とのアナログな付き合いが魚を通じてできる、まさにイッツアスモールワールドが実現できる。これは魚以外の商材ではできない。3年で10社も転職した自分ですら絶対やめられない面白さなのです。」と、日本食文化の架け橋となる夢を語る佐藤社長はとても熱い。
現在はアジア諸国が中心の輸出先であるが、将来は195ヶ国ある世界中の国に輸出したいと抱負を語る。夢の実現のためには、人・モノ・金・設備など足らない部分をひとつずつ解決していかなければならない。魚ごとに異なる鮮度維持時間を管理し、より安心・安全に商材を提供するために、産地から納入先までのコールドチェーンのトレーサビリティも確立し、現在のトップクラスのホテルやレストランから中級クラスの顧客まで裾野を広げていく。また、現在の受発注システムUONMARTはB to Bビジネスでの利用のみであるが、決済機能の追加などシステム機能を更に充実させる。さらに、和食が世界無形文化遺産になったとは言え、まだまだ和食の良さが世界に知られているわけではないので、海外で提携しているコンサルティングシェフと和食イベントや料理教室などを一層強化していく。
佐藤社長は「当社はシーフードソリューションカンパニーになりたいのです。」と締めくくる。シーフードソリューションカンパニーとは、和食の良さを単に情報発信したり、調理法を提案することだけでなく、将来の食糧不足問題に寄与する養殖ビジネスの展開や、世界中の天然魚の水揚げ情報提供ビジネスなどを意図している。「made in JAPAN shipping by UON」の魚が世界195ヶ国に流通し、川崎発「うおんブランド」が世界に浸透する日が今から楽しみである。