認定工場は運命共同体! プレス加工を中心に様々な機械部品に対応
社長 渡辺 文一
事業内容 | プレス加工(高品質・多品種・小ロット対応可能)、金型製作(類似部品の小ロットに順送対応可能)、プラスチック加工、組立加工 等 |
企業名 | 株式会社 鈴幸製作所 |
創業 | 1961年(昭和36年)2月 |
所在地 | 川崎市高津区北見方1‐13‐12 |
電話 | 044‐813‐1911 |
代表 | 渡部 文一 (ワタナベ ブンイチ) |
鈴幸製作所はプレス部品を中心に、成型部品、ダイキャスト部品、鍛造品、ワイヤーハーネス、組立など、幅広い機械部品加工に対応している。当社は国内市場が縮小する中、顧客への技術提案、認定工場を含めた生産体制の整備、環境経営への取り組み等の様々な施策を着実に実行することで、生き残りを図ってきた。『小さくとも一流企業を目指す』を企業理念に掲げる元気企業を紹介しよう。
ISO14001の取得に取り組み、地球環境大賞を受賞
鈴幸製作所は1961年の創業以来、金属のプレス部品加工を中心にものづくりを行ってきた。50年を超える業歴の中で培ってきたプレス加工・金型製作・プラスチック加工・組立加工などの技術力を駆使して、現在ではOA機器・自動車関連部品・自動車音響関連・通信機器・アミューズメント関連等の様々な業界に対し、高品質な部品を供給している。
当社は川崎市高津区の本社と中原区のプレス・金型工場により、国内事業を進めている。また、海外事業としては、20年程前からフィリピンへ進出し、プレス加工やプラスチック成形等を行っている。顧客の多様なニーズに合わせて事業を拡大させてきた。今では大手OA機器メーカーから主要サプライヤーとして認定されるまでになっている。
渡部文一氏は、1997年に当社へ入社。それまでは、大手光学機器メーカー向けの製品を製造する会社で、資材購買部門の責任者を務めていたという。渡部氏が勤務していた会社が鈴幸製作所へ部品を発注していたという関係にあり、当社は渡部氏の人柄や指導力を見込んで、渡部氏を招いた。
その後、渡部氏は1999年に当社の社長に就任。当時は大ロット部品の生産が海外へシフトしていた時期であり、強い危機感を覚えたという。そこで従来の大ロット重視の方針を転換し、1,000個以下の中ロット品を受注のターゲットにして営業活動を展開した。大ロット品が海外へ流れることを止めることはできないが、中・小ロット品は国内生産にとどまるという読みだ。この読みは的中し、顧客の数を増やすことができ、売上の減少に歯止めをかけることに成功した。
一方、顧客からISO取得の要請を受けたのも同じ時期である。「地球環境を意識して事業活動を行うことは大切であること、全社員が一致協力して活動できるテーマであることから、ISO14001の認証取得に挑戦することにしました。当社のような中小企業が取り組むのはまだ珍しかった頃でしたから、私たちのISO取得に向けた社内の活動は注目され、NHKの取材を受けました。BSで35分の特番として放送されたことで、全国から大きな反響が寄せられました」と渡部社長は当時を振り返る。
そして2002年には、フジサンケイグループの地球環境大賞『日本工業新聞社賞』を、中小企業として初めて受賞した。「授賞式は秋篠宮同妃両殿下をお迎えして行われ、記念撮影ではたいへん緊張しました」と笑顔をみせる。
順送金型を独自に考案! 認定工場も含めて供給体制を整備
鈴幸製作所はプレス加工等の豊富な技術力の蓄積を活かし、顧客にコストダウンや生産性向上のアイデアを提案することで、他社との差別化を図っている。顧客から部品製作の相談を受けた際には、例えば、加工方法を切削からプレスに変更することでコストを削減してはどうか、といった提案を行っている。また、製品の機種数が増えるに伴い、部品の形状や寸法の一部だけが異なる類似部品の点数が増加するが、当社では独自に考案した順送金型により、金型費用の低減などを実現している。具体的には、順送プレス金型において、1つの母型(マスターダイ)で共用可能な範囲を固定し、形状が異なる部分を簡単に交換できる『カセット式』にして、類似部品の加工を可能にしている。これにより、金型費用を数千万円単位で低減できるという。加えて、金型を交換する時には、カセットの部分だけを交換すればよいため、段取り替えの時間を大幅に短縮することができ、部品コストの削減も可能だ。
一方、当社では外注を活用した生産体制も整備している。国内にプレスの認定工場15社、金型の認定工場7社を持ち、供給体制を整えている。例えば、当社が認定した協力工場全体では12tプレスから250tプレスまでの様々な生産設備を揃えており、大ロットから小ロットまで、多様な材質・板厚・形状の板金プレス加工を行うことができ、顧客が指定する納期に合わせて納品している。
「現在では、鈴幸製作所で受注した仕事のうち、約2割を社内で生産し、残り8割を認定工場に外注しています。品質・コスト・納期など、お客様の様々なニーズにきめ細かく対応していくためには、認定工場に協力していただくことが欠かせません。当社にとって認定工場は大切なパートナーであり、私たちは運命共同体であると考えています。認定工場に対しては、必要に応じて5S等の指導を行っています。また、当社が主催して、認定工場の後継者に対する教育研修も行っています」と渡部社長は解説する。
事務所にゴミ箱が無い! 社員一人ひとりが経費削減目標を立てて実行
鈴幸製作所は環境経営に注力する中で、ゴミを極力出さないことを徹底しており、その活動を象徴しているのが事務所にゴミ箱を置かないこと。自分で出したゴミは、家に持ち帰って処分するのが社内のルールだ。そして、コピー用紙は裏面も使用し、不要となった書類はシュレッダーにかけて裁断する。細かく裁断した紙はビニール袋に詰めて、製品を梱包する際の緩衝材として再利用する。このように当社では、ISO14001の認証取得に満足することなく、日常業務の中で余分なゴミを出さない、資源を大切に使うという意識づけを徹底している。
当社ではコスト削減活動にも全社を挙げて取り組んでいる。毎年、社員に修繕費・車両費・消耗品費・事務用品費・電力費・水道光熱費等の経費削減目標を立ててもらい、その達成状況を毎月の会議でフォローしている。目標の設定や実行では、社員の自主性を尊重するのが当社の流儀だ。また、経験豊富なベテラン社員からなる『支援グループ』を社内に設置し、経費削減や職場改善等に向けて各々の社員・部門・協力工場が抱える問題の解決をサポートしている。
一方、社員に対して、溶接・フォークリフト・玉掛け・衛生管理者等の様々な資格の取得を奨励したり、外部の研修に参加させたりすることで、人材の育成を図っている。また、毎年、卓球大会やカラオケ大会を全社員が参加して行っており、社員のモチベーションを高めている。
今年の秋には渡部社長が退任して、後進に道を譲る方針だ。「当社の事業基盤は整備できています。これからも認定工場と協力しながら、お客様のニーズに的確に応え、事業を発展させていってもらいたいと願っています。私の社長在任中に社員の平均年齢は、50歳超から37歳に下がっていて、若い社員の活躍に期待しています」と渡部社長は次の世代に将来を託す。