株式会社 KMC

製造現場に寄り添い 日本のモノづくりを支援する


代表取締役 

佐藤 声喜
事業内容 ハードウェア開発、ソフトウェア開発、DX 技術コンサルティング
企業名 株式会社 KMC
創業 2010年(平成22年)
所在地 川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP 東棟606
電話 044-322-0400
FAX 044-322-0401
従業員 20名
代表 佐藤 声喜(サトウ セイキ)
URL https://kmc-j.com/

デジタル化の進展が製造業にも大きな変化をもたらし始めている。長らく製造現場を支えてきた熟練職人たちの五感を各種センサによって、データとして顕在化させ、人の技量に依存しないスマートなモノづくりが進んできた。KMCは製造現場のデジタル化を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションメーカーだ。ハード、ソフトの両方を提供し、モノづくりを熟知したエンジニアが顧客に寄り添い、日本の製造業の変革に寄与し続けている。コロナ禍が明け、製造業が本格始動する中、デジタル化への動きが加速しており、同社の存在感もさらに増している。

アナログ改善からデジタル改善へ

KMCは、自動車産業を中心に製造業全般を対象として製造現場へのデジタルソリューションの提供を展開している。製造工程におけるデータの「取得」→「見える化」→「分析」→「活用」を一連のサイクルとして実現するためのセンサ・センシングなどの周辺機器とデータを分析・活用する管理システムというハード、ソフトの提供である。佐藤声喜社長は「製造業で利益を生むのは製造現場。不良製品を出さない、設備を止めないことが生産性を高めるために最重要なポイントです。そして、そのカギを握るのが『設備』『金型』『材料』の3要素。特に設備の故障、金型の不具合は生産性、製品品質に直結し、現場力が問われてきます」と指摘する。その現場力を従来の人によるアナログ的な改善から最新のデジタル技術を活かしたデジタル改善へと導くのが同社の取組みである。

同社のデジタルソリューションは大きくは3つのカテゴリーに分けられる。1つは職人の五感に代わる振動・熱電対・電流・環境(温湿度)などの無線センサを提供する「情報機器ソリューション」。2つ目が工場内の製造設備をネットワークで結び稼働監視と予兆保全を実現する「M2M ソリューション」。そして、3つ目が職人の技から各製造工程の生産状況など膨大な製造データをクラウド上で一括管理する「IoTソリューション」である。

たとえば「サーモモニタリン」は金型表面温度のセンシング装置。非接触サーモカメラでダイカストマシンや射出成形機など金型温度を検出し、データを見て分析することで温度のムラなど不良ができる原因を突き止め防止策を講じることが可能になる。また、無線稼働システム「稼働モニタリン」は、プレス機械や樹脂成形機などの振動を検知して稼働率を監視する仕組み。稼働、段取り、停止の稼働データを手軽に収集し、分析することで故障の予知保全や品質改善に役立てられる。

さらにこうした稼働率や成形、加工条件といった加工設備や周辺設備の各種データを一括監視できるのが「Σ(シグマ)軍師シリーズ」。国内外の工場のライン監視・設備の一元管理が行え、全社規模での原価低減、生産性向上に寄与するシステムである。同社ではこうした各種ソリューションを顧客の要望に合わせて提案できるのが特徴だ。「当社は生産技術などに精通したエンジニアが揃っているため現場に即したデジタル化を進められるのが最大の強み。そこが他のシステムインテグレータと大きく異なる点です」と佐藤社長はモノづくりを熟知した対応が顧客の信頼を勝ち得ていると強調する。

 川崎で2度目の創業

KMCの設立は2010年。佐藤社長にとっては二度目の創業となる。佐藤社長は大学卒業後、三井金属鉱業に入社。米デトロイト勤務時代の上司に誘われ創業メンバーの1人として1990年に立ち上げたのが伝説的なベンチャー企業として知られるインクスだった。3Dプリンターの先駆けとなる3次元光造形機の普及を目指し、「金型の納期を2カ月から45時間に短縮する」をキャッチフレーズに金型業界の常識を変え、日本の製造業に旋風を巻き起こした企業である。創業から急成長し、最盛期には1800人の社員を抱えるまでに拡大した。しかし、積極的な投資などが業績に影響し、2008年のリーマン・ショックを引き金に破綻。会社再生法を申請するに至った。

当時、同社COOとして事業運営を任されていた佐藤社長は約400社の取引先へのお詫びにまわり、「これまでの会社人生で一番つらかった」と振り返る。しかし、訪問先で応対した経営者や役員からの「佐藤さん早く次の会社つくりなさいよ」との励ましに救われたという。佐藤社長も「これで終われない。もう一度、会社を興して懸けてみたい」との思いが再出発へと駆り立てていった。

コロナ明けからデジタル化への取組みが加速

社名のKMCは人間の知恵(Knowledge)を活かしたモノづくり(Manufacturing)の仕組みを作る会社(Company)を意味する。拠点として選んだ、かながわサイエンスパーク(KSP)は前職のインクスがスタートした地でもある。「私が社会人として育ったのが川崎市であり、現在の住まいも近く、愛着があったことがKSPを選んだ理由です」(同)。KSPのスタートアップルームにキャンプ用のプラスチックテーブルを置き、インクス時代の仲間と2人で創業した。「インクス時代の取引先が応援してくれたお陰で仕事には恵まれました」と出足から好調だった。その後、研究棟へ拠点を移し、加工設備も置き、システム開発からセンサなどの機器の設計製造までを手がけ、自動車メーカーや部品メーカーを中心に顧客を広げていった。

2017年には大手光学機器メーカーの東南アジアの工場でこれまで培った要素技術を組み合わせたスマート工場を実現した。1機種に3万点もの部品を要する製品を管理する仕組みは高く評価され、同メーカーの世界8工場に展開。現地メディアにも大きく取り上げられた。「これで一気にいけると思いましたが、日本に戻ると意外と反応が薄い。当時の日本には少し早かったと気づきました」(同)。ただ、ここで築いたスマート工場はKMCの一つの到達点として位置づけられ、現在の事業展開にも大きく寄与している。「コロナ禍で昨年までは厳しい時期が続きましたが、23年10月頃から潮目が変わってきました。コロナ禍を経て人材不足が一層顕在化し、大手メーカーを中心に本気でデジタルによる改善を進める機運が盛り上がってきています」と時代が同社に追いついてきたと自信を示す。同社が提案する製造DX、金型DXに関するソリューションやDX人材教育への引き合いに加え、センサ類をパッケージ化したセンサキットなどの販売も好調に推移している。

若い世代、女性が活躍できる製造業の基盤づくり

佐藤社長は「少子高齢化を背景に製造業の人材難は年々厳しさを増しており、人手不足に対応した自動化設備やロボット導入は盛んになっています。ただ、私の考える本当の問題はそうした自動化するための生産技術を担う人材がいないこと。その技術をデジタルで補いつつ、生産技術を担う人材をいかに育てていくかが重要です」と主張する。「日本が雇用を守り、成長を維持して行くには製造業を強くしていくしかありません。そのためには若人や女性がモノづくりの世界に入って活躍できる基盤づくりが大切です。かつての徒弟制度のような仕組みでなく、デジタル技術によって誰もがモノづくりに携われる環境を整えるよう尽力していきます」。デジタル技術の進展でモノづくり立国日本を強化していく考えだ。

川崎市産業振興会館
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