有限会社 エヌ・エス・フーズ

川崎市北部市場で畜産品・農産品・ジビエ等の食材を販売する「肉屋横丁」を展開


代表取締役

永野 和明
事業内容 食品販売(ジビエ 畜産品 農産品 水産品 加工品 輸入食品等)
企業名 有限会社 エヌ・エス・フーズ
創業 1996年(平成8年)4月
所在地 川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟56
電話 044-872-7400
電話 044-872-7399
従業員 7名
代表 永野 和明(ナガノ カズアキ)
URL https://nikuya-yokochou.com

川崎市中央卸売市場北部市場に「肉屋横丁」として営業している当社は、畜産品や農産物の他に、一般のスーパーでは売られていないジビエ等のプロユース向け食材を多数ラインアップし、全国の有名ホテルやフレンチ・イタリアンレストランに提供している。「命につながる食材をもとめて」をモットーに、「美味しいは人を笑顔にする」ことを追求し続けている代表取締役の永野和明氏に、当社創業の経緯と事業内容について話を伺った。

畜産品・農産品に加え、ジビエも扱う食品販売会社 「ジビエには旬がある」

当社の売上のメインは、牛肉や豚肉などの畜産品と野菜などの農産品であるが、他に無い強みとして鹿肉や猪肉などのジビエを豊富に扱っていることである。顧客は一流ホテルや星付レストラン、一般飲食店や個人客など、これまで5000の登録数を超えている。日本全国の農家やハンターから直接仕入れることがほとんどで、流通に乗っている商品とは美味しさが全く違うとのこと。

ジビエとはフランス語で野生鳥獣肉のことであり、食料用に飼育された動物の畜産肉と対比で使われる。ジビエは昔で言う貴族料理・宮廷料理で出されたもので、元々は貴族が趣味で狩猟で獲った野生の獣や鳥を調理していたものである。ジビエは「魚と同じく、旬の季節がある」と永野社長は力説するが一体どういうことだろうか。一般に野生鳥獣は冬に備えて栄養を蓄えるため、脂が乗って美味しくなってくるという。狩猟解禁時期は国や地域によって異なるが、大体11月から翌年2月ぐらいで、ジビエは本来その期間に獲れたものを指すようだ。

一方、最近メディアで野生動物被害が頻繁に報道されている。昔から人や農作物に対する野生動物被害はあったが、特に人里に近い所での被害が増えている。温暖化による降雪量減少など様々な要因があるが、人手不足で山林の手入れが行き届かなくなり、野生動物の行動範囲が広くなった結果、エサが豊富な人里に現れると言われている。放置すると人の安全や経済活動に大きな影響が出るので、駆除することもあるが、獣害で駆除した野生動物を単に廃棄するのではなく、ジビエとして流通させる動きが活発になっている。ただし、駆除は季節を問わないので、「ジビエの旬」を大事にする永野社長は、駆除された野生動物のジビエには手を出さないというポリシーだ。駆除ではなく狩猟時期に獲れた、最も美味しい「旬のジビエ」を提供するというこだわりがあるのだ。

ジビエと聞くと血抜きが不十分で臭いという誤解が多いらしいが、野生動物は鉄砲で撃たれるとほぼ即死するので心臓が止まり血は出ない。野生動物は家畜と違って、すぐ血抜きすることはありえないという。また、肉から余分な水分を除くことによって熟成も進むという知見も元々あったので、当社では狩猟で獲れた現地で剥皮・除骨・成形した上に真空引きを施して、余分な水分を除くことによって臭みを少なくして保存している。このように、駆除された野生動物を使わず、旬の時期に獲れたものに現地での加工処理を施すというこだわりがあって、顧客であるプロの料理人との勝負ができる。一流の料理人が「これは美味しい!」と言ってくれることに当社の存在価値があると永野社長は胸を張った。

部活動とアルバイトに明け暮れた学生生活の後、食材輸入の仕事に就く

永野社長は1964年長崎県雲仙市に四人兄弟の三男として生まれた。実家は農家で米やジャガイモを作っていたが、成長するにつれて、いずれ実家を出て東京の大学に行きたいと思うようになった。首尾よく国立の東京水産大学(現:東京海洋大学)の水産学部食品工学科に入学した。大学では、自分には専門外の物理の講義もあって大変だった一方で、缶詰の作り方、ソーセージの作り方、鰹節の作り方など実習は楽しかったようだ。だが、当時はどちらかというと大学の講義より、部活のバスケットボールとレストランでのアルバイトに精を出していた。就職に際しても教授推薦枠の大手企業には興味を示さず、アルバイト先の料理人に紹介されたフランス料理の食材の輸入商社に就職したのが、この業界に入った第一歩目であった。

その後、会社は6社移ったがいずれも輸入食材の企業であった。ある時、料理人の人から北海道の焼尻島にノルマンディー産の羊に匹敵する羊がいると聞き、現地で食してみると大変美味しいと感じた。灯台下暗しで海外に劣らない食材の宝庫が日本にもあることに気づかされたのが契機になり、独立して日本産の食肉や農産物を扱うことになった。1996年(平成8年)4月に有限会社エヌ・エス・フーズを立ち上げ、当初は自宅が事務所、その後東京の芝浦に事務所を構えていたが、当時多かった鹿肉が捌き切れなくなり、川崎市東扇島にある日本食肉流通センターに移転した。

「命につながる食材をもとめて」をモットーに「美味しいは人を笑顔にする」

時は流れ、B 級グルメなどが人気となり、それまでの卸売中心から小売にも力を入れようと考えていた折、食肉流通センターの建替えの話がきっかけで、小売もできる川崎市中央卸売市場北部市場に2019年12月に移転した。さあこれからという時に、2020年2月からの新型コロナ感染症拡大という事態が起こった。世の中、外食を控えたせいで外食産業が落ち込んで卸売も前年比▲30%~▲40%と連続して落ち込んだ。コロナ禍中は「悲惨な状況だったが、逆にお金が無いから頑張ってやってこれた。神奈川県の事業再構築補助金で店舗と加工場もリニューアルできた」と永野社長は振り返る。まだまだ予断は許さないが、いい兆しが見えてきた。常連のお客さんが当社肉屋横丁のオンライン販売サイトを立ち上げてくれ、全国に発送することも可能になった。また、当社の黒毛和牛ローストビーフが、かわさき名産品2024-2026認定品になった。

最後に、当社のモットーと今後の方針を伺ったところ、「命につながる食材をもとめて」をモットーに、「美味しいは人を笑顔にする」ことを追求し、小売比率を更に上げていきたいとのことであった。是非、川崎市北部市場「肉屋横丁」にお立ち寄りを!

(蝦夷鹿ミンチ肉)              (野生マガモ)

川崎市産業振興会館
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