高度な技術と企業連携で1つの型に“はまらない”塗装メーカー
社長 青山 宗嗣
事業内容 | プラスチック・木・金属の塗装(ロボット・スピンドル・手吹き)、レーザー加工、印刷(透明材・パット・シルク・UV) 等 |
企業名 | 株式会社 青山プラスチック塗装 |
設立 | 1984年(昭和59年)3月 |
所在地 | 〒213-0006 川崎市高津区下野毛3-11-23 |
電話 | 044-811-5586 |
FAX | 044-811-5626 |
資本金 | 1000万円 |
従業員 | 30人 |
代表 | 青山 宗嗣 (アオヤマ ムネツグ) |
URL | http://www.aoyama-pt.com/ |
家電製品やOA機器に使われるプラスチック部品などを塗装して、デザイン面で製品の価値を高めているのが株式会社 青山プラスチック塗装。フットワークの良さを活かし、高品質、短納期、多品種小ロットといった様々な顧客ニーズに応えている。「例えば携帯電話などで、お客様の“この色が欲しい!”に対応して、ロットに関わらずその欲しい色を安定的かつ継続して出せることが当社の強みです」と青山 宗嗣社長は胸を張る。
塗装職人の技と精神を受け継ぐ3代目若社長
青山社長の祖父は沖電気(現在の沖電気工業)の塗装部の立ち上げに携わった塗装職人であり、沖電気を退社後に東京・品川でプラスチック塗装業を開業した。その祖父から塗装技術を叩き込まれた父親も塗装職人であり、1984年に祖父から独立する形で多摩川を渡り、川崎の地で㈱青山プラスチック塗装を設立した。子供の頃から自宅1階にある工場で父親の仕事を手伝っていた宗嗣氏は、いつの間にか父親から塗装技術の基礎を受け継いでいたと言う。つまり昨年、社長に就任した宗嗣氏は形式的には2代目社長であるが、塗装職人としての血統から言えば3代目となる。幼心に父親の後姿から学んだことも多く、掴んでしまった不渡り手形の穴埋めをするため自家用車を売り払い、会社の軽トラックで通勤している父親を目の当たりにして、中小企業経営の厳しさを感じたこともあった。
大学卒業後すぐに当社に入社して職人の世界に飛び込んだが、最初に任された仕事といえば、トラックの運転手として塗装した部品を客先へ配達することだった。「父親からは働きに見合った給料しか出せない、自分の力でお金を貯めてみろと突き放されました。この時甘やかされなかったことは、経営者としての器を磨く良い機会になったと思います」と青山社長は当時を振り返る。
配達をしながら職人としての技を磨く一方で、配達先の声を耳にする機会の多かった宗嗣氏は、「量産品への対応」が当社の急務と考え、ロボットの導入を父親に進言した。塗装ロボットを導入することで、それまで熟練技術を持つ数名の職人による手塗りであったのが、先進的な塗装工場に生まれ変わった。その結果としてウォークマン、ビデオ、パソコン、携帯電話など、その時代時代の製品ライフサイクルの変遷に合わせて事業を発展させてきたが、ロボット導入後もプラスチック塗装の技術開発には職人としての“技”や“勘”が欠かせないと言う。「お客様が要求する色味や光沢などの塗装の仕上がりを得るためには、塗料の配合や噴霧条件を変えながら、実際に吹いてみるしかありません。職人が手作業で何度も試し吹きをして最適な塗装条件を見極めた上で、塗装ロボットのプログラムを作成します。これまで使用したことのない新しい塗料を使う場合、私自身が必ず手吹きして確認するようにしています」と青山社長は説明する。
お客様のニーズに応えるため、協力会社との連携を強化
当社が着目しているのがプラスチック部品を受注してから完成させるまでの仕事の流れだ。大手家電メーカーなどから発注されたプラスチック部品は、設計→試作→金型制作→成形→2次加工(印刷、メッキ、塗装)→組立という工程を経て納品される。設計から組立までのそれぞれの工程は、別々の中小企業で分担することが多い。昔は成形機を持っている企業が受注の代表窓口となり、成形以外の工程は外注することにより完成品として纏め上げ、責任を持ってメーカーに納品していたが、バブル崩壊後は成形屋の倒産が相次いだため纏め役が不在となり、受注窓口が各工程を担当する各々の企業に分散した。その結果として、受注企業側からすると独自の営業力が必要とされるし、発注メーカー側からすると面倒かつ製品の完成度や納期が不安定になるなど好ましくない状況が発生した。そこで青山社長は、各工程を担当する企業が連携して、お互いが出来ないことを補完し合う企業群を形成することで、各社が受注を確保しやすくなる体制を築き上げたのである。この関係を築いたことは受注確保に繋がるだけではなく、異業種の貴重な情報をいち早く交換できるメリットも大きいと言う。「連携相手である協力会社との信頼関係を重視しています。ビジネス上の繋がりは勿論ですが、飲み会などを通じた社長同士のコミュニケーションも大切ですね。お客様から頂いた“こういうモノはできないの?”という課題を、協力会社の皆さんと一緒に新しい発想で解決していきたいと考えています。具体的には、皆で力を合わせて、お客様の新製品開発に必要な試作品を無料で製作し、新規案件の受注に繋げるといった取り組みを始めています」と青山社長は力強く語る。
漂えど沈まず! 力強いリーダーシップで社員を引っ張る
当社の経営理念は「漂えど沈まず」。市場環境が激しく変化する中、その荒波に抗うことなく、事業を継続させていくことが大事という、学生時代にヨットで鳴らした青山社長らしい考え方だ.
当社の社員のうち、その半数はフィリピン人を中心とした外国人が占めている。フィリピンの理工系大学を卒業し、就労ビザを取得した優秀な技術者を塗装ロボットのオペレーターとして雇用しており、日本人技術者と同等の給料を支払っていると言う。「自分が作ったモノ、会社に対する愛着心が無いことが不良品の発生に繋がります。フィリピンから来た人たちはたいへん真面目で、彼らの仕事に取り組む真摯な姿勢に日本人社員が感化され、職場全体の士気が上がっています」と青山社長は笑顔を見せる。未曾有の不景気でも「売上げがダウンしたなら、その分は自分たちがタダ働きすれば良い」とまで言って、会社のことを想ってくれた彼らの気持ちが何よりも嬉しかったと言う。「青山プラスチック塗装で仕事ができることが嬉しい!」と言って目を輝かせて働くフィリピン人技術者に、青山社長は全幅の信頼を寄せており、当社の貴重な戦力となっている。
「不況下でも社員を守ることが大前提。お客様から難しい仕事を依頼されても、出来ないとは言わないでくれ、その代わり雇用は守る、と社員には言っています」と青山社長はリーダーシップを発揮する。技術革新により新しい塗料やプラスチックが次々と出てくるため、先端の塗装技術に関する勉強は欠かせない。また、新しい顧客ニーズにいち早く対応するための情報収集も欠かせない。「社員の質を高め、組織の精鋭度を上げることで、常にお客様からお声掛け頂ける企業、お客様から選ばれる企業であり続けたい」と今後の経営方針を語る。自らを“誰よりも欲深い”と揶揄する青山社長は「社員の手本として営業でも技術でも常にナンバー1でありたい、それが出来なくなったら引き際です」と語り、社員一人ひとりとのコミュニケーションを大切にしながら全員を引っ張っていく。