アイデアで業界をリード 新コンセプト“影が作る墓石”を開発
社長 緑間 浩市
事業内容 | 大理石・御影石の輸入及び施工、テラゾーの輸入及び施工、石材に附帯する一切の事業、墓建設請負 等 |
企業名 | 株式会社 冲セキ |
創業 | 1991年(平成3年)9月 |
所在地 | 〒210-0006 川崎市川崎区砂子1-10-2 ソシオ砂子ビル11F |
電話 | 044-221-1114 |
FAX | 044-221-2233 |
従業員 | 10人 |
代表 | 緑間 浩市(ミドリマ コウイチ) |
資本金 | 3500万円 |
URL | http://www.okiseki.com/ |
神奈川県内の墓石の卸売で、No.1の売上シェアを握るのが株式会社 冲セキ。墓石業界の常識にとらわれない新しい発想と果敢なチャレンジで、参入してわずか10年足らずで県内の卸業界トップに躍り出た。かわさき産業デザインコンペ2008にて優秀賞を受賞したデザイン墓石の新商品『Silhouette(シルエット)』は、時代とともに多種多様に変化する顧客ニーズに対応した逸品だ。神奈川県に集中した営業体制と独自商品の企画開発力を活かし、さらなる発展を目指す元気企業が川崎市役所の真横にある。
業界初となる地球環境に配慮した墓石の段ボール梱包
緑間社長は大学を卒業後、大手銀行及び総合商社での勤務を経て1991年に㈱冲セキを創業し、中国から大理石や御影石などの石材を輸入して土木建築業界に卸すことから事業を始めた。商社マン時代は石材の貿易を担当し、また、実家が沖縄で石屋を営んでいるという緑間社長にとっては土地勘のある業界でのスタートである。施設や舗道に使う敷石の卸売・施工業者として大手ゼネコンとも直接口座を持ち、順調に売上を伸ばすことに成功していたが、そんな時でも、好不況の波を大きく受ける公共工事中心のビジネスモデルに緑間社長は危機感を覚えていたと言う。
そのような中で2000年を過ぎた頃から土木建築業界の景気は下降線を辿る。「景気に大きく左右されにくい、エンドユーザーの顔が見える石材ビジネスは無いか」と模索していた緑間社長が着目したのが墓石の卸売りだ。「従来から墓石を梱包する際に使用されていた木枠は使い捨てで、しかも2000年以降の産業廃棄物処理に関する規制強化により、有料で産廃処理することが必要になりました。私たちは以前から数百kgにもなる石材を木枠でなく、リサイクル可能な段ボールで梱包して輸送できないかを考えていましたが、段ボールの材質や組み方を“石の特性”に合わせて独自に工夫改良することで実用化に成功しました」と語る緑間社長は文系出身。墓石の段ボール梱包を実用化するまでには、2年間の試行錯誤を要したという。海外から貨物船で墓石を運ぶ際には、真夏の船倉は気温80℃に達し、冬は凍結、台風が来れば船が揺れて荷崩れの危険性が高まる。様々な輸送環境の下で、理論や理屈だけではなくトライアル&エラーであらゆる梱包仕様を粘り強く試した結果、木枠にも負けない最適な梱包条件を発見した。
段ボール梱包は従来の木枠梱包に比べて、産廃処理コストが不要、開梱時間を4分の1に短縮、開梱が容易なため中身を傷つけるリスクが少ないといったメリットが挙げられる。段ボールをリサイクルするため地球環境にも優しい。当社が開発した新しい段ボール梱包により、木枠換算で年間6千本の木を伐採せずに済む計算になると言う。「段ボール梱包によってライバルとの差別化に成功したため十分に勝負できると判断し、2003年、売上が不安定な土木建築向けの事業に見切りをつけ、墓石の卸売業に100%集中することにしました」と緑間社長は当時を振り返る。
中国での安定生産や新商品を、常識破りのアイデアで実現
日本国内で流通している墓石は中国からの輸入品が約80%を占める。国産の原石も加工賃の安い中国に輸出され、墓石として加工されたのち輸入される仕組みだ。そのため墓石業界においては卸業者が流通から加工製造まで一貫して担っている場合が多い。「中国の加工工場は日本の複数の墓石卸から注文を受けるため、ある時期には注文が殺到し、別の時期には注文が全くないというように、受注量が安定せず工場の操業を平準化できないという問題があります。これでは工場の従業員は定着せず、技術レベルも向上しません。そこで当社は福建省に合弁会社を設立して工場と1対1の関係を築くことで、工場の作業量を管理して安定生産できる体制を築きました。このことによって品質も向上し、納期遅延を起こすこともありません。また、当社の専属工場であるだけに石材店からの詳細な注文の伝達やクレームのフィードバックが可能であり、石材店ごとの微妙に異なる癖や嗜好にきめ細かく対応することが可能です。この仕組みは当社の大きな強みになっています」と緑間社長は自信をみせる。
2006年には墓石の地震対策として、独自開発の免震金具を発売した。墓石をパーツごとにオールステンレス製の免震金具でジョイントして地震の時の倒壊を防止する。「会議室でアイデアを検討するだけでなく、電車で移動する時間や子供と遊んでいる時間など、常に免震金具の構造を考えていました。半年の試行錯誤の末、商品化に成功して特許も取得することができました。公開実験では震度7の振動実験に耐えた実績があります」と緑間社長は説明する。
2008年には“影が作る墓石”という新しいコンセプトの商品として『Silhouette(シルエット)』を開発・改良し、販売を開始した。墓石をアーチで囲んで影を作り、アーチ天井部の孔から差し込む太陽光を利用して文字や絵をくっきりと浮かび上がらせる仕組みだ。天井部の孔の形状やそこにはめ込むステンドガラスを変えることで、故人や家族の想い入れのある文字や絵を色彩豊かに墓石の表面に映し出す。墓石に家名だけではなく、春は桜、秋はコスモスなど季節や気分に応じていつでも簡単に図柄を変えられることが特徴であり、今後は全国へ販売していく予定だ。
目標は神奈川県で市場シェア“ダントツNo.1”!
当社では営業マンが墓石の受注から納品まで担当する体制をとっている。墓石の積み下ろしにはクレーンなどを使う特殊免許が必要となるため、一般には営業と運送部隊を分けているのが普通だ。しかし当社では営業マンが特殊免許を持ち、石材店の社長と一緒に汗をかいて荷降ろし作業を行い、次の注文を確認する。地元の石材店との信頼関係を深めて、きめ細かなサービスを提供し、まずは神奈川県内の市場シェアを“ダントツNo.1”にするのが目標だ。そのために必要な人材育成のための投資は惜しまない。「社員の家族が自慢できるような、社会的に認められる会社にしたい」と緑間社長は将来の夢を語る。
当社は業界他社に先駆けて大手の福利厚生企業5社と業務提携を結んだ。福利厚生企業の会報誌や会員制ホームページに、お墓の相談や依頼を受ける『えらべる墓石倶楽部』を掲載。10年後にはお墓をインターネットで注文する時代がくることを見越して布石を打ったという。「商品開発を大変と思ったことはありませんね。問題点が発生するたびに“次はこうしよう!”と改善策を考えることが面白くて仕方ないですから」と緑間社長は笑顔をみせる。冲セキの未来に向けた挑戦は続く。