設備と人への積極投資を通じて、「早川製作所でないとできないモノづくり」を徹底追求!
代表取締役 内川 竜太
事業内容 | 半導体製造装置部品、化粧品装置部品、電子接続部品等の製造、精密切削加工 |
企業名 | 有限会社 早川製作所 |
創業 | 1962年(昭和37年)12月 |
所在地 | 川崎市高津区久地3-8-31 |
電話 | 044-811-2277 |
代表 | 内川 竜太(ウチカワ リュウタ) |
従業員 | 19名 |
URL | http://hayakawass.jp/ |
金属加工業という言葉が一般に連想させる「3K(きつい、汚い、危険)職場」の姿をイメージしながら早川製作所を訪れると、大半の人は、目の前に広がる光景に目を見張ることになる。
きれいに整え、磨き上げられた加工機械の数々や道具類、幅広く取られた歩きやすい通路、そして明るく開放的な事務室。若手社員やパート従業員の表情からも、ここが、働きやすい職場環境にあることが直ちに伺える。
特筆すべきことは、会社の業務内容にも及んでいる。「5軸加工・NC旋盤加工・マシニング加工はお任せください。」との自負に違わず、製作を請け負っている製品は半導体製造用機器の部品を中心に、大手化粧品メーカー向けの口紅や各種パウダー用金型、通信機器用の筐体、航空・宇宙関連部品など幅広く、いずれも高い品質と精度、そして何より顧客からの絶大な信頼が求められるものばかり。これを、わずか19人の少数精鋭で回している。
そんな同社を率いる3代目・内川竜太社長が掲げるモットーは、「早川製作所でないとできないモノづくり」。並びに、それを支える積極的な設備投資と一貫した人づくりだ。新たな飛躍を求めて、半導体産業が集積する台湾など海外へのアプローチも開始する。今、最もホットな元気企業の一つである。
プレス加工から切削加工に業態転換
早川製作所は1962年に創業した。初代社長は内川社長の母方の祖父。創業者の後を継いだ実の母から会社の舵取りを託されたのは、今から12年前の2007年のことだった。
同社は設立からしばらくの間は専らプレス加工を中心に営んだが、常にケガと隣り合わせという仕事であったことから徐々に切削加工の比率を高めていき、今日ある5軸加工・NC旋盤加工・マシニング加工などを幅広く手掛ける業態へと転換した。
並行して、加工の内容も価格競争を避けるため、より精密なものへと意識的に推移させていった。現在は特にアルミを中心とした非鉄金属の精密加工を得意とし、顧客のニーズに応じて試作品から一品ものの製作、そして量産品までを幅広くこなしている。
こうした柔軟な生産を可能にしているのが、延べ20台を数えるバラエティ豊かな最新鋭の工作機器群だ。しかも、メーカーもバラバラときている。一般的には、機械のメーカーを同じに揃えれば、操作性も比較的似ており、オペレーションや保守点検の面で大きく困らない。しかし、メーカーがそれぞれ異なると、社員は1台1台マスターしなければならない。不効率ではある。だが実はここに、早川製作所の「強み」と「戦略」が隠されているのだ。
先を見越したハード&ソフトの整備が顧客の信頼を獲得
言うまでもなく、工作機械の世界も日進月歩で進化している。顧客からの要望がますます高度化・複雑化していく中で、まず、同一メーカーの機械という枠に囚われず、最新のマシンをいち早く取り揃えておくことは、仕事の受注という面で競合他社に対して大きなアドバンテージとなる。加えて工作機械は、発注しても納品までに最低で3カ月、長い場合には1年近くかかるもの。
「新しい仕事のチャンスが舞い込みそうだからと言って、それから設備投資を決断していては間に合わない。商機が目の前を通り過ぎてしまうんです」(内川社長)。もちろん、来ると思っていた仕事を逃した場合にはその投資は空振りにはなる。
しかし、それをも踏まえたうえで、機械だけに限らず、工具や技術など今後必要になりそうなものを事前に想定し、新規の案件や難案件を受注した時を見越してハード、ソフトの両面で万全に備えておくという同社の積極姿勢が、顧客から選ばれる理由の一つとなっているのである。
現在、製造に直接携わる現場の従業員は13人。機械は前述の通り20台あるので、一人につき1台以上の工作機械があてがわれている計算になる。こうした“のりしろ”があることにより、受注が幾重にも重なった時にも同時並行して稼働できるうえ、「納期で信用を得る」ことも可能になる。さらに新入社員の実地教育などの際にも、機械の稼働を止めることなくOJTを行えるというメリットもある。
積極的なリスクテイクで、海外にも打って出る
現在、同社が手掛けるメインどころの製品は、「半導体製造装置部品」「化粧品装置部品」「コネクターなど電子接続部品」など。
このうち化粧品装置部品はアイシャドウや口紅を製造する機械向けのアタッチメント部品(金型)の製造が中心で、大手化粧品メーカーのデザイナーから寄せられるデザイン図を元に同社が金型の工程図を起こし、プログラミングの後、加工を施している。またコネクターは、アルミ、銅、真鍮などの素材だけでなく、形状も顧客の要望に合わせて作る一品もののカスタムコネクター分野に強みを持っている。
足元の売上は半導体製造装置部品が全体のおよそ5割を占め、化粧品装置部品が3割、電子接続部品などのその他が2割といった構成比となっている。さらに航空機部品や防衛関係部品の加工も請け負っている。IoT(モノのインターネット)時代の到来が叫ばれる中、半導体製造装置部品の需要が減ることは当分ないと見てよい。化粧品業界も、概ね安定成長が予想されている。このため同社では、今後もこの2分野に経営資源を重点配分していく方針を掲げている。
そうした中、内川社長が最も重視しているのが、同社の設備投資に象徴的に示されている「先読みの力」だ。常に取引先とのコミュニケーションを大切にし、いち早く情報をもらえるような関係を築くことに心を砕いている。同時に、「いつも謙虚な気持ちと感謝の心を大切にしています」とも、内川社長は語る。
「早川製作所は雰囲気がいい」と思ってもらい、可愛がってもらうことで、取引先から「次にこんなものが来るよ」といった情報も得やすくなるからだ。むろん、先読みして動くことにはリスクも伴う。「でも、リスクのないところにリターンはない。チャンスは逃したくない」と内川社長。実際にこれまでも、他社ができない仕事、いわゆる“お困りごと”や他社が嫌がる仕事を進んで取りに行ったことで信用とブランドを磨いてきた。その勢いを緩めることなく今後は、「早川製作所でないとできない」モノづくりを海外の顧客にも知ってもらいたいと夢を描く。その第一歩として2020年、半導体関連の海外展示会へ初出展する計画だ。
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