JYXYER 株式会社(ジザイヤー)

本物の日本文化を発信したい

高級茶を海外市場へ紹介

代表取締役 地引道生
事業内容 お茶の製造・販売
企業名 JYXYER 株式会社(ジザイヤー)
創業 2003年(平成15年)1月
所在地 川崎市麻生区王禅寺東1-37-15
電話 044-281-4104
FAX 044-281-4105
従業員 5名
代表 地引 道生(ジビキ ミチオ)
URL https://tcha-tcha-japan.com/

健康志向を追い風に、世界でも拡大している緑茶市場に、高級の日本茶を紹介したい―。そんな挑戦を、川崎の古刹、王禅寺にちなんだブランド「ZENJIRO(ゼンジロウ)」のもとに続けているベンチャー企業が、JYXYERだ。国内屈指の名産地の生産農家と提携し、現地の工場で処理して仕上げ、サイト販売やEコマース(電子商取引)サイトを通じて国内外へ供給する。輸出先は、欧州や北米、南米、中東、東南アジアなど。地引道生社長の「日本茶を通じて、日本文化の本質を発信したい」という思いが、高級品にこだわる戦略を貫く。

静岡、京都、岐阜の高級茶を紹介

提供しているブランドは2種類。社名を冠した上位ブランド「ZENJIRO」は、よりすぐった茶葉だけを使う商品だ。「TCHA-TCHA(チャチャ)」はフランスで商標登録し、幅広い客層との接点を目指す。

抹茶や煎茶、ほうじ茶、ほうじ茶パウダーなどから商品のラインアップをそろえ、これまで累計21カ国に向けて展開してきた。パッケージも、当初から海外展開を意識してデザインした。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が開く展示会や、海外のシェフのための展示会などへの参加を重ね、試飲で楽しみ方の紹介を繰り返している。これまでに、米国やカナダ、英国、フランス、香港、タイなどにリピーターをつかんできた。一般消費者や卸売、専門小売店に加えて、ホテルやレストラン、カフェの販路にも力を入れている。

「海外の消費者にウェルネス(健康)志向が高まった」。地引社長は、世界規模の新型コロナウイルス感染拡大が緑茶への注目をもたらしたことを実感している。

そのため、海外の取引先に対しては、日本茶にかかわる細かい情報発信を怠らない。商品情報には、開発したレシピの一部や健康効果を添える。日本茶の流行を分析した業界記事や、日本の季節にマッチする日本茶のお薦め情報も、こまめにメールマガジンで届ける。

国内で提携している産地は3カ所。このうち掛川(静岡)は、日本屈指の産出量を誇る。生産に商社機能も備え、包材などの周辺メーカーも集積する。また、宇治(京都)は、名産の抹茶に外国人客からの指定が多い。

「ZENJIRO」ブランドを特色づける最後の商品は、岐阜の美濃白川茶だ。標高が高く、寒暖差の大きい山間地で、霧に包まれて育つ。高級茶の名産地とされるが、栽培農家は後継者難に直面してきた。平地とは異なり、山間部の茶畑では機械化も簡単ではない。

「それでも自然の環境の中でできるおいしいお茶を、何とかしたい」、地引社長はこのお茶を売ることで、栽培農家も守りたいとしている。

社名を冠した上位ブランド「ZENJIRO」

苦境の日本文化、海外ビジネスに

地引社長が日本茶ビジネスに参入する前に手掛けていたのは、畑違いの金融ビジネスだった。証券系の資産運用会社で、機関投資家の資金をグローバル投資で運用していた。

「日本文化に関連するものを扱いたい」と考えるようになった。とりわけ地方には、国内の需要だけでは生き残りが難しくなっている商品も少なくない。それらを海外に紹介し、ビジネスに結びつける。そうした構想が、像を結び始めた。

当初は伝統工芸品や日本酒なども候補に入れていたが、最終的に日本茶を選んだのは「伸びる余地がある」とみたためだ。

日本茶が海外輸出されるようになって時間がたつが、海外のスーパーに並ぶのは、多くが安価の商品。日本の高級品を海外に紹介することで、存在感のある中国産との差別化が図れるとみる。

試練がなかったわけではない。当初の事業構想は、日本茶のカフェを海外で開くことだった。ウェブサイトを通じた引き合いを契機に、フランスで現地展開の準備に着手する。2019年に子会社を設立。2020年の2月には、カフェのプレオープンにこぎ着けていた。

だが、グランドオープンを1週間後に控えたタイミングに、フランスではコロナ感染が深刻化する。厳しいロックダウン下では、現地に行くこともかなわず、状況改善の見通しも立たない。

フランチャイズでカフェを展開する計画は頓挫し、ビジネスモデルの転換を迫られることになった。

「日本」を知り、伝えてほしい

商品ビジネスに軸足を移した今、海外の顧客に向けて力を注ぐのは、日本茶を通じて日本に関する知識を提供することだ。「マーケティングとは教育がすべて」との考えがあるからだ。

「日本はどういう国なのか、よく知らない人も海外にはいる。世界のなかで日本という国がある位置や、四季があること、気候の特徴、文化。そして、おいしいお茶のできる環境とは何なのか。基礎知識を徹底的に説明資料に盛り込む」(地引社長)。

自社のブランドの立ち位置や商品ラインアップ、コスト要因、OEM(相手先ブランドによる販売)の条件も、事前に提示している。中国緑茶の存在感が大きい海外では、バイヤーにも消費者にも、日本の高級茶を体験した人は多くない。「だが、日本茶だけでなく、日本についても、知ると伝えたくなるもの」

海外の抹茶ブームは一時的なものではなさそうだ。関心は健康成分から、新しい用途へも広がっている。抹茶のリキュールやケーキ、美容のための抹茶パック…。ビジネスに関心を抱く海外の若い起業家からの接触も生まれた。「若者はSNSを使ったり、ポップアップイベントをしたりと、フットワークが軽い。こういう人たちと一緒に仕事をさせてもらって、広がっていけば」と、今後を語る。

11月には美濃白川茶のなかでも最高級の抹茶からつくった新商品を投入。「TENQOO」と名付けた。緑茶の生産地の中では最も標高の高い地―「天空」に近い地から生まれた逸品だ。

会社の地元でもある川崎・新百合ケ丘には、小田急の駅周辺に、魅力のある菓子店も多い。農家も点在する。食にゆかりの深い土地柄での起業には、もう一つの願いも込めている。「新百合ケ丘が日本の食文化の発信地点になってほしい」と地引社長は語っている。

世界に定着した日本のMATCHA

川崎市産業振興会館
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