株式会社 Neotec Japan

やりたいことの共有からスタートする
エンターテイメント機器のワンストップ開発


代表取締役
加留部貴士
事業内容 電子機器の開発・製造
企業名 株式会社NeotecJapan
創業 2006年(平成18年)8月
所在地 神奈川県川崎市宮前区土橋4-1-9 タケダビル4F
電話 044-862-4768
従業員 13名
代表 代表取締役 加留部 貴士(カルベ タカシ)
URL https://www.neotec-j.com//

東名川崎ICの近くに、加留部貴士氏が率いる(株)Neotec Japanの電子機器開発現場はある。そこからは、プロジェクションマッピング関連のエンタメ機器、お酒の発酵時に生じる音で仕込みのタイミングを判断できる計測システムなど、さながらおもちゃ箱のようにユニークな電子機器・システムが次々と生み出されている。

作り上げることに軸足を置いた姿勢で回路技術者としての実績を積んだ

1962年に福岡県で生まれた加留部氏は算数と理科が得意で、高校卒業後は鹿児島県の大学へ進み、電子工学を学んだ。人生の師ともいえる厳しい先生から指導を受けたが、論文を書くことだけでなく、ものを作りあげることを重視した姿勢が自分にもマッチした。面白い機器開発をしたいと考え、大学卒業後は福岡の漁業用機器会社に就職した。しかし、入社すると自社で製品開発できないことがわかり半年後には退社した。

そして加留部氏は、あてもなく上京する。電子回路情報誌に掲載されていた求人広告を見て、1988年当時、10名弱の神奈川県内の企業に中途入社した。そこではマイコンを使った通信機器や産業機器の開発にゼロから携わることとなった。チップ1個が数百万円もする電子部品を回路基板に取り付けて動作試験するなど、時には冷や汗をかきながら、実践的な経験を積み重ねた。当時展開中であったハイビジョン映像の長野オリンピックでの伝送状況を監視する装置など、責任は大きいものの、画像や通信の技術力が問われるハードウェア・ソフトウェア開発の仕事に面白みを感じる毎日であった。

そして自信をつけた加留部氏はベンチャー企業に転じ、更にそこの同僚と共同でスピンアウトして電子回路会社を立ち上げた。しばらくの後、「独立したい気持ちはなかった」と言いつつも、加留部氏を指名する仕事が多かったため経営の自由度を求めて、2006年にNeotecJapanを設立する。建物管理や放送システムの事業会社である宮前区の(株)ネオテックの出資を受け、その事務所の一角に本社を置いた。リーマンショック時は売上が急減したが、「仕事のきっかけの多くが、人のご縁によるものです」と語る加留部氏は、これまで実績のあった産業機器の他、人の紹介により防災機器の開発にも分野を広げて成長軌道に乗っていった。

中国の量産工場との信頼関係を築き上げて対応力を強めた

2011年には、開発専業から量産機器の対応にも業容を広げた。それまで大規模な量産対応は未経験だったが、コスト競争力の高い中国の協力工場を開拓する必要が出てきた。人脈を辿り、紹介を受け、現地のエージェントと同行して深圳や上海の工場を訪ね歩き、小さな商取引を重ねていった。これまでの勝手が通じない相手との交渉は難儀であった。それでも加留部氏は自ら現地へ赴き「同じ目線になるように」粘り強く対話を繰り返していった。中国のある量産工場と連携し、互いが日本と中国それぞれの市場の窓口となる形態をとってビジネスを進めると、日本市場からの受注が増えた量産工場はみるみる成長していった。すると、その成長過程で築いた信頼関係は、同社にも大きな果実をもたらした。量産工場独自のリチウムイオン電池パッケージを少量から供給できるという他の国内企業に対する優位性が、同社の売りとなり大きな売上につながった。

また、製品企画、デザイン、回路設計に留まらず製品の筐体も含めた量産までワンストップで製品ができる対応範囲の広さも強みとなっている。電子回路製品が複雑化し、その対応だけでも苦慮する現状では、回路の筐体や組立までを請け負うことは、製品保証の大変さのため他社が敬遠する仕事になりつつある。そういう流れに抗うように、加留部氏は無我夢中に顧客の要望に応えてきた。

一方で「設立後10年は自転車操業でした」と言うように雌伏の時期もあった。設立当初は、経営の知識も無かったが、友人から事業計画の立て方、利益の取り方を教えてもらい補った。理屈だけでなく、これまでの経験から得られた肌感覚で、予算額より実績額が膨らまないかを早期に予測して、ものづくりだけに入れ込み過ぎないようにしている。製品化の過程で適宜採算性や事業性を確認することが面白い製品を世に出すことに繋がるとの信念がある。

アイディアを形にするプロデューサー的役割でユニークな電子機器を生み出す

近年、産業分野では、音の周波数を計測・分析することで自然災害や工場の異常を検知するシステムを開発し、他分野でも活用できるプラットフォーム化を進行中である。また、海上交通での事故を防ぐ通信システムなど社会貢献に資する開発も進めている。

また、ダンスや演劇など多趣味な加留部氏の関心から始まったエンターテイメント関連の開発事業が主力分野に育ってきた。LEDが内蔵された可動式の立方体が180個並び、動くことで立体的な視覚表現ができるスクリーン状の設備「キネティックウォール」や音楽に合わせてLEDが色を変えて点滅するガジェット「無線制御式ペンライト」などは人々を惹きつける。それらの製品化の過程で加留部氏は、「お客さんの希望をどう形にするか?」を常に考える。商談では、その場で顧客の意見を取捨選択し、真の希望を絵や図で表現してイメージを共有している。

経営者視点では、自分だけにその技量を留めずに、アイディアを形にできる人材の育成を最重要項目としている。「顧客の課題解決につながる引き出しの多さが大事です。自社の提案材料を膨らますには何が足りないかを考えていきたい。まず、知識と分析力を鍛える。そうすれば構想ができるようになる。例えば、当社はプラスチックの成形はできないが、知識を持つことで成形会社と同じ目線に立って、最終製品の出来栄えを高めていける」という育成の方向性を持つ。近年、請けた仕事を総合的に組み立てて実行に移すディレクター的な技術者が減少していると痛感する。それ以上に大局的な技術動向を踏まえて製品群やシステムを構想できるプロデューサー的人材を育てるのは難しい課題である。「技術の継承以上に考え方の継承に重きを置いている。そのためにもコミュニケーションの円滑化は大事で、人のために寄り添える環境作りが経営者としての責務です」と加留部氏は言う。

現在、社内に留まらず、地域の工業団体の若手経営者にも自分のノウハウを惜しみなく伝えている。
駆け出しの頃は、ものづくりに専心していた自分が、いつの間にかプロデューサー的な役割に変わってきたことを改めて感じている加留部氏は、その経験を活かし、自ら変革できる会社を目指していく。

立体的で豊かな表現を実現した「キネティックウォール」(左)
こうした製品はお客の希望を形にしたい想いから生み出される。

川崎市産業振興会館
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