株式会社 Virtuous Circle

障がい者支援のための5つの事業を展開する福祉サービス企業


代表取締役 関崎淳一
事業内容 放課後等デイサービスの運営、障害児・者向け学習教材の開発・販売等
企業名 株式会社 Virtuous Circle(ヴァーチュアスサークル)
創業 2015年(平成27年)2月
所在地 川崎市麻生区はるひ野5-3-14 1F
電話 044-322-8360
FAX 044-322-8361
従業員 17名
代表 関崎 淳一(セキザキ ジュンイチ)
URL https://virtuous-circle.co.jp/

障がいのある子ども達が将来、社会から能力を認められ必要とされる人材になるためには、成長過程で所属環境が変化していく学齢期におけるサポートが大変重要である。当社には、放課後等デイサービス「花笑み」、障がい者の就労モデルを創出する「Project BeLeaf」、独自に開発した算数教材「a socca(あ、そっか)」、福祉と一般企業をつなぐ食品輸入販売とコンサルティング事業など5つの事業の柱がある。今回、創業の経緯と事業内容について代表取締役の関崎淳一氏に話を伺った。

障がい者とその家族、福祉人材、企業の相互関係による好循環を生み出す

株式会社Virtuous Circle(ヴァーチュアスサークル)という社名は「好循環」という意味で、障がいを抱える児童とその家族、福祉に関わる人材、企業がそれぞれに役割を果たし、相互関係による好循環を生み出すことを意図して名付けられた。障がい者福祉というと社会福祉法人やNPO法人による運営が思いつくが、なぜ株式会社なのか? 関崎社長によると、社会福祉法人は大きな資金が必要としたり、NPO法人は認可まで数ヶ月という時間を要する一方、株式会社は大きな資金も不要で短期間で登記できるという利点もあるが、一番の理由は株式会社の方が事業の自由度が大きくとれるということであった。

当社には、好循環を生み出すための5つの事業がある。1つ目は、放課後等デイサービスである。「花笑み」と名付けられた施設では、「よく笑う、よく遊ぶ、よく学ぶ」のコンセプトのもと、児童から成人まで一人一人の年齢や個性に寄り添い、認知機能学習や集団活動を通して社会性を育む活動を行っている。2つ目は、就労準備サービス「Project BeLeaf」である。BeLeafとは直訳すると「葉になる」という意味であるが、障がい者が活躍できる新しい事業モデルの創出と賃金向上を実現する取り組みである。就労年齢に達した障がい者の賃金は、改善されてきたとは言え以前は一工程1円という相場があったらしいが、関崎社長は「あくまでも仕事の内容や品質に応じた賃金体系があるべき姿であり、そうしなければならない」と強調された。関崎社長自ら企業を周り、食品のパッキングやラベル貼りなどの作業を受託し、それを他の社会福祉法人等の団体に外注している。これにより業界内での連携や情報共有を行い、雇用創出や賃金改善に結びつけていくのが目的だ。

3つ目は、食材の輸入販売業である。主にスープや菓子類の原料になるアボカドを輸入し、食材加工会社に販売しており、最終的にはホテルのレストランや菓子メーカーに使われている。この事業は「Project BeLeaf」と密接にリンクしており、食材の営業先からパッキングやラベル貼りなどの作業を受託することも多いので、福祉と企業をつなぐ役割を担っている。4つ目は、障がい者支援業を新たに立ち上げる団体へのコンサルティング事業である。コロナ禍以降はオンラインで講演をすることも多くなり、対象は全国に及んでいる。5つ目は、障がい児向けの学習教材の開発と活用である。本質的な理解を促進し、使える知識として就労にも役立つ教材の開発・販売に注力している。これら5つの事業が、社名が意味する「好循環」を生み出す源泉になっているのである。

水泳に打ち込んだ学生時代 福祉施設で経験を積んだ後2015年に当社創業

関崎社長は1980年東京都足立区に生まれた。子供の頃から水泳をやっており、オリンピックで金メダルをとった鈴木大地選手に憧れてオリンピックに行きたいと思ったこともあった。ただ、通った学校には全国トップクラスの競泳選手がひしめき合っており、そのヒエラルキーの中で挫折感も味わい、オリンピックの夢はいつしか遠のいていった。それでも将来は水泳に関わりたいという希望は無くなることはなかったが、高校時代の水泳部顧問の先生から障がい者向けの指導者の道があることを聞かされ、勧められるまま福祉専攻がある駒沢大学文学部に入学した。障がい者向けのスポーツ指導者になることを目指し、昼は大学の講義、夜は障がい者スポーツの勉強という大学生活を過ごした。

大学卒業後は秦野市にある障がい者支援施設で成人向けと児童向けの支援業務、そして体育専任担当として障がい者スポーツの仕事にも携わった。それらの経験をする中で、障がい者の日常生活の支援に面白味を感じるようになってきた関崎社長は、自分で独自にやれることがあるのではないかと独立起業を考え、仲間と共に株式会社Virtuous Circleを2015年2月に立ち上げた。設立場所は児童福祉施設が不足している地域に絞って探したところ、小田急多摩線沿線のはるひ野地区に決めたとのことである。現在は同沿線に3つの施設を有している。

障がい者も健常者も学習できるオンリーワンの算数教材「a socca!」を開発

「障がいを持った子供でも、3つまでの数はすぐに数えられる。頑張れば4、5まではいける。ところが6以上になるととたんに難しくなり、特に7や9という数を把握するのに時間がかかる」と関崎社長は切り出した。教育事業の柱となるのが、関崎社長が力を注いで開発した算数教材「a socca!(あ、そっか)」である。この教材は主に児童福祉施設や特別支援学校向けに、神戸大学大学院の岡部先生の指導の下、教材開発の経験を持つ企業と一緒に開発したもので、3歳から8歳の知的障がいを持つ児童だけでなく健常者の児童にも活用できるものである。「a socca!」は一言で言うと、算数のわからないところを根本的に理解できるよう工夫された教材である。たとえば、数字そのものや具体物(動物や果物など)の数は理解できる児童でも、抽象物(〇の様な記号など)の数になると理解が進まなくなる。具体物から抽象物への橋渡しになると同時に、大人(指導者)の運用のしやすさにもこだわって開発したとのことで、「これだけ掘り下げた教材は他に無い。大手出版社も参入しないのでオンリーワンの教材と自信を持っている」と力説する。「a socca!」はネット販売でも購入することができるが、冊子の他にフォローアップセミナーや相談サポートも行う。また、Web会員には「a socca!」活用現場の動画配信サービスも有償提供している。

最後に、現状の課題と今後の抱負を関崎社長に伺った。「福祉事業は国の定めた制度や単価に左右されるので、複数の事業展開で収益を上げて福祉の方にうまく補填していく。創業の地を守り、従業員が安心して働ける環境作りを行って、福祉事業を通して社会に貢献していきたい」と締めくくってくれた。今後の株式会社Virtuous Circleの発展に期待する。

子どもと子どもに関わる先生や保護者のための算数教材

川崎市産業振興会館
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