遠隔操作のパートナーロボットでビルメンテナンス・家事代行サービスを提供する開発型ベンチャー企業
代表取締役CEO 松井 健
事業内容 | 家庭用ロボット、業務用ロボットの企画・開発および販売 ロボット・サービスの構築および運営 |
企業名 | Mira Robotics株式会社 (2021年よりugo株式会社へ社名変更) |
創業 | 2018年(平成30年)2月 |
所在地 | 東京都千代田区東神田1丁目7-8プライム東神田ビル 8F |
代表 | 松井 健(マツイ ケン) |
従業員 | 5名 |
URL | https://ugo.plus/ |
当社は「ugo(ユーゴー)」と呼ばれる遠隔操作パートナーロボットの開発・製造と、ugoによるサービスの企画・開発を手がける、2018年に創業したベンチャー企業である。AIと人のハイブリッドという独自のテクノロジーにより、人手不足や超高齢化社会に向けたサービスをugoによって展開する。今回、代表取締役CEOの松井健氏に事業内容、今後のビジョンを聞いた。
パートナーロボット「ugo」は、AIと人のハイブリッドシステム
企業の人手不足は、外国人・シルバー人材・非正規労働者によって補われる一方で、2035年には人口の3分の1が高齢者になるという超高齢化社会が迫ってきている。ワーク・ライフ・バランスや働き方改革、人事制度改革が進展し、企業と働き手、職場と家庭の関係性は大きく変革し続けている。当社はこのような人手不足や超高齢化社会における、企業内や家庭内で必要とされる肉体労働力の一部をugoと呼ぶパートナーロボットを使ったサービスを提供する開発型のベンチャー企業である。
当社の社名とugoのネーミングの由来を聞いたところ、「Miraはラテン語でミラーやミラクルの語源で、Roboticsすなわちロボット工学を使って魔法の様な体験ができるハードウエアにしたいという思いだった。ugoは、人とロボットの融合とか、Yougoの語呂で考えた。」とのことだった。
ugoは、2本のアームを持った自立歩行する身長110cm重量73kgの人型ロボットである。ただし、すべて全自動で動くロボットではなく、搭載されたカメラを通して、離れた場所にいる「人」が現場映像を見て、モーションコントローラでアームを遠隔操作して、衣服の片付けや洗濯、ペットの世話などの軽作業を行う。携帯端末からインターネット回線を利用すれば、世界中のどこからでも遠隔操作できて、時差を活用すれば24時間のサービス提供も可能である。仮にugoがイレギュラーな状況に陥っても、人が遠隔操作でサポートできるため、完全自動のロボットよりむしろ安心感があると言える。最初からAIによる全自動化を狙うのではなく、遠隔操作で人が操縦した動作をシステムで学習し、段階的に自動化していく。松井CEOが言う「AIと人のハイブリッド」の仕組みである。
ugoは家事代行だけではなく、介護サービスや、清掃などのビルメンテナンス業務も、それぞれの業務に特化したハンド交換で対応できる。ただ、現在の試作品では大きな段差を乗り越えること、1kgを超える重量物を持ち上げることは難しいので、更なる性能向上や小型化を進めている最中である。
IoT時代の到来を見据えて起業。作曲やソフト開発を通して知った「自分が作ったもので楽しんでもらうこと
松井CEOは1981年(昭和56年)横浜市出身である。1990年代後半、パソコンが一般家庭にも普及してきた高校生時代に、パソコンソフトで作った曲をCD化して文化祭に提供したり、flashというソフトで、音楽と映像を組み合わせたコンテンツ作りを楽しんだりしていた。アルバイトで日産自動車のペイントシミュレーター(電子カタログ上で、クリックすると車体の色が変わる仕組み)も作った。この頃に「自分が作ったものを聞いてもらい、見てもらうことで人が楽しむ」という喜びを知ったことが、現在の仕事の原点になった。
高校卒業後、東京都八王子市にある東京工科大学メディア学部に入学し、ソフトウエアを専門に学んだ。2004年、大学卒業後にシステムインテグレーターに就職したが、2006年に退職し、先輩が起業する株式会社モンスター・ラボに創業メンバーとして加わった。モンスター・ラボでは、iOSアプリやAndroidアプリ、Webシステム、ソーシャルゲームなどを開発していた。その後、モンスター・ラボで培った経験をベースに、2011年に自らIoTデバイスを開発する株式会社ミラを創業した。ミラはBLEなどの無線通信技術を活用した農家用定点観測システムや自転車用スマートロックを開発している。この株式会社ミラを親会社として起こした会社が当社である。今では多くの人がスマートフォンを活用しているが、ガラケーが全盛期だった時代にスマホアプリ開発を手がけ、以前はユビキタスという概念だったIoTデバイスの事業で起業するなど、その先見の明には驚かされる。
ugoが提供する新たなサービスと雇用のスケーラビリティ拡大
市場開拓とオペレータ人材育成はパソナグループと連携して行っているが、ターゲット市場は、第一にはオフィスビル内の清掃といったビルメンテナンスサービスや警備の代行である。遠隔操作するオペレータに施設内の地図情報を与えておき、的確な動線をとって作業できる。市場規模は清掃業務だけでも2兆円超もある。都心のオフィスビル約9000棟の10%のシェアをとりたいと松井CEOの目標は大きい。
第二のターゲットは、家事代行サービスである。家事代行は、人手で月5万円以上と高額であることと、他人が家の中に入る拒絶感から必要とする家庭のうち6%しか使われていない。その点について松井CEOは「ugoの家事代行サービスは人手の半分程度のコストを想定しているので、利用者には大きなメリットがある。プライバシー管理の問題は、入ってはいけない場所にアクセス制限をかけ、プライバシーフィルターで文字を見えなくすることで対応する。」と自信を持って答えられた。また、オペレータの勤務地は場所にとらわれないので、都市部でも地方でも勤務可能である。主婦が自宅でパート感覚で働くことができるし、会社員の退職後の仕事でもOKだ。
このように、ugoは利用者の利便性提供だけでなく、雇用のスケーラビリティも上げることができるロボットであるが、各種実証実験を重ねシステムのブラッシュアップを図り、2020年中にサービスを開始する。ugoが築く新しい未来は、間近に迫っている。
当社製品 アバターロボット「ugo」