農業生産法人 株式会社 カルナエスト

自家農園野菜のレストラン経営から地域に根差したワイナリー作りまで農業の6次産業化に邁進中

 

 

 

 

代表取締役 山田 貢

事業内容 農業、農産物加工業、飲食店、ワインスクール及び不動産管理業
企業名 農業生産法人 株式会社 カルナエスト
創業 2015年(平成27年)1月
所在地 本社 川崎市麻生区岡上225                                           ダイニングバー 川崎市麻生区万福寺1-12-19 鈴木ビル1-E
電話 044-986-1022
従業員 5名
代表 山田 貢(ヤマダ ミツグ)
URL http://carnaest.jp/

「昨年は自家農園で栽培したブドウを収穫して“蔵邸ワイン岡上ロゼ”を商品化しました。今年は川崎市農商工等連携推進モデル事業に採択されて市内農家から購入した規格外イチゴなどの果実でスパークリングワインを試作、連携先の和光大学の学生が商品ラベルをデザインしました」と山田代表は胸を張る。

主要商品は、自家農園で栽培する季節ごとの野菜や果物を中心に、餅菓子、ピクルス、漬物、ドレッシング、ジャム、ドライフルーツ、蔵邸ワイン、岡上エールなど農産物の加工品だ。

将来的に農地を株式会社で保有する目的で農業生産法人を設立

「自家農園の野菜を使った料理を提供するダイニングバー“Lilly’s By Promety(リリーズバイプロメティー)”を8年間営業しています。店名のプロメティーは造語で、ギリシャ神話の先見の明を持つ神“プロメテウス”を参考に画数で決めました。満席にならない隠れ家的な店を目指しました。営業10年に向けて次なる展開を模索しています」と山田代表は語る。

美容師としてヘアーメイクに従事していた山田代表は「いつか実家の農家を継がなければならない」というプレッシャーを感じていた。実家に帰るたびに近隣の畑が減っていくのを見て、農業をやるなら若いうちにやりたいと一念発起する。農業の6次産業化に取り組もうと料理を勉強して調理師免許を取得、バーテンダーを経験後、2011年に飲食店を始めた。2012年に食品製造と菓子製造の加工施設を作った。飲食店と二次加工に農業を加え、家計と経営の分離や利益の明確化を目的に、2015年に株式会社カルナエストを農地法の農業生産法人として設立した。

「一般農業法人では農地を所有できません。将来的には農地を株式会社で保有したいと考えて農業生産法人(現・農地所有適格法人)を設立しました。農業でも他の職業と同じように働ける会社を目指しています」と山田代表は語る。

地元の農産物を材料に使った地ビール「岡上エール」は山田代表が研究員として教える和光大学地域連携研究センターの授業において製造している。和光大学とは協定書を締結、岡上地区の地域活性化の仕組みを学生の発案で取り組み、学生は商品の企画から販売まで経験できる。

「若い人に農業をやりがいのある職業として見てもらうには何をしたらいいのか、夢のある農業とは何か」を山田代表は自問自答した。

飲食店でワインを提供するためにソムリエの勉強している時に、自家農園で栽培したブドウでワインを作るアイデアが頭に浮かんだ。

畑の斜面で作った野菜が大雨で流されることがあり、それを防ぐために畑の斜面にブドウなどの果物を植樹した。多品種のブドウを100株ほど栽培した結果、“ピノノワール”と“シャルドネ”が土地に合っていた。

2017年にブドウを初収穫、2018年に川崎市初のワインを完成した。現在はワイン用ブドウ300株を栽培しており、ハーフボトルで200本ほどのワインを製造販売している。

川崎市でしか出来ない都市農業を追及して農業の6次産業化を実現

「2016年にブドウ作りを始めた際に、この地域に住んでいるからこそ参加できる“ブドウの苗を植える体験会”を開催しました。また、地域の方がワイン作りを楽しめる場所となるように老朽化した土蔵を改修しました。農家が保有する土蔵は固定資産税の関係で壊す農家が多い中、120年前の土蔵を残して活用したいと考えました。ワイン作りを始めるなかでワインカーブはワイン蔵だと気づき、土蔵をワインの貯蔵庫兼ワインスクールの授業の場所として活用しています。蔵邸ワインスクール“Coeur Riche(クールリッシュ)”では初心者向けワイン講座を開催しています」と山田代表は笑顔だ。

農産物は季節ごとの野菜や果物を年間100種類ほど生産して農協と直売所で販売している。

飲食店があるので1年間途切れないように作る野菜は、トマト、玉ネギ、大根、ヨモギ、キュウリ、白菜、ナス、コリンキー、のらぼう菜、万福寺人参などを種から栽培している。果物は主に柿を栽培しており、富有(ふゆう)、早生次郎(わせじろう)、太秋(たいしゅう)、禅寺丸などの品種を約1ヘクタールの畑で栽培している。

気候変動に左右されない農業に切り替えるためにハウス4棟を増設、高単価な農産物の育成にも取り組む。川崎市でしか出来ない都市農業を追及して農業の6次産業化に個人で取り組み、飲食店と二次加工では苦労は無かった。しかし、農業を法人として取り組むと様々な問題に直面した。以前は個人で野菜や果物を農協に出荷していたが、法人で出荷する場合は手数料を上げると言われた。

農協に懇願して認可法人は個人と同様の手数料で出荷できることになった。

都市農業に関連する法律は、農地法、農振法、生産緑地法、都市計画法など多岐にわたり課題も多い。山田代表は「農業を法人で取り組むと問題ばかりで逆にやる気が出てくる」と意気込む。

IoTやAIを活用したイチゴのハウス栽培の実証実験に取り組む 

会社のビジョンは「都市の中のアグリデザイン」。都会の中で暮らしているとなかなか実感できない「実りの喜び」を多くの人に感じてもらいたいという想いが込められている。

飲食店は自家農園の野菜を主役にしたメニューが中心、「季節野菜のオーブン焼き」や「農園ピザ」が人気だ。自家農園のブルーベリー、キウイ、ユズ、みかんなどフレッシュフルーツを使ったカクテルも女性客に好評だ。山田代表はバーテンダー時代にフレッシュフルーツ・カクテル作りの腕を磨いた。

一般の小売店に出せる規格通りの農産物の生産量は限られている。直売所では農家のブランド維持のため、規格外農産物は販売できない。変形した農産物は二次加工、それ以外は飲食店で利用して廃棄品の無い仕組みを確立した。

農業で従業員を雇用するには人件費がかかり、直売所でも1人雇用すると赤字になる。従業員を雇用する前に、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用したイチゴのハウス栽培の実証実験に取り組んでおり、市内企業の㈱ルートレック・ネットワークスと連携している。

「岡上小学校の“寺子屋”という授業では、サツマイモの収穫体験など子供達に農業体験の機会を提供しています。将来的には、イチゴやブルーベリーなど果物の観光農園を運営する計画です。その観光農園で障害者施設の人や地域の主婦の方に、働く場所を提供したいと考えています。観光農園を街づくりとして取り組むため、2019年9月に“NPO法人アグリ・リゾート”を設立しました」と語る山田代表は都市農業による地域活性化に邁進中だ。

当社製品 川崎市初のワイン

自家製「蔵邸ワイン」

川崎市産業振興会館
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