上代工業 株式会社

川崎市の立地を活かした即納体制で「都市型板金加工」を展開

 

 

 

代表取締役社長 上代 健一

事業内容 レーザー加工・製缶・機械加工・精密板金・組立・塗装・配送
企業名 上代工業 株式会社
創業 1971年(昭和46年)11月
所在地 本社 川崎市高津区下野毛1-11-23
電話 044-811-8181
従業員 54名
代表 上代 健一(カミシロ ケンイチ)
URL http://www.kamishiro.co.jp/

2021年11月に設立50年を迎える上代工業。エレベータ部材を中心に建設機械、トラック部品などの板金加工を幅広く手掛ける金属加工企業である。東京・横浜に隣接する川崎市の立地を活かし、首都圏での短納期化と多品種少量ニーズに適応した生産体制で順調に業績を伸ばしている。20年のコロナ禍では数年前から手掛けてきたIT活用による生産性向上への取組みが奏功し、緊急事態宣言下でもテレワークやシフト制を併用した勤務へと移行しながら即納体制を維持してきた。「部品加工だけでなく完成品として納入する体制を構築するとともに将来はメーカーとして自社ブランドを立ち上げたい」。節目の年を迎えた上代健一社長はさらなる業容拡大に向けて邁進している。

多能工化で多品種少量に柔軟に対応

上代工業の強みは地の利を活かした短納期と多品種少量に対応した生産体制にある。現場の社員が複数の機械を操作できる「多能工化」に取組み、機械の稼働を平準化しながら効率的な操業を可能にしている。切削、溶接、塗装など板金加工の後工程も内製化し、ワンストップでの受注ができるのも大きな特徴だ。さらに配送は自前のトラックを活用しているので小回りが利き、突発的な納入にも柔軟に対応できる。「エレベータ部材など建築関係の仕事は部品の種類が多く、即納を求められることが少なくありません。川崎市という恵まれた立地を活かしたきめ細かく対応できるのが当社の持ち味です」と上代社長は「都市型板金加工」ならではの強みを示す。

同社の創業は1968年。プレス機械メーカー
の設計者だった上代社長の父・正勝氏(現会長)が独立し、東京都大田区で板金加工を営み始めた。翌年、工場増設のため川崎市川崎区に移転、71年に法人化して上代工業㈱を設立。73年に高津区下野毛に本社工場を移し、現在に至っている。

「創業時は近隣の町工場から仕事を回してもらっていたそうですが、外資系エレベータの部品を手掛けている時に、国内メーカーの知り合いから声がかかるようになり、以来、エレベータ部材が主力です」(上代社長)。同社が手掛けるのはエレベータのレールと壁の間を支えるブランケットやドア系の部品など幅広く、点数は何万種類にも及ぶ。人が乗る製品だけに安全面での要求も厳しく、溶接でJIS検定を取得するなど技術レベルの向上・維持に注力し、顧客からの信頼を得てきた。

独自の生産管理システムを構築

その一方、エレベータ関連以外の分野の開拓も経営上の課題となっていた。同社が得意とするのは板厚6~9mmの中厚物とよばれる板材が適用される分野。新規開拓ではあまり手掛けてこなかった薄物やステンレス素材にも挑戦し、顧客の幅を広げていった。ところが売り上げが伸びる一方で利幅が下がり始めた。「7~8年前から食品や半導体関連など建築以外の分野に注力しましたが、生産管理が不十分なため利益に結び付かない。社員数も30人規模だったのがほぼ倍増したことでさらに情報の伝達共有ができなくなったことが大きな要因でした」(同)と多角化を進める中で新たな課題が浮かび上がってきた。

そこで着手したのが管理部門の強化だった。「社員の90%が直接現場に携わっている状況だったので、管理面で専門的な人材を採用することから始めました」(同)。総務、生産管理、工場のトップに外部から経験豊富な人材を登用し、組織の見直しに取り組む。一方でITを活用した生産管理にも取り入れ始めた。全社員にiPadなど情報端末を配布し、業務の進捗管理や日報を電子化。モノの流れや設備状況、過去の図面データなどシステム上で社内のあらゆる情報の管理・分析をできる体制づくりを行った。例えば手書きだった管理板を電子化して帳票類をバーコードで読み取りデータを一元化する体制を構築。各作業者が現場で入力することで移動せずに業務進捗を把握できるようにした。

「加工情報を共有することで品質の安定化と生産性が向上しました。さらに社員の仕事に対する意識も変わり、より効率的に仕事に取り組む姿勢が表れてきました」(同)とITツールの活用が同社の働き方改革にも寄与。川崎市から令和元年度の「生産性向上・働き方改革推進事業者」として表彰も受けた。「当面は品質とコストを見直すとともに、建設など得意分野に集中します。首都圏の建設需要はしばらく拡大傾向にあり、タイミングを計って改めて新規分野に挑戦したい」(同)と足元を固めつつ新規開拓のチャンスをうかがう構えだ。

最新マーケティングプロジェクト「KーLABO」を発足、極厚の「鉄板」「焚き火台」を発売

社内体制の見直しを進める傍ら新たな取組として始めたのがマーケティングプロジェクト「K‐LABO」だ。「以前から自社製品を持つのが夢。この取り組みは実現に向けた第一歩です」(同)。B to Bに特化してきた同社が一般的な知名度アップを狙いB to Cに挑戦したのは、顧客の反応を探りながら売るための手法を研究するのが狙いである。第1弾として20年7月にクラウンドマーケティングサイト「マクアケ」に厚さ9mmの極厚バーベキュー用鉄板「9(ナイン)シリーズ」を出品、さらに21年1月には第2弾として9シリーズに厚さ9mmの極厚たき火台を追加、発売した。「9mmの厚さにこだわったのは本業の板金加工の特徴を出すことと鉄板の厚みが肉の旨みを引き出すためです。鉄板はSNS等で広がり、焚き火台と合わせて好評です」とプロジェクトを担当する総務部の神山裕毅氏は予想以上の手ごたえを感じている。「いくら良い製品でも売り方がわからなければヒットしません。9シリーズで情報収集し、本格的な自社製品に備えます」(同)。すでに自社で構築した生産管理システムについても外販の道を探っており、自社ブランド投入への準備を着々と進められている。

海外人材を積極的に活用

上代社長が今後の重要課題として挙げるのが人材の確保である。若者の製造業離れに加え、大手企業の大量採用などでここ数年新卒採用ができていない。精密板金や溶接など熟練の技を要する技術・技能の伝承に加え、設計部門のエンジニアを養成するために若手人材の確保は急がれる。「コロナで求人環境は変わるかもしれませんが、これからは海外の優秀な人材も採用していく方針です。すでにインドネシアから研修生を受け入れているほか、フィリピン、韓国からエンジニアとして採用を決めたところです」(上代社長)。海外人材を積極的に戦力に加え、多様な人材を活かしたダイバーシティ経営へと踏み出す考えだ。

独自の生産管理システムで「見える化」を実現

自社の技術を活かした「焚き火台」

川崎市産業振興会館
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