株式会社 三興製作所

様々な工夫で短納期を実現!量産品よりも高い寸法精度で板金加工

 

 

代表取締役社長 木村 雅彦

事業内容 試作品・小ロット量産等の精密板金・金属、樹脂切削加工・旋盤・表面処理
企業名 株式会社 三興製作所
創業 1961年(昭和36年)3月
所在地 川崎市麻生区栗木2-4-14
電話 044-981-5111
従業員 30名
代表 木村 雅彦(キムラ マサヒコ)
URL http://www.sanko-factory.co.jp/index.html

三興製作所は、試作精密板金加工を行う会社である。製作する部品のサイズは、米粒大から1m程度までと多岐にわたる。100%受注生産で、短納期での納品が求められる。当社は完成品メーカーの新製品開発にともなう試作ニーズに、技術と工夫で応えてきた。

板金物の試作部品を製作し、大手メーカーの新製品開発を支える

三興製作所は、2021年3月に設立60周年を迎える試作精密板金加工の老舗メーカーだ。1961年の設立以来一貫して、家電製品などの新製品開発の際に必要となる板金物の試作部品の製作を手掛けてきた(写真参照)。

大手メーカーは新製品を発売するまでに、試作品を複数回製作して性能やデザインなどの確認を行う。当社はその試作品に搭載する部品を製作し、新製品開発の現場を支えている。

当社には、家電、自動車、医療機器、精密機械など、多岐にわたる業界の研究開発部門の設計者から、様々な試作部品の製作依頼が舞い込む。例えば、家電品では液晶テレビやオーディオやスマート機器など、自動車ではエンジン周りや制御装置などの製品内部を構成する部品の試作ニーズに応えている。複雑な形状や高い寸法精度が要求される依頼でも、1週間以内で納品できるのが当社の強みだ。

木村雅彦氏は9年ほど前、三興製作所へ入社。それまでは、当社と同じ試作業界のメーカーで営業の仕事を担当していたという。木村氏が勤務していたメーカーは樹脂の加工、当社は板金の加工がメインということから長期にわたる取引関係があった。

木村氏は2017年に社長に就任。新規顧客の開拓を積極的に推進すると同時に、就業規則の変更に着手した。「入社の時期によって、社員の給与体系はバラバラでした。同じ仕事を担当しているにもかかわらず、月給制と時給制の社員が並存しており、給与面の処遇の格差に社員の不満も大きくなっていました。そこで就業規則の給与規程を見直し、毎月の収入が安定する月給制への移行を慎重に進めました」と木村社長は当時を振り返る。

当社で製造した試作品

短納期対応やレスポンスの良さが、当社の強み

三興製作所の仕事はお客様の新製品開発にかかわるため、機密事項であることがほとんどであり、当社では何に使用されるのか分からない部品の受注が多いという。受注ロットは1個から10個程度のものが多く、主力である精密板金加工に加え、マシニングセンタによる金属の切削加工、および樹脂加工、意匠部品のメッキや塗装・シルクスクリーン印刷などにも対応している。

当社主力の精密板金加工では、鉄、ステンレス、アルミ、銅等の板金(板厚0.01mmから4mm程度まで)を、最も厳しい公差が要求される所で50μ程度の寸法精度を確保して製作している。お客様から提供された図面とCADデータ(3Dが主流)をもとに、その設計指示を忠実かつ正確に現物に落とし込むのが当社の仕事だ。

当社のものづくりは、まず図面やCADデータを平板に展開する作業から始まる。曲げ加工や絞り加工の際の材料の伸び率等も計算に入れて、板金をレーザーカットやワイヤーカットするためのプログラムを作成する。次に、レーザー、ワイヤー放電加工機で板金に穴加工や切断加工を行う。そして、油圧プレスで絞り加工、ベンディングマシンで曲げ加工を行う。さらに、必要に応じてバーリング加工やタップ加工を行ってから、バリ取りなどの仕上げを行う。最後に、お客様の要求通りの部品に仕上がっているか、出荷検査を行ってから納品される。

「例えば自動車のリコールのように、製品が市場に出てから不具合が発生すると、大きな社会的問題となり高額な対策費用が掛かることになります。このような問題を起こさないためには、製品開発の段階で設計通りの部品を試作し、それらを組み立て評価し問題がないことを確認することが大切になります。三興製作所は、完成品メーカーの製品開発段階において、精度の高い試作部品を提供することにより、量産に入ってからの問題発生を未然に防ぐことに貢献しています。試作では量産よりも厳しい寸法精度が要求されるのですが、私たちは長年培ってきた技術やノウハウを活用して対応しています」と木村社長は解説する。

お客様である完成品メーカーの最も重要なニーズの一つは短納期対応。設計者としては、『図面上に設計できたら、すぐに組み込んで試したい。一日でも早く現物が欲しい』という心理が働くからだ。今日注文を受けて、明日納品という案件も少なくないという。

当社では、短納期に対応するため、様々な工夫を行っている。複雑な形状の試作品では、各工程のリーダーが集まって、どういう順番で加工を進めるのか、どうやって作るのか、などについて打合せを行ってから、作業に着手している。例えば、どの曲げ型を使用するのか、簡易型や治具はどれが使用できるのか、新たに準備する簡易型はあるのかなど、できるだけ最短なやり方を検討し、加工時間を短縮する方法を追及している。加えて、前工程と後工程とが、緊密に連携して作業を進める点にも気を配っている。

また、お客様の指定通りの試作部品を納入しても、客先で製品に組み込んだ際に不具合が生じることがあり、追加の加工が必要になることがあるという。このような追加の加工に対するレスポンスの良さも、当社の強みの一つとなっている。

新規顧客の開拓と熟練技術の継承に取り組みつつ、『100年企業』を目指す!

お客様の数が多いほど経営は安定するため、新規顧客の開拓は三興製作所の重要な課題の一つとなる。幸なことに、近年、金融機関のマッチングや長年の取引先の紹介などにより、新規のお客様から声が掛かることも多いという。

さらに、部品単品を受注するのではなく、板金や切削や樹脂の加工を一括して、ユニット化して受注することで、顧客開拓を進めていく方針だ。当社でユニット内の組み込み確認まで行うことができ、お客様が楽に仕事を回せるようになるためだ。

一方、新しい事業の柱として、自社製品の開発にも着手した。具体的には、当社の強みである精密板金加工技術を活かし、キャンプ用品などの自社開発に取り組んでいる。100%受注生産

から脱却し、さらに経営を安定させることを狙っている。

当社では、レーザー加工機やマシニングセンタを始めとして、多様な設備を取り揃えているものの、試作精密板金のものづくりでは職人の熟練技術に頼る所も多い。当社は60年に及ぶ業歴の中で、他社がまねできないような職人技を培ってきた。ベテランから若手へ技術をきちんと継承していくことも、当社の大きな課題の一つだ。

「若い社員も増えてきましたので、『100年企業』を目指していきたいと考えています。長い目で見て、激しい環境変化の中でも会社が存続していけるような体制作りをしていきたいですね」と木村社長は将来を見据える。

川崎市産業振興会館
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