株式会社 成光工業

金属加工から機能性素材の開発まで手掛けるCNF(セルロースナノファイバー)の製品開発

 

 

代表取締役 松尾 教弘

事業内容 金属製品(金型・端子台・ブスバー等)、機能性材料の開発・製造等
企業名 株式会社 成光工業
創業 1967年(昭和42年)10月
所在地 川崎市川崎区浅野町6-7
電話 044-366-5855
従業員 34名
代表 松尾 教弘(マツオ タカヒロ)
URL https://www.k-seiko.co.jp/

金型、金属端子、ブスバー・バスバー等の金属加工を主力とする成光工業は、2年前からコンパウンド事業部を立ち上げ材料開発を行っている。金属と材料は異分野に思われるが、「創業以来、新しい事業開発を積極的に行ってきたので異分野への展開の違和感は全く無い」と代表の松尾氏は語る。

コンパウンド事業で核となる技術はCNF(セルロースナノファイバー)の分散化技術である。CNFは植物由来のもので、自動車部品、フィルム、塗料等の様々な用途展開が可能で、石油由来製品からの代替需要もあり環境負荷の少ない技術として近年大きな着目を浴びている。

コンパウンド事業以外にも自社工場のIoT化の独自開発を行っており、同社の新規事業は留まる事を知らない。

金属加工(金型・端子台・ブスパー等)を主力とする会社

成光工業は、1973年に川崎市で設立された。創業者は現在代表の松尾氏の義父である。

創業当初は、創業者の出身先である大手電子部品メーカーからプレス加工や伸縮式のアンテナに使われるバネ、自動車の接点部品等を手掛けていた。一時は、SNOY”ウォークマン”の部品も製造していた。

その後、順調に業容は拡大し、創業場所の自宅兼工場が手狭になったため、現在の工業団地の開設とともに現地に移転した。

時代の変遷とともに金属加工の製品も変わってきたが、現在の主力は、基板系端子台の上位2社へのファーストベンダーとして端子台の金具、端子を供給している。試作から金型、製品まで一気通貫で提供出来る事が強みである。

現代表の松尾氏は約25年前に当社に入社した。それまでは、建築設計の仕事を行っており、製造業は全く知識が無かった。「製品の寸法の図り方も分からない」状態であったが、製造現場、営業等の一連の流れを学んでいった。

「製造業の知識が無かったことが幸いした。」と松尾氏は語る。それは同社に好影響を与えた。先入観無く、製造方法から顧客開拓まで既存のやり方をトライ・アンド・エラーしながら改善していった。先代もそれを快く受け入れ、入社後3年で売上が倍増する等の目に見える結果が現れてきた。

順調に会社は成長し、松尾氏は2007年には代表に就任、現在の本社の隣接地を拡張して2倍の広さとなり生産体制を充実させた。

リーマンショックを乗り越え新たな事業展開を図ってゆく

本社工場が2倍となり、更なる成長と思われた矢先、拡張した翌年の半年間売上が80%減少する事態に見舞われる。リーマンショックである。この苦しい中に今後の展開を熟考していると、「リーマンショックでもさほど苦しんでいない製造業がある。」事に気づいた。それまで、同社は取引先や手掛けている製品が集中していた。それは、好調期は順調である反面、一点集中型は不景気の波を受けやすい。他方、影響をさほど受けていない企業は取引先、製品の多様化を図っている。そのような中で「新規事業への取組」を決め、実行に移していった。

先ずは、量産品のみならず、試作開発品の受注を開始した。少量多品種への対応は、苦労も伴ったが、これまで接したことの無い様々な業界のニーズや人的繋がり、新たな技術を得る格好の場となった。

その後、端子台以外にも、バスバーと言われる制御盤内部の導体棒の受注を開始、特に複雑な形状の製造を行い、インターネット販売も行う等、新規事業の展開により業績は回復、ピンチをチャンスに変えていったのである。

CNF製品の開発で社会に優しい製品を提供する

業績の回復、進捗に伴い同社は、2013年に福島県白河市に工場を竣工し、生産体制を充実させた。

白河工場の稼働により、本社工場には余剰スペースが生まれた。そこを同社の新規事業の研究開発を行う場とし活用している。現在は、IT事業部とコンパウンド事業部を立ち上げ新たな事業展開を図っている。

IT事業部にはIoTに知見のあるスタッフが加入し、白河工場に受発注から製造状況、故障予知までをリアルタイムに把握出来る生産管理システムを独自開発し、2020年に稼働を開始しており、他社への外販も予定している。

コンパウンド事業部でも専属のスタッフが加入しCNFを活用した製品開発を行っている。CNFは植物の繊維を微細化したものが原材料となっており、生産・廃棄に関する環境負荷が低く、軽量、弾性率が高く、各用途に転用が期待されるバイオマス素材である反面、均一に配合する事が難しくCNFの性能を十分に引き出すことが難しい。その課題に対して同社は独自に開発した分散化(材料同士を上手く混ぜ合わせ安定化させる)の技術で解決しており、各種用途製品の開発を行っている。

CNF製品の第一弾として2020年にはスキー・スノボード用滑走ワックス「G-SLIDE」を開発、発売した。

既存スキー・スノーボート用ワックスは石油由来であり環境負荷が大きな課題となっているのに対して、天然素材のみで作られた環境に優しく性能も優れた製品であり、川崎ものづくりブランドにも認定された。
第二弾とし、2021年にはセルロースファイバーを配合した接着剤の発売を開始する予定である。

木材同士の接着はもちろん、これまでのEVA樹脂を主材料とした接着剤では着きにくい、特殊加⼯した紙やPP、ガラス等にも使⽤が可能であり、低温下でも変質・変形を起こさない製品である。

事業分野を広げながら、様々なニーズに対応する同社の今後に大きな期待をしたい。

セルロースファイバーを活用して新規開発した接着剤

川崎市産業振興会館
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