医療従事者の聴診技術の習得を支援!聴診専用スピーカやスマホアプリを開発
代表取締役 藤木 清志
事業内容 | 聴診専用スピーカや聴診アプリ等の開発・販売 |
企業名 | 株式会社 テレメディカ |
創業 | 2012年(平成24年)3月 |
所在地 | 川崎市川崎区駅前本町11-2 川崎フロンティアビル4F |
電話 | 045-532-4613(本社) |
従業員 | 4名 |
代表 | 藤木 清志(フジキ キヨシ) |
URL | https://telemedica.jp/ja/ |
テレメディカは、医療従事者の高度な聴診技術の習得をサポートするスタートアップだ。当社が提供する心音や肺音の音源は、医学教育の現場において高く評価されており、『聴くゾウ』は医学生の聴診の授業や 試験に広く採用されている。
また、「より手軽に、より高音質に、よりリアルに」を実現させたスマートフォン聴診アプリ『オースカレイド』を開発し、販売している。当社のマーケットは国内にとどまらず、海外市場の開拓も進めている。
患者さんの安心や満足のために、聴診技術の向上に着目
藤木清志氏は、製薬会社での勤務を経て独立、2012年にテレメディカを創立した。当初はAI(人工知能)を用いた病気の診断や医学教育のシステムを提供する事業に取り組んだという。
同時に、薬剤師の免許を持つ藤木社長は、末期がん等の患者さんの在宅医療にも携わった。「訪問の際、薬の効果や副作用を確認するため、患者さんの血圧を測る、脈を取る、足のむくみを確認する、などを行います。患者さんから後で感謝の手紙をいただいたりしたのですが、患者さんと医療従事者が近い距離で接することの重要性を実感しました。それは患者さんの安心や満足につながるのではないでしょうか」「そのような中、現状、患者さんの体に聴診器を当てて音を聴く、聴診を学習する環境は十分に整っているとは言えず、当社が聴診技術の向上に貢献できるかもしれない、と考えました」と藤木社長は振り返る。
聴診器を当てて、リアルな心音や肺音を聴く、『聴くゾウ』を開発
テレメディカは、医師や看護師などの医療従事者が聴診技術を習得するための聴診スピーカ『聴くゾウ』を開発し、2017年2月に販売を開始した(写真参照)。
『聴くゾウ』は、スマートフォンを少し厚くしたくらいのコンパクトサイズで、『聴くゾウ』に聴診器を当てて音を聴く。パソコンやタブレットを用いて専用のウェブサイトで心臓や肺の音を再生し、その音を『聴くゾウ』で出力するという仕組みだ。本商品で聴く音は、実際に患者さんを聴診する時に聴こえる心音や肺音とほとんど変わらないという。
従来、医学生や研修医が聴診を学習する際、心音等を録音したCDをラジカセで再生したり、マネキン人形のシミュレータを使用したりしていた。ただ、CDでは、心音等の低音が出ない、音が割れるなど、学習効果の面で問題があった。また、マネキンのシミュレータは1台数百万円と高額であるため、大学の実習室に少数しか導入できず、そこでしか聴くことができない、といった問題があった。
これに対し、『聴くゾウ』は1台10万円程度とお手頃価格であるため、導入のハードルが低い。加えて、本商品を使用することで、心音などの低音も忠実に再現でき、かつウェブサイトにアクセス可能な環境があれば、何時でもどこでも繰り返し聴くことができるため、高い学習効果が得られるのだ。
患者さんに聴診器を当て、心音や肺音などが正常なのか、異常なのかを的確に判定できるようになるまでには、かなりの経験が必要になる。そのためには、聴診器を当てる部位ごとの音の違い、様々な症例における音の違いを、繰り返し聴いて学習するしかない。『聴くゾウの専用サイト』には、部位ごと、症例ごとの音源が用意されており、医学生や研修医などにとって、極めて有効かつ便利な学習ツールとなるのだ。
さらに、『聴くゾウ』には触診を学習できる機能も搭載されている。聴診器を当てる部分がシリコン面になっており、そのシリコン面に手のひらを置くことでスリル(心雑音が非常に大きい時に、その振動を胸壁から手で触れることができるようになる状態のこと)に触れ、その感覚を確かめることができるようになっている。 『聴くゾウ』は、大手音響メーカーの協力を得て開発し、製造も委託している。また、最前線で患者さんの診察を行う複数の医師に本商品の音を聴いてもらい、高い評価を受けている。このように品質や音質が折り紙付きの本商品は、既に日本全国の数多くの医療系大学や医療機関で採用されている。
診療スピーカ「聴くゾウ」
リアルな心音をスマートフォンで手軽に聴ける、聴診アプリを開発
心臓病患者シミュレータの開発に携わってこられた医師である高階經和先生の監修の下、開発を進めて2019年10月に発売したのが、スマートフォン向けの聴診アプリ『オースカレイド』だ。
心音は患者さんの胸の4つの部位に聴診器を当てて聴くのが基本。本アプリではスマホ画面に表示された胸を指先でタップすると、その部位にチェストピース型のアイコンが移動し、イヤホンを使って心音や心雑音を聴くことができる(写真参照)。なお、心雑音とは、正常な心臓からは聴こえない異常な雑音のことをいう。
『オースカレイド』には、正常症例(例えば、正常心音、生理的S2分裂など)や心雑音症例(心房中隔欠損、大動脈弁狭窄など)の代表症例23症例を搭載しており、重要な症例を網羅的に学習することが可能だ。
もちろん『オースカレイド』に『聴くゾウ』を
つなげば、聴診器を使ってよりリアルに心音を聴くこともできる。
「心音には個人差もあるのですが、それよりも疾患による音の違いの方が段違いに大きくなります。疾患ごとの心音を繰り返し聴いて、その特徴を学習することが、聴診技術の向上につながります。医療現場において、検査装置で発見できなかった疾患を、優れた聴診技術により発見できたというケースは、少なくありません」と藤木社長は解説する。
また、肺音のアプリについても、既に開発を完了させているという。
聴診アプリ「オースカレイド」
販路の拡大を目指し、海外市場の開拓を加速!
「日本国内ではブランドを確立できましたので、海外市場の開拓を進めています。1年間にわたり交渉を行った結果、グローバル展開する韓国や台湾の企業と販売契約を結び、『聴くゾウ』の出荷を始めています。また、さらに販路を増やすため、ジェトロのハンズオン支援を受けています」「一方、英語版のウェブサイトも公開していますので、海外からの問い合わせも数多く寄せられるようになりました。問い合わせの相手は、欧州、米国、中国、オーストラリア、東南アジア、中東など、様々な国の企業です。聴診技術習得のニーズは世界共通ですので、海外展開をさらに加速させていきたいと考えています」と藤木社長は力を込める。
「同時に、新しいサービスや追加サービスの開発にも取り組んでいきます。例えば、学生がウェブサイトを利用した履歴を用いて、どれくらい勉強したのか、大学の先生が管理できるようにすることなどが挙げられます」と社長は今後の事業展開を語る。