株式会社 福田商店

炭火焼の美味しさと森林資源の有効活用を伝え、炭を通じて「火のある暮らし」を提案

 

 

代表取締役 福田 貴久

事業内容 天然炭、おが炭、BBQ/キャンプ用黒炭、焼き網、燃焼関連器具の販売
企業名 株式会社 福田商店
創業 1950年(昭和25年)1月
所在地 川崎市幸区中幸町2-42
電話 044-511-7251
従業員 18名
代表 福田 貴久(フクダ タカヒサ)
URL http://www.binchotan.co.jp//

当社は1950年(昭和25年)の創業以来、国内外で生産された様々な業務用炭の卸小売事業を行っており、備長炭をはじめとする天然炭やBBQ用黒炭が主力商品である。また、炭の良さを消費者に知ってもらうために、燃焼関連器具も扱っている。炭は国内調達の他、中国や東南アジアのパートナーと共同で植林活動を行うことにより、原料となる木材を安定的に確保できるとともに、貴重な森林資源を有効活用し、持続可能な循環型事業を目指している。

地球環境を守りながら木炭の材料を調達し、持続可能な循環型事業を目指す

「製炭事業は、実は地球環境に優しく、循環型社会に貢献する」と聞いて、すぐ理解できる人は少ない。福田社長にそのロジックを聞いてみた。

炭は木を炭化させたものだが、炭を作るためには大量の木を必要とする。大量の木を使用するためには、木を伐採しなければならない。森林伐採というと自然破壊のイメージがあるが、それは無秩序に伐採した場合である。逆に山が長期に放置されると、樹木が生い茂り過ぎ、地面に太陽光が届かなくなって土壌が貧弱になったり、高齢な樹木が増えて光合成活動が低下する。CO2を吸収する光合成を減らさず、なおかつ自然破壊を起こさない様、日本では炭に適した原木(樫や楢)を選んで伐採し、海外では伐採権という権利にもとづいて計画的に原木を伐採しているのだ。当社は海外の伐採権を持つ信頼できるパートナーと協業し、環境に優しい持続可能な生産体制を構築している。

もう1点はカーボンニュートラルとカーボンマイナスという考え方で炭を理解するということである。木は成長中にCO2を取り込み、体内に炭素を貯めこむ。木の炭化により、炭はほぼ炭素のみの構成となる。炭を燃やした時に排出されるCO2は、木が生長する過程で光合成によって大気から吸収したものなので、大気中のCO2は増えない。これがカーボンニュートラルである。また、炭は炭素を固定化したものなので、炭を作って燃やさずに水質改善などで保存活用すれば大気中のCO2は減っていくことになる。これがカーボンマイナスという考え方である。

炭は燃やすことでCO2を排出するだけの燃料の一つとばかり思っていたが、福田社長の話を聞くうちに、「製炭事業は地球環境に優しく、循環型社会に貢献する」ことに思わず膝を叩いた。炭が地球温暖化対策の一手として新しい価値を生み出す可能性を持っているのだ。

大手電機メーカーのサラリーマンを経て、福田商店三代目経営者に

福田社長は1981年、神奈川県川崎市出身である。そのファミリーヒストリーは100年近く遡る。福田社長の曽祖父は元々東京都内で木材屋として独立していた。太平洋戦争末期に空襲が激しくなり、一家は茨城県に疎開していたが、終戦後に木材店を立ち上げようと、祖父の代に川崎市に移り住んだ。川崎市を選んだ理由は、木材の運搬に利用できる国鉄の貨物路線が近くに走っていたからだそうである。1950年創業時は木材屋であったが、当時は燃料としての端材の需要が多く、ほどなく木炭を専門に扱う店になった。その頃の川崎市には多くの炭屋があったそうである。戦後の復興期から高度成長期を経て、時代は昭和から平成へと移り、石炭・石油やガス、電気と燃料エネルギーが次々登場する中、脈々と顧客の木炭ニーズに応え続け、創業から70年を超えた。そんな環境に生まれ育った福田社長の子供の頃の将来の夢は、宇宙飛行士や競馬のジョッキーだったそうである。その後、明治大学政経学部を卒業し、三菱電機株式会社で自動車向け部品の営業マンとして働いた。大学卒業後すぐに福田商店に入社しなかったのは、一度は外の飯を食べてこようとの意気込みからである。30歳を迎える2011年に三菱電機を退職し、福田商店に入社後は、会社員時代の経験を活かし、当社の営業担当として、顧客や先代が開拓した海外の生産パートナーの間を飛び回ることになった。2016年に社長となってからも、中国、マレーシア、インドネシア、ラオス、ベトナムにある8ヶ所の生産パートナーに最低年1回は訪問して、高品質で低コストの炭の安定供給を確保してくる。各国で採れる木材の種類により、用途も違ってくる。それだけでなく、地域によって雨季や乾季があったり、宗教上の風習の違いによる休みがあったりするが、供給に穴を開けることは許されない。炭の安定供給こそが当社の最大の強みであるので、長年かけて築き上げた信頼できるパートナーと長く付き合うというポリシーは変えるつもりはないと、福田社長は胸を張った。

炭焼き関連商品「野燗炉chibi chibi」を開発 

当社の炭は主に業務用である。国内数千店の飲食店、たとえば炭火焼きの焼き鳥や焼肉店に使われている。炭火焼の料理が何故美味しいのか?それは、火で焼くのではなく、赤外線量の多い熱で焼くので、旨みを逃さずに熱が材料に通っていくからである。美味しい食材をより美味しく食べるために、質の良い炭は欠かせないのである。

炭は屋外でBBQを楽しんだり、最近ではグランピングやシーシャ(水タバコ)でも使われる。また、当社は炭の販売だけではなく、炭焼きの関連商品として、火熾し、火ばさみ、火消し壷も扱っている。福田社長に将来のビジョンを聞くと、「炭を一般の人にもっと知ってほしい。火のある暮らしを提案したい」と話す。さらに、「当社は業務用の炭で成長してきたが、これからは炭をキーワードにして扱う関連商品を増やす。もっと炭火を選んでもらえるよう気軽に使えるアイテムを開発したい」と続けた。

その思いを形にしたのが、同じ川崎市内の日崎工業株式会社の協力のもとで開発・製造した野燗炉chibi chibi(ちびちび)である。野燗炉とは、炭を熱源として酒燗と串焼きを同一器具で楽しむことができる、日本古来の加熱調理器具である。新型コロナ禍によって、飲食店での飲み会や屋外でのBBQが少なくなり、家飲み需要が増してきたこともあって、家庭内で一人でも炭火による串焼きと酒燗が手軽に楽しめる野燗炉の商品化を企画した。野燗炉とのセットで炭も燃料として売れるという効果も期待できる。家族や親しい人との暖かい時間を過ごすのに使ってみたい。

野燗炉 chibi chibi

川崎市産業振興会館
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