株式会社 灯

伊勢型紙×照明を融合、日本の伝統工芸を世界に広めたい

代表取締役
高橋 完治
事業内容 照明機器の開発、製造販売、照明インテリア
企業名 株式会社 灯
創業 2008年(平成20年)8月
所在地 川崎市高津区久地3-16-6-524
電話 044-813-1038
従業員
代表 高橋 完治(タカハシ カンジ)
URL http://www.k-akari.co.jp/

株式会社灯は、着物を作るために出回った伊勢型紙を用いた照明を製造し、幻想的な空間を演出する。日本の伝統工芸は後継者不足が深刻だが、1000年有余の歴史を持つ伊勢型紙と照明の融合により、新たな日本の伝統美を世界に発信している。2023年12月からは、羽田空港国際線ターミナル出国ゲート内にある伝統工芸品ショップで照明器具の取り扱いを開始。伊勢型紙の繊細な模様が特徴の照明器具は優美な空間を創り出し、仕事や休暇を日本で過ごした人が、出国前のひとときを過ごす空間に華を添えている。

大手半導体メーカーのセールスエンジニアが起業・考案

同社の設立は2008年8月。大手半導体メーカーのセールスエンジニアとして働いていた高橋社長は、出張先の三重県で鈴鹿市白子の伊勢型紙資料館を訪れ「伊勢型紙」と出合い「なんとも美しい」と感じ、その後起業へと至った。

伊勢型紙は、古くから着物を染める型紙として使われ、その歴史は室町時代から1000年近い歴史を持つ。その繊細かつ精巧な模様は、着物の布地を染めるための重要な文様として使われ、現在では伝統的工芸品にも指定されている。

「こんなにも美しい伝統工芸・文化をこのまま放置できない」と思ったものの、日本国内の着物離れは進む。「伊勢型紙を現代の暮らしになじみ、生活空間の中で使われるものにするにはどうしたらいいか」。考えた末に生み出したのが、私の光の知識を生かした照明機器への応用だった。

半導体の会社勤務だった高橋社長にはもともと、ものづくりのノウハウはなかった。だがものづくりのゼロからの製造を始めた照明は、伊勢型紙からこぼれ落ちるともしびが繊細な影絵を生み出だした。


型紙を使った照明を普及させようと努める高橋社長の元、機や、染業者で廃業した型紙保有者から申し入れが有った。染織作家の息子が活動を知り、「良かったら使ってほしい」と連絡をくれた。高橋社長が新潟まで駆け付けると、男性は保有していた江戸末期の伊勢型紙4000枚を「もう着物を着るような、そんな時代はないと」私に託された。

照明の一点当たりの価格は十数万円から20万円程度。価格で判断されてしまうことも多く、提案営業には苦労も伴う。デザイン設計のたびにサンプル品作りを繰り返し、試行錯誤を重ねる日々だ。

だが、価格が高めであることは「原料」の伊勢型紙が「ストーリーのある型紙」(高橋社長)であることの証左。伊勢型紙の「履歴」が明らかになっているのが同社最大の強みだ。世に出回る伊勢型紙は誰が持っていたのか、どのように使われてきたか分からないものがほとんどだというが、「私が持っているものは、染織作家が保有していたもの。ストーリーのある型紙なんです」と高橋社長は胸を張る。5年かけて提案営業した末、和倉温泉の高級旅館に取り入れられるまでになったという。

目指すのは、日本の伝統工芸と新たなエッセンスの融合

海外への展示会にも積極的に出展している。2019年はフランスに4回渡航、同地の大規模展示会「メゾンオブジェ」での出会いから、個展開催の約束を取り付けたものの、新型コロナの感染拡大で全ては仕切り直しとなったが、コロナ禍の3年間は新たに開発に専念し、新しい取り組みも続けてきた。

「伊勢型紙を照明器具で活用していこうとする中、金属化にも挑戦しました。木製の照明器具だけでなくデザインをデータ化することで、エッチング、レーザなどの機械加工も可能であることも分かりました」と高橋社長は語る。更に、新しい挑戦として開発した糸掛けランプは、日本和文化グランプリ2023で優秀賞を獲得するなど、認知度のアップにもつながりつつあるという。

伊勢型紙を使って、今後は照明器具以外の商品も開発し、新しい世界を広げたいと話す。「若い人のアイデアと一緒に広げていけたら、と協業、共創の業者なども探っています。コラボも大歓迎です」と日本の伝統工芸と新たなエッセンスの融合を目指している。

一方で、高橋社長は「私の豊富な型紙を利用して現代の色彩デザインも加えた作品の応用展開していくモデルを進めていきたいですね」とも語る。この伝統工芸を世界に広めたいと、カンボジア、ロサンゼルス、イギリスといった越境EC にも挑戦している。

高橋社長は4000枚の伝統ある型紙を生かし、日本の伝統工芸・伊勢型紙の美しいデザインが、現代の暮らしのあらゆる場面を彩るようにしたいと意気込む。

 

川崎市産業振興会館
トップへ戻る