株式会社 高貴商店

ご飯と?寿司と?ラーメンと?老舗の海苔問屋が語る海苔の魅力とは

width= 代表取締役
高田 久(左) 

高田 保マネージャー

事業内容 海苔の製造卸、販売
企業名 株式会社 高喜商店
創業 1901年(明治34年)
所在地 川崎市中原区木月4-3-5
電話 044-411-2339
従業員 8名(アルバイト含む)
代表 高田 久(タカダ ヒサシ)
URL https://www.takaki-nori.com/

高喜商店のプレミアム海苔ギフト「喜」(よろこび)が、昨年度の「全国推奨観光土産品審査会」において栄えある「グローバル部門特別審査優秀賞」を受賞した。本審査会は、日本商工会議所と全国観光土産品連盟が1960年度から毎年行ってきた歴史と格式ある表彰制度であり、全国各地の土産品の中から、特に優秀な商品だけに与えられるアワードである。

「喜」は高喜商店が創業120周年を記念に、それまで培った伝統と技術の全てを注ぎ込んだ集大成の焼海苔である。原料には「推一等」が使用されている。推一等とは、佐賀県有明海で収穫される「初摘み」のうち、味・香り・色艶・食感の全てが優れる最高ランクの「推等級」の中から、さらに厳選を重ねて認められた“ トップオブザトップ” の海苔である。

今回、海苔好きの筆者が、海苔の魅力や美味しい食べ方について話を伺ってきた。

創業明治三十四年、海苔とともに123年

高喜商店の創業は明治34年(1901年)、今年で123年目を迎える老舗の海苔問屋である。当初は川崎で養殖された大師海苔を売り歩きしていたが、現在は東京湾を中心に、全国で生産された海苔を入札で仕入れ、一枚ずつ火入れして焼海苔に加工し、百貨店や寿司屋など飲食店への卸売りと、店頭や通販での小売りも行っている。

2019年には海苔の「焼き入れ」の工程を見学できる、本社直営のファクトリーショップを中原区木月に開設し、焼き立ての海苔を販売している。無垢の木材を使った落ち着いた空間のショップには、“ 海苔コンシェルジュ” が常駐しており、顧客の好みや用途に応じて、最適な産地やグレードを選んでもらえる。試食もできる海苔問屋は、筆者が知る限り川崎ではここだけだ。

確かな目利きによる「品質」、そして常に焼き立てを提供する「新鮮さ」が高喜商店の強みであり、こだわりでもある。

     プレミアム海苔ギフト「喜」

海苔問屋が語る海苔の魅力

高喜商店の高田久社長(以下「久社長」)と、高田保マネージャー(以下「保マネ」)のご兄弟に海苔の魅力を語ってもらった。

「海苔は日本古来の伝統食材です。繊細な海苔作りの仕事も受け継がれてきました。良い海苔はそのまま食べても美味しいですし、和食との相性が良いので、ご飯や蕎麦と一緒に食べると、それぞれの味と全体の美味しさを引き立て、食事を豊かにしてくれます」(久社長)。

主役を引き立てながら自らも輝く名バイプレーヤーと言えそうだ。
「海苔は当たり前に食卓に存在するためか、魅力が蔑ろにされているように思えます。例えば、産地による違いや種類はあまり知られていません。それを知ることできっと“ 新たな発見” があるはずなので、当たり前を当り前じゃない存在にしていきたいですね」(保マネ)。

確かに、九州有明海産の海苔は知っていても、それ以外の産地や違いはあまり知られていない。新たな発見を探るべく、深堀して話を聞いてみた。

-海苔の主な産地は?
「東日本ブロック(宮城、東京湾、三河・伊勢湾など)、瀬戸内ブロック(兵庫、岡山、広島など)、九州ブロック(福岡、熊本、佐賀など有明海)に分けられ、年間60億枚以上が生産されています」

-産地による違いとは?
「千葉や神奈川で作られる『東京湾産』は、噛み応えがあって味が濃く、水分を含んだ時に香りが立つのが特徴です。江戸前の寿司屋では東京湾産が好まれる傾向があります。佐賀海苔で有名な『有明海産』は、パリッとした食感、口どけの良さ、甘さが特徴です。人気が最も高く生産量も全国の6割を占めます。海苔網を海面に浮遊させて養殖する『瀬戸内海産』は、速い流れの中で育つので生地が厚く硬めなのが特徴です。巻いてから時間が経ってもしっかりしているので、オニギリや持ち帰り用の寿司、ラーメンなど汁物にも向いています」
メニューや食べるタイミングに応じて使い分けると、食事も海苔もより美味しくなるのだ。

-家食で一番美味しい海苔の食べ方は?
「良い鮭を使ったオニギリに巻いて食べると、一番美味しく感じられますね」(久社長)。
「卵かけご飯に海苔を巻いて食べるのも美味しいですよ」(保マネ)。
やはり、ご飯と一緒に食べるのが一番美味しいらしい。因みに、巻いてすぐに食べるなら『東京湾産』が最もご飯との相性が良いとのこと。また、海苔は吸湿性が非常に高いので、容器から取り出す際は、こまめに蓋をして欲しいそうだ。

-海苔の上手な買い方は?
「海苔は焼き立てが一番美味しく、時間が経つと風味が落ちてしまいますので、海苔専門店で購入するのがお勧めです。専門店は常に焼き立てを扱っているので、スーパーで売られているものとは、香りの立ちがまったく違いますよ」(久社長)。
「一般的には『秋摘み』が最も貴重とされていますが、近年では海水温の上昇の影響があるので、冷え込みが強くなる1月下旬から2月中旬頃の『新芽』がオススメです」(保マネ)。

なお、海苔の美味さは値段に比例するらしい。筆者も激安品を買って当たりを引いたためしがない。本当に美味しい海苔を食べたかったらケチってはいけない。

お二人にはほかにも、プロの目利きの観点、上手な焼き方、風味を逃さない保存方法など諸々話を伺った。全てを紹介したいが、紙面の都合で残念ながらここでは割愛させていただく。

不作の時代、海苔は貴重品になりつつある

海苔好きには気掛かりなことだが、2000年以降は海苔の生産量・品質ともに低下している。昨年は有明海産海苔の生産量が例年の半減、価格も2.5倍に高騰した。海苔が貴重品の時代になりつつあるらしい。業界を取り巻く環境が変化する中、高喜商店の事業戦略について久社長に伺った。

「生産量が落ち込むと、量を必要とする大手は品質の低下が避けられません。うちは漁師さんが育ててくれた良い海苔を、昔ながらのやり方で心を込めて焼き上げることで、大手との差別化を図る考えです」さらに続く。

「一方で、商品の開発や販売形態の変更など、マイナーチェンジにも取り組んでいます。例えば、SDGs を意識した詰め替え式の海苔容器や、海苔を横(長辺)から取り出すワイドチャックパッケージなど、これまでになかった包装容器をメーカーと共同開発しました。また、川崎フロンターレの天皇賞優勝を記念した『一番海苔』、川崎純情小町とのコラボ商品『小町のり』(ともにオフィシャル商品)、地元の介護事業所、農園、飲食店と連携した『香辛子海苔』など、ご当地商品の開発にも力を入れています」

老舗海苔問屋として、普遍的な価値を大切に維持する一方、メーカーや地元企業との連携により、絶え間なくマイナーチェンジを進める、攻めと守りの両利き戦略を展開中である。

最後に、久社長から教えてもらった海苔のとっておきの食べ方を紹介する。それは、板ワサの海苔巻きである。日本酒の最高の肴になるらしい。不作の時代、海苔がこれ以上高根の花になる前に、焼き立てを購入して是非お試しいただきたい。

川崎市産業振興会館
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