株式会社 KIWAMI 

食肉市場から朝締めの「もつ」を直接入手 どこにも負けない鮮度にこだわるムサコの超繁盛店

 代表取締役
阿波 耕平

事業内容 飲食店経営、食肉卸
企業名 株式会社 KIWAMI
創業 2014年(平成26年)
所在地 川崎市中原区新丸子町915-8 ライオンズビル武蔵小杉1階
電話 044-572-3700
従業員 55名(アルバイト含む)
代表 阿波 耕平(アワ コウヘイ)
URL https://r.gnavi.co.jp/7s5rf54b0000/

「もつ」とは、鳥獣肉の内臓のことであり、臓物(ぞうもつ)の“ もつ”が語源とされている。広義では、肝臓や心臓などの「赤もつ」、胃や腸の「白もつ」など臓物全体を指し、狭義では小腸を「もつ」または「ホルモン」と呼ぶらしい。

正肉と比べて価格も手頃なことから、庶民的な肉料理として親しまれているもつだが、現在のようにもつ料理が幅広く知られるようになったのは、今から30年前の「もつ鍋」の大ブームがきっかけと言われている。もつ鍋は福岡県を代表する郷土料理の一つだが、1990年代前半には、もつ鍋を提供する店舗が爆発的に全国に増加し魅力が広がった。

そして今、タワマンの街としてすっかり有名になった武蔵小杉界隈で、再びもつ料理が熱い注目を集めている。その火付け役が株式会社KIWAMI である。

部位ごとに異なる食感が楽しい「もつ刺」は必食

株式会社KIWAMI は、武蔵小杉を拠点に新鮮さが売りのもつ専門店「武蔵小杉のもつ屋 じゅうに12」、気軽に立ち寄れる炭火串焼き店「炭火串焼と旬野菜 きわみ」、北部市場の鮮魚を扱う和食店「鮮度の極み 魚もつ 武蔵小杉」の3店舗を運営する会社である。

これらの店舗で扱うもつは、他店と一味も二味も異なる。その理由は、もつの命とも言える“ 鮮度” にある。時間が経つと味も色も悪くなってしまうのだ。

KIWAMI では3つの店舗のほか、業者専門の内臓屠畜の一次卸「原田商店」を営んでおり、大黒の横浜食肉市場から直接、朝締めの牛肉と豚肉を仕入れている。それゆえ、どこにも負けない鮮度に絶対的な自信とこだわりを持っている。

数あるメニューの中でも、低温調理された「朝締めもつ刺」(右画像)は必食だ。部位ごとに異なる食感と想像を超える旨味が楽しめる。

こだわりは野菜にもある。八ヶ岳の麓に自社農園を保有しており、採れたての珍しい高原野菜を使った創作料理を提供している。例えば、黄色い花がついているズッキーニを、小指大のうちに収穫して花ごと天ぷらにしたり、こぶし大のカボチャの中をくり抜き、鳥肉と一緒にグラタンにして、切り取ったヘタを蓋にして提供したりと遊び心も満載だ。

     朝締めもつ刺

挫折と地獄の営業から成功の秘訣を掴む

株式会社KIWAMI の創業は2014年、新丸子東に「武蔵小杉のもつ屋 じゅうに12」をオープンしたことに始まる。代表取締役の阿波社長は北海道札幌市生まれ。その生い立ちが興味深い。

小学生の頃はクラスで一番目立つ存在で、学芸会の主役、応援団長、生徒会長と進んで立候補した。しかし、中学生になると徐々に、目立つことがカッコ悪いと思うように心境が変化する。元々何でも器用にこなすタイプで、中学・高校時代と運動部に所属すると、即座にレギュラーに選ばれた。しかし、器用ゆえに努力を怠り、卒業する年には必ずメンバーから外された。高校生にして早くも己の負け癖を自覚したと言う。

「仕事でベンチはあり得ない、専門学校から本気出す!」と心機一転、調理専門学校に入学してからは、時間を惜しんで中華料理の勉強にいそしんだ。休み時間には「話しかけるなオーラ」を身にまとい、敢えて周囲と距離を置くほどだった。

卒業後は、京王プラザホテルの日本一大きな中華レストラン「南園」で4年間修行した。南園と言えば、料理の鉄人として知られる周富徳氏や、譚彦彬氏など有名シェフが在籍した名店である。阿波社長はここで料理長を目指す。しかし、いくら努力しても実力でどうしても越えられない偉大な先輩たちが存在した。そして、ナンバーワンになれない限界を悟り、南園を去ったのだった。

南園時代の腕のいい先輩たちは、やがて独立するもいずれも失敗した。腕の良さ、料理の美味しさだけで経営は成り立たないことをその時に学んだ。

料理長の夢を絶たれた阿波社長は、飲食店情報のウェブサイト会社に転職し、営業職として飲食店を回った。“ テレアポ”、“ 飛び込み” と初めての営業はキツイことだらけだった。「今日テレアポ何件やったの?200件はマストで」、「受注するまで帰って来なくていいよ」、そんな言葉を本当に使う現場があるんだ!?と驚いたと当時を振り返っている。しかし、地獄のような日々の中で、「繁盛する店・しない店」を判断できるノウハウを掴んだのだった。

その秘訣について阿波社長に語ってもらった。
「あの時先輩たちは『自分がやりたいことをやった』から失敗したんだと気づきました。やはり『お客様が求めるもの』を提供しないと成功しないのだと。立地の良し悪しも重要です。2014年の創業当時の武蔵小杉は、タワマン建設が続き、映画「シンゴジラ」にも登場するなど“ 人気の街”として注目されていました。爆発的な売り上げは期待できなくても、失敗する店舗が少ないエリアであることも営業時代に掴んでいました。最初に開いたもつ屋 じゅうに12は、『売れる店より失敗しない店を作りたい』との思いを込めた小さな店ですが、赤字を出した月は一度もありません。」

もつ屋じゅうに12に限らず、KIWAMI が運営する店舗はいずれも、激戦地武蔵小杉で安定した人気の繁盛店である。さらに続けてくれた。
「『他の店よりちょっと安い』、『他の店より接客がちょっと良い』、『他の店より営業時間がちょっと長い』、それだけのことですが、失敗しない店づくりには大切です。」
“ お客様が求めるもの”、“ 立地の良し悪し”、“ 三つのちょっと” と、阿波社長は惜しみなく繁盛する店の秘訣を明かしてくれた。因みに阿波社長は近い将来、飲食店を元気にするノウハウを詰め込んだ本を上梓する計画だと言う。飲食店のバイブルとなることを期待したい。

豚レバーの冷凍商品化にチャレンジ

KIWAMI の今後の事業計画についても伺ってみた。

「2030年までに現在の3店舗から、30店舗まで拡張する計画です。エリアは武蔵小杉を拠点に西は横浜、東は新宿辺りまで。既にセントラルキッチンの開設を準備しています。」

武蔵小杉発の“ 第二次もつブーム” を巻き起こすのか今から楽しみだ。さらに、もつの魅力を広げる取り組みも並行して進められている。

「もつは人気食材ですが、豚レバーだけは冷凍調理に適さないため、多くが廃棄されてきました。しかし、低温調理後に液体で瞬間的に冷凍すると、解凍してもパサつかず美味しく食べられることが分かりました。そこで、晩酌の肴になるような豚レバーの冷凍食品化を計画しています。」

もつ好きにとってはたまらないアテになるに違いない。

阿波社長の目標は、30店舗の達成と同時に「外食アワード」を取得すること。その狙いは、飲食業界で働く人たちの社会的価値を高めることだと言う。そのためにも、料理の腕前や知識だけではなく、経営やマネジメントなど社員教育にも力を入れている。

最後に、KIWAMI 各店のお勧めメニューをもう一つだけ紹介する。それは「陳麻婆豆腐」。阿波社長が修行時代に、陳健一鉄人から直伝されたものだ。辣油の辛さと花椒の痺れ、そして食欲をそそるニンニクの香りには中毒性がある。もつ刺しとの相性もいいので、是非一緒にご賞味を。

川崎市産業振興会館
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