革素材のものづくり拠点PRODUCT BASE SKLOを展開する「革で楽しいことを考える会社」
齊藤 倫平
事業内容 | 皮革製品の企画・製造・販売、レザークラフト体験教室 |
企業名 | 株式会社 SKLO(スクロー) |
創業 | 2011年(平成23年)6月(株式会社ワールド光源からの社名変更は2018年11月) |
所在地 | 川崎市高津区溝口5-12-3 G108 MB1F |
電話 | 044-281-0366 |
従業員 | 4名 |
代表 | 齊藤 倫平(サイトウ ロンペイ) |
URL | https://www.pb-sklo.com |
当社は、東急田園都市線二子新地駅から徒歩7分の閑静な地域に、革工房PRODUCT BASE SKLO を運営している。その事業内容は、皮革製品の企画・製造・販売というものづくりと、レザークラフトワークショップというサービス提供である。今回、「革で楽しいことを考える会社 SKLO」について、代表取締役の齊藤倫平氏に話を伺った。
メディアに数多く取り上げられるユニークな製品とワークショップを展開
革工房PRODUCT BASE SKLO に入ると、沢山の革製のサイン入り色紙が目に入る。バラエティ番組やドラマ収録の現場として使用され、その際訪れた俳優やタレントのサインである。古い工場風の工房で、メディアが注目する製品とはどんなものなのか、大いに興味をそそられる。
当社が展開する主な商品・サービスをいくつか紹介する。1つ目はOEM 製品である。2011年の創業当初、知人の会社からの委託で革の裁断を行いつつ技術力を高めてきたが、最初のOEM は美容師が使うシザーケースだった。抜き型の製作以外は全て自社内で製作するというポリシーの下で多品種少量でも受注をうけてきた結果、フライパンの取手部分やカレンダーを綴じるパーツ、アーティストのファンクラブ向けグッズなど、革に直接関係無い企業や団体からの製品を数多く作っている。
2つ目は自社ブランド製品である。LIFESTYLE+LEATHER というブランドは、革を取り入れたぬくもりのある暮らしを提案するコンセプトの製品である。「財布やバッグなど競争相手が多いジャンルはやらずに、世の中に無いものを作りたかった」と齊藤社長は強調する。たとえばヒット商品となったイヤホンネックホルダーは、何らかの用事でイヤホンを耳から外す際に、いちいちイヤホンを手に持つのが面倒だったという自分自身の体験から、アイデアを思いついた。イヤホンが付いたままのホルダーを首にかけることで手間を省くという便利グッズである。その他、ペン立てやカップホルダーなどシンプルな作りで一つの便利機能を持った製品群がある。
3つ目は、レザークラフトワークショップ(体験教室)である。他でよくある「革製品のプロモーションのためのワークショップ」ではなく、あくまで「お客様に体験してもらうワークショップ」、すなわちコトづくりとしてのサービスメニューと位置付けた。これまで、数千人がワークショップで革製品作りを体験したが、近隣のお客だけではなく京都府福知山市役所の互助会から出張ワークショップを依頼されたこともあるそうだ。また、ワークショップは工房で行う以外にも、イベント出店や学童保育、企業の福利厚生として依頼を受け、出張対応もしている。
建築学を学んだ学生時代 建築事務所勤務を経てSKLOを創業
齊藤社長は1980年に川崎市高津区に生まれた。現在の革工房PRODUCT BASE SKLO のある建物は、かつて父親が経営するワールド光源という会社で、集魚灯や航空機用の特殊なランプを製作する工場であった。いかにも町工場っぽい内観はその名残である。父親のものづくりに取り組む姿を見て育った齊藤社長は、大学に進んで建築学を専攻した。卒業後は建築設計事務所に就職したが、公共事業に関わる設計業務で深夜残業が連日続くハードな環境だった。ある日、学生時代の先輩が経営する革工房の内装を頼まれた。休日に革工房に行き、革製品を作る現場を見ることが多くなった。建築設計の仕事は設計はできても作ることはできないが、革製品は企画、デザイン、製作、販売まですべてを行うことができることを知った。齊藤社長は、その一貫して取り組める仕事に魅力を感じ、建築事務所を退職し、2011年6月にSKLO をワールド光源の一部門として創業した。その後、ワールド光源の廃業に伴って、2018年11月に株式会社SKLO として独立させた。ちなみに、SKLO とはチェコ語で「ガラス」という意味で、父親がやっていた吹きガラスの工房の名前からとったそうである。
あらたなビジネス展開 「キャンプと革製品は相性がいい?」「キーホルダーの素材はサッカーボール?」
最近新たなビジネスを展開している当社だが、齊藤社長曰く「実はキャンプと革製品は相性がよい」と言う。自社ブランドのCAMPING+LEATHERは、コロナ禍で他人との接触を避けるため、家族で久しぶりにキャンプに行ったことをきっかけに企画した製品である。キャンプ用品は一般的に金属製や布製が多く、火や熱や切創に気を使わなければならないが、たとえばエプロンを革製にしたり、フライパンやナイフのカバーを革製にすることで、防火耐熱性や防護性に優れたキャンプ用品になると聞き、思わず膝を打った。2000℃以上にもなる溶接の火花を防護できるという革の防火耐熱性が注目され、川崎市内の溶接工場で当社の革製エプロンが使われている。
また、アップサイクルという取り組みも展開している。これまで300以上のプロジェクトを手がけてきたノウハウと革製品を製作するための機械を活用している。きっかけは相鉄線の車両の床材が余ってしまうので、キーホルダーにならないかと依頼を受けたことだった。床材はプラスチックやゴム系の物だったが、革を切断する機械で加工することができた。ここで齊藤社長は「革にこだわる必要はないのでは?」と思いついた。スポーツアップサイクルに取り組んでいる会社から、パンクして使えなくなったサッカーボールで何か作れないかという話があり、サッカー・アメフト・ラグビー・バスケット等のボ-ルも材料になるので、プロスポーツチームと連携して材料を調達し製品を作った。また、川崎フロンターレの試合開始前に開かれるSDGs のイベントで廃棄ボールを活用したキーホルダーのワークショップを行った。ワークショップを通してSDGs の普及に努めている。
これまで紹介した当社の取り組みを伺い、数多くのメディアが取り上げる理由が納得できたが、最後に、今後の抱負を齊藤社長に伺った。齊藤社長は「これからも商品企画のアイデアを活かし、新しいモノを生み出していきたい」と締めくくってくれた。今後の株式会社SKLOの新製品を楽しみに待ちたい。
(アップサイクルで生まれた製品) (イヤホンネックホルダー)