NPO法人 studioFLAT

障がい者に寄り添い信頼関係を構築 アーティスト支援で可能性広げる


代表者 

大平 暁
事業内容 障害者福祉事業
企業名 NPO 法人studioFLAT
創業 2019年(令和元年)5月
所在地 川崎市幸区北加瀬2-11-3 コトニアガーデン新川崎南棟3F
電話 044-200-4664
従業員 10名
代表 大平 暁(オオダイラ サトル)
URL https://studioflat.or.jp/npo-studioflat/

NPO 法人のstudioFLAT は、障がいを持つアーティストが制作した作品の価値を高める活動を続けている。過去には「非代替性トークン(NFT)」を活用し、デジタル市場に作品を発表。廃材を活用した創作活動でSDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みにも力を入れるなど、次世代型の活動でアーティストによる世界への発信をサポートしている。

起業の原点は障がい者施設での美術指導

studioFLAT は、障がい者施設で美術指導に当たり、利用者の創作活動を10年以上サポートしていた大平暁理事長が立ち上げた、ギャラリー併設の生活介護事業所だ。

生活介護事業所の場合、障がいのあるアーティストが描いた絵が売れたとしても、おおよそ7割が施設に入り、作家の手元に残るのは3割程度が一般的だという。大平代表はアーティストの経済的自立を目指し、2019年に法人化。20年1月には川崎市初となるギャラリー併設施設をオープン。もともと病院が入居するスペースだったところを活用し、生活介護事業所として運営している。
運営が始まって間もなく、長いコロナ禍に見舞われた。だが、大平代表は諦めず、360度カメラなどで作品を撮影し、インターネットギャラリーとして開放した。新聞などで取り上げられた結果、和歌山、仙台からの訪問もあり、1カ月ほどで60万円近くを売り上げたという。

プロのアート作品としてクオリティを保ち世界へ

大平代表が心がけているのは、障がいの有無に関係なく、作品はプロの美術品だと考え、クオリティを高く保つことだ。

ギャラリー併設の事業所を設けたことで、所属アーティストが落ち着いて活動に集中できるようになり、プロを意識して制作活動に取り組む人が増え、作品のクオリティが上がった。絵の具のノリ方、画面の密度も変化するなど、環境の変化が作品に表れた。

スタッフが10名に増えた効果も大きい。年齢の近いスタッフが寄り添うことで創作に安定感が加わった。また、テキスタイルを手掛けた経験を持つスタッフがサポートし、作風が変わってきたという。

アーティストを志す人間には資質や特性も求められるというが、アートとして昇華させプロの作家となるためには、障がいの有無に関係なく、その人の熱意やその能力を引き出すためのサポートも必要だ。「一生懸命やっていても、アート作品として世に送り出すためには必要なことがあるんです」と大平代表は話す。

「アート作品やデザインは、アーティストが一人で全部作らなければいけないという誤解があります。アートの現場では専門職であるキュレーターからのアドバイスを聞き入れるほか、アーティストは周りの環境など多方面の影響を受けます。しかし、障がいのある方の制作現場は違うイメージを持たれることがあるんです。障がいのあるアーティストだけは仙人みたいに一人で作っている、といったイメージが先行しています」と大平代表は説明する。

「作品を見たとき、欲しい、所有したいと感じてもらえることが大事。そこまで到達するよう責任を持つことを心がけています。具体的には、勢いだけでできたものを整え、不完全なものを補い、バランスを良くする。仕上げの部分を共同作業していきます」という。

今では、障がいがあるアーティストの関わるアートが多様な形で活躍している。特に活動の認知度が高まったのは、サブスクリプションのサービスだ。コロナ禍に対面で絵を見てもらう機会が減った時期、分譲マンションに作品を届けるサブスクリプションサービスを提供した。また、改ざんや複製が事実上不可能とされるブロックチェーン上にデータを記録するNFT を活用してデジタル市場で所属アーティストの作品を販売。障がいのあるアーティストの活躍の場を世界に広めた。

「第二アトリエ」構想も

今年は5周年の記念イベントを企画している。フォトブックの制作やVR の展示会の準備を進める。

SDGs にも積極的に取り組む。サッカーJ1の川崎フロンターレが提供の使用済みフラッグや、企業から出た布の廃棄物を裁断して「さをり織り」のアート作品として新たに制作し展示、商品化に挑戦する。

最近は、布材だけでなく、廃棄対象となった化粧品を使用した制作活動にも取り組む。アイシャドウやリップといった化粧品は、色も鮮やかでラメが含まれることも多い。これまでにない画材を見て、アーティストたちは新鮮な気持ちを得ているという。

「今後は障がいの有無に関係なく、作品の価値を感じてもらえるようにしたい」と大平代表は意気込む。そのための手段として「第二アトリエ(第二FLAT)」を設ける構想がある。「以前は、障がいのあるアーティストがアートを作っても見てもらうまでしかできませんでした。活動によって、障がいの有無に関係なくアート作品を世に生み出すことを実現しました。新しい世代の人が関わることで例えばAI やメタバース空間の構築など、これからの時代にふさわしい何かが起こるかもしれません」と語る。

  (左)アーティストたちの作品                                        (右)さをり織り設備

川崎市産業振興会館
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