「人速対応・精巧納品」。加工から組立まで地域ネットワークを活かした一貫体制で顧客が納得するモノづくりを推進
代表取締役 林哲郎
事業内容 | 切削加工全般 |
企業名 | 株式会社 高橋製作所 |
創業 | 1959年(昭和34年)8月 |
所在地 | 川崎市宮前区馬絹3-10-36 |
電話 | 044-852-3111 |
従業員 | 16名 |
代表 | 高橋 理仁(タカハシ マサヒト) |
URL | http://takahashi-works.co.jp/ |
「当社は、塩化ビニールなどプラスチック素材のパイプを切って、曲げて、接着して、高速道路向けの雨水排水管などを製作して販売しています。ライフラインを支えるインフラであり、ニッチな市場ですが絶対に無くてはならない存在だと自負しています」と林社長は胸を張る。
主要製品は、上下水道用硬質塩化ビニール継手、CCBOX(電線共同溝)・情報BOX(LANケーブル共同溝)用ベンド菅・特殊継手、超純水・薬液・飲料・食品輸送用PVDF配管システム、ユニットバスルーム・ユニットトイレのシステム配管である。PVDFとはポリフッ化ビニリデンの略称で、耐熱性、耐薬品性、難燃性等に優れたプラスチック素材である。
パイプを温めて曲げる機械など社内の機械を自分達で製作、改良を続けている
「当社は設立当時からパイプを必要な長さに切って接着剤でつなげる技術とノウハウを何も無い状態から蓄積してきました。そのため社内の機械を自分達で作っています。基本のドリルや溶接機は持っていましたが、パイプを温めて曲げる自社製の機械は今も改良を続けています。数年前に大口径パイプ切断機を自分達で製作しました。当社は取引先に工場を隠さずに見せています。一時期、大手企業が射出成形で内作に切り替えましたが、破損事故を起こして仕事が戻ってきました。パイプの加工は人間の手が命、簡単に真似できません。高額の機械を必要としない代わりに技能の承継や経験を伝えることが大事です」と林社長は熱く語る。
技能の承継や経験を伝えるには従業員の年代バランスが崩れていると感じた林社長は20代の若手従業員2名を中途採用した。1名は元アパレル販売員の女性だ。今後は高卒の女性を積極的に採用し、将来は障害者まで採用範囲を広げて明るく元気よく働ける会社を目指す。
「先代の父親が働いていたプラスチック加工屋の経営者が突然会社をたたむと言い出したため、先代が代表者となり残った従業員と当社を川崎区伊勢町で1963年に設立した。先代の知人で川崎市中小企業労務協会の設立者が住んでいた川崎市で創業しました。当時はまだ排水管に塩ビなどプラスチックが使われていない時代でした。東京オリンピック開催をきっかけに高速道路網が発展したおかげで上下水関係は土管からプラスチック菅に変わり、仕事が増えて1981年に川崎区浅野町に移転できました」と語る林社長は二代目だ。
林社長の前職は米国レコード会社のグラフィックデザイナー。小学校の時から米国にあこがれを持っており、家族にいきなり米国に行きたいと相談しても相手にされなかった。中学校で夢中になった硬式テニスのスポーツ推薦で高校に進学したが、授業ボイコットなど荒れる高校に嫌気がさした2年生の時に留学の夢を実現する。高校、大学、就職とロサンゼルスで9年を過ごし、日本に帰るつもりはなかった。
休暇を取って帰国した際、先代の父親から「後継者がいないので会社を手伝って欲しい。どうするかは自分で決めなさい」と言われる。悩んだ末にテニス顧問の先生や友人に相談して1991年に覚悟を決めて入社した。
個人や組織のコミュニケーション能力を向上する研修を従業員全員で受講する
「プラスチック製配管部品の市場は狭くニッチですが、上下水道・電力通信・高架橋梁等の雨水対策などのライフラインや食品飲料・エレクトロニクス・医療・水処理のプラントを手掛けており、絶対なくてならない存在だと自負しています。安全安心を提供するために我々の製品は欠かせません。世の中のため社会のためになることを従業員が自覚して、技術的に精神的に日々努力しています」と林社長は語る。
経営理念は「生かされる、育てられる企業になる。社会のため、お客様のため、従業員のためが会社のため、となるサイクルを実現する。お客様の期待の上を行け。少数精鋭となる」を掲げる。決して一攫千金を狙える仕事ではない。大きく売るのではなく、長く続く会社にするために常に新しいものを追い求めている。従業員の規模は「暇な時に合わせた人員配置」、忙しい時に協力し合うために会社の仕事を全員ができるように多能工を目指している。製品ごとに分かれている部門間の壁を取り払って横の連携により助け合っている。個人や組織のコミュニケーション能力を向上する研修“エマジェネティクス・プロファイル”を従業員全員で受講する計画だ。従業員による情報発信のために月曜日の全体朝礼では当番が仕事やプライベートを自由に話し、その後に林社長も話をする。昼休み後、火曜から金曜日のラジオ体操後に部門別に集まり情報を共有している。
PEやPP製パイプの配管材を上下水道で使うための技術の習得を目指す
「阪神淡路大震災後には高速道路の柱に鉄板を巻く補強工事の時に排水管が撤去されました。重要な役割があるのに補修工事を請け負うゼネコンから排水管の工事予定も予算もないと言われました。結局、塗装工事の予算を削って排水管を工事しました。塗装工事の足場を使うようにと指示があり、現場に行くと足場が無く、高所作業車を手配し費用を負担したこともありました。忙しいだけで大赤字でした。また、中国の大連工場も借金だらけで経営を圧迫していました。余剰人員も抱えて気が付いたら借金をどうやって返すのかという“茹でガエル”状態でした」と林社長は苦しかった時代を振り返る。
会社の資金繰りが苦しいなか当時の取引先や総務部長から世代交代は早いと言われたが、先代が「こういう時こそ腕が試される」と1996年に事業承継した。林社長は自主再建に向けて、借入金の返済条件変更、余剰人員のリストラ、排水管工事や中国からの撤退を断行した結果3年で黒字化、その後は黒字を継続している。
今後強化したい分野は、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)製パイプの配管材を上下水道管に応用すること。PE製パイプは地震に強く変形しても破壊しないので地中内の配管に採用される見通しだ。そこで、PEやPP製パイプの加工技術の習得を目指す。
従業員が自分達の仕事に自信を持ってもらうために何をすべきかが課題だ。従業員は経営者の鏡であり会社としての姿勢が反映される。今後は従業員のモチベーションを向上するために働き方改革として残業の削減や健康診断後の指導など会社と従業員を守る制度を充実する。
モチベーションの向上には健康が大事で、全従業員が健康になるように努力して“健康企業”を目指す。将来ビジョンはダイバーシティ(多様性)、性別・障害・国籍などこの世に存在する差別の無い会社となることが林社長の夢だ。
当社製品「高速道路向けプラスチック製雨水排水管」