GOKOとまとむら 株式会社(旧GOKOアグリファクトリ)

工業(カメラ)から農業(トマト)へ!それでも変わらない合理性の追求

GOKOカメラ 代表写真
社長 後藤 佳子
事業内容 先進農法によるトマト生産
企業名 GOKOとまとむら 株式会社(旧GOKOアグリファクトリ)
創業 2002年(平成14年)12月
所在地 〒212-0024 川崎市幸区塚越3-380(川崎オフィス)
電話 044-544-1312
FAX 044-555-6157
従業員 35名
代表 後藤 佳子 (ゴトウ ヨシコ)
資本金 5250万円
URL http://www.gokotomato.com/

*GOKOアグリファクトリ㈱はGOKOカメラ㈱に吸収合併し、GOKOカメラ㈱ アグリ事業部となりました。その後、2020年に会社新設分社が行われ、新会社「GOKOとまとむら㈱」が設立されました。
GOKOカメラ(旧社名 三星光機)をご存知だろうか。低価格で高性能なコンパクトカメラを開発、世界中に普及させ、1993年には月産45万台という世界一のカメラ生産量を誇った企業である。このような世界に冠たるカメラメーカーが、2002年にGOKOアグリファクトリ㈱を設立してトマト生産に乗り出した。「日本の農業の自給率低下を見て、合理性の追求をトマトでもやってみたいと思った」という会長の思いをしっかりと受け継ぐ後藤 佳子社長。その穏やかな表情はやる気に満ち溢れ、輝いている。

世界トップシェアから市場ゼロという激変を二度にわたって経験

GOKOカメラはコンパクトカメラ事業に参入する以前、8ミリ編集機でも85%という世界トップシェアを経験している。しかしながらホームビデオの台頭により市場は消滅、その後、編集機の後継としてコンパクトカメラの開発、生産を主力事業として立ち上げ、世界のトップメーカーとなった。しかし皮肉なことに8ミリの場合と同じく、デジタルカメラの普及により市場が激減するという“トップからゼロ”の荒波を2回も経験している。
創業者であり現会長である後藤正氏は「デジカメはカメラに非ず。電気製品なので当社が手を出すべきものではない」との戦略的判断をし、フィルム用コンパクトカメラ市場から撤退を決め、規模を縮小して産業用カメラや特殊カメラを中心とした事業展開に的を絞った。かなり思い切った決断だが、現在のデジカメ市場において名立たるカメラメーカーが撤退を余儀なくされ、家電メーカーが台頭しているという現実を見れば、当時の後藤会長の経営手腕を如実に物語る逸話である。
蓄積された資本を有効活用し、社会的意義のあるビジネスへの進出を決定、その具体的形態が“農業への進出”であった。将来の日本の農作物の生産手段の抜本的改善のために、「徹底した合理化によって、少人数で日本人の嗜好に合った安全な農作物を出来るだけ多く作る」という結論に至ったのである。生産拠点を海外に移転させたことにより、空き地となっていたカメラ工場跡地のある長野県伊那地区の中川村は、南アルプス連邦を眼前に、中央アルプスを背後に臨み、ミネラル豊富な天然水があった。ここでトマトを作ることに決めた。トマトには、流通量の多さ、差別化しやすい、加工品の種類が多いなど工業製品に類似した利点があったのである。
高齢者用の福祉事業という案もあったが、最終的にはヨーロッパで開発された“オランダ式トマト養液栽培法”を採用し、2002年に10億円を投資して中川村に2棟で7000坪のガラスハウスを建設した。ガラスハウス内の暖房と換気で温度調節し、ロックウールを培地とする養液栽培法で年間700トン近い生食用トマトを生産している。
初年度は外部からの技術指導を受けたが、3年後にはカメラ事業の統括部長をトマト生産の工場長に抜擢し、工場内の温・湿度ならびにトマト生育に必要なすべての条件をコンピュータ管理し、独自の最適状態を追求した。「農作物なので天候に左右されることは避けられません。だけど簡単にお天道様を理由にしたくないというのが我々の姿勢です」それは既成概念のない素人であったからこそ、そして約50年にわたり精密機器の世界で常に新しい技術開発を追求してきたという経験を持つからこそ出来ることであったのだろう。その結果として初年度から若干ながら利益を計上、間もなく、“樹なり”で赤く完熟した美味しいトマトを、翌日にはお客様の食卓へとお届けできるようになったのである。

ポイントシステムによる毎日決算と現場管理

現会長の3姉妹の長女として生まれた後藤 佳子社長は、大学卒業後、いちオペレーターとしてGOKOカメラに入社した。その後子育てのため15年間現場を離れたのち経営者の立場で復帰したのが10年程前である。創業以来の会社3原則“経営者として、また会社として一切の見栄を排す”“自らで考案した製品のみを作り、徹底した合理化を推進する”“無借金経営を原則とし、常に余裕ある経営を維持する”との基本原則が変わっていないことを復帰初日に改めて感じ、すんなりと会社に入り込むことができた。80歳代になった会長に代わって社長職についたが、「まだまだ社長業を勉強している段階に過ぎない、失敗を繰り返す必要はない、いかに先代から学ぶかです。背伸びせず力まず、現場の意見が吸い上げられるようにしたい」と、もともとGOKOカメラにおいて会長の作った品質向上、合理化に関するアイディアの提案制度を改めて採用した。
「大事なのは知識ではなく、業界の常識に囚われずに独自の品質管理を行い、常にその採算性を見ること」との信念のもとに農業にも工業的感覚が必要と考え、独自のポイントシステムを採用している。各製品付加価値額と全社コスト配賦額をポイント計算して、製品毎に1日単位で簡易決算して損益状況を管理する仕組みである。トマトは季節により収穫量、燃料代などのコストが大きく異なる為、1日単位で損益を掴みつつ状況に応じて予算や農場の目標値を適時修正することが重要となる。農場のポイント集計結果は当日中の日報にて本社に報告され、翌朝農場にフィードバックされ、昼休みには農場の全員がその結果を確認することが出来る。このポイントによって社内の全てが動いており、一定以上のポイントが獲得できれば従業員にも報酬として還元され、会社と従業員双方にメリットが出る仕組みだ。「やるぞという気持ちは取り組み方を変え、取り組みを変えれば結果も変わります」と後藤社長は語る。

日本の農業に貢献するGOKO方式の開発が将来の目標

農業の奥深さも感じている。「やればやるほど大変になってきました。安心かつ安全な食べ物、自分が食べたい、お勧めしたいものを提供することがいかに大変か、収穫量と出荷予定量のバランスがとれずに欠品するなど悩みも多いが、限りない挑戦に値する大変やりがいのある仕事」と後藤社長は言う。
今はオランダの生産方式を採用しているが、当社の目標は、徹底した合理化と改善によって日本農業の将来に資するGOKO方式の開発にある。トレサビリティの追及による徹底した食の安全性の確保、新しいことにチャレンジしていく姿勢である。
後藤社長には「トマト農場、ケチャップやジュースの加工場そしてトマト料理のレストランが一体となった“GOKOとまとむら”を作り、多くの方に気軽にお立ち寄りいただける楽しい場所にしたい」という夢がある。当社は農業という新しいフィールドを得て、50年前の川崎で木造社屋から創業した時と同じように、アイディアや改善を出し続けながらエネルギーいっぱい燃え続けている。

川崎市産業振興会館
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