株式会社 菅原研究所

「小さくてもひときわ輝く会社」世界ブランドを目指す測定器メーカー

菅原研究所 代表写真
社長 菅原 重信
事業内容 工業用計測機器の製造及び販売
企業名 株式会社 菅原研究所
創業 1954年(昭和29年)8月
所在地 〒215-0034 川崎市麻生区南黒川8-2
電話 044-989-7311
FAX 044-989-7337
従業員 60名
代表 菅原 重信 (スガワラ シゲノブ)
資本金 3520万円
URL http://www.sugawara-labs.co.jp/

(株)菅原研究所はストロボスコープ、ベアリング検査機器、モータ性能測定器を設計・製造・販売する測定器メーカーである。多くの測定器メーカーが電気系の技術に偏りがちなのに対し、当社は機械的な技術にも強く、製品開発のために必要なものは何でも自前の試作工場で作ってしまう。「ストロボスコープのキーパーツであり、ガラス加工技術が必要な“キセノンランプ”も、設計から製作まで社内で完結してしまいます」という菅原 重信社長には自信がうかがえた。

モーションと回転の測定を追求する

「近代ストロボの父」といわれるエジャートン博士は、稲妻が光る瞬間、激しく降っていた雨粒が止まって見えることに気がついた。当社の主力商品であるストロボスコープとは、閃光を一定間隔で連続的に点滅させることにより目の残像効果を利用して、高速で運動する物体を「止めないで、止めて見る」測定技術である。これによって例えば百万分の1秒の瞬間を静止画像に捉えることが可能となる。超音速域の動体観察に対応するために開発された当社のストロボスコープのフラッシュ閃光時間については、最速40ナノセコンド(2500万分の1秒)という驚異的な性能を実現しており、インクジェット飛翔状態の観察、ビデオ磁気ヘッドの振れ観察などの工業検査のほか、バイオテクノロジーにおける励起用光源などにも応用されている。また、当社では秒100万コマといった超高速度ビデオカメラの補助光源に使用される長パルス型のユニークなストロボも製造している(特許出願済み)。
回転する部分がある機器に必ず存在するものがベアリングである。軸を正確かつ滑らかに回転させ、摩擦による無駄なエネルギー損失や発熱などを防ぐためのボールベアリングには、表面の凹凸を10万分の1ミリ以下という超精密加工が施された、真円度の高い鋼球が使用されている。日本は精密ベアリングの製造では世界トップクラスの技術を持っているが、これらの技術を支えるものが当社の検査機器であるアンデロンメータ(騒音、振動検査)やウェービメータ(ボール回転時のうねり量測定)である。当社は自社製の精密流体軸受けや速度センサの使用により0.1アンデロン域まで測定可能としており、これらの技術は工業用機器のみならず、いまや家電製品の静音化や自動車の静粛化にも欠かせない技術となっている。
家電製品や情報通信機器の小型化、省電力化に伴って小型モータの役割が増え、当社のモータ性能測定器も需要を増している。モータのトルク・回転ムラによる振動や騒音の解消や、高性能モータの開発にあたって欠かせない検査技術であるが、長年の経験に基づいた、各々のモータ特性を熟知したうえでの測定器の提供が要求される。
このように当社は「モーション」と「回転」を計るため、独自のメカトロニクス技術を活かした特徴ある製品を作っている。そしてストロボスコープ、ベアリング検査機器、モータ性能測定器いずれについてもキーパーツを自社製作できることを強みとし、多様なニーズにも応えられることで主要顧客には業界最先端のメーカーが名を連ねている。
「当社の製品のオリジナルなアイディアは米国のものです。しかし米国製品の品質に不満を持っている顧客が多いと聞き、それならば我が社でと手掛けているうちに技術力がつきました。今ではオリジナルより良い製品を作りこんでいるという自負があります。とくにベアリング検査機器については世界一だと思います」と菅原社長は胸を張る。

父親の技術を引き継いで事業を発展

創業者である菅原重二氏は、早稲田大学の理工学部機械工学科を卒業したのち、配属された海軍で航空技術士官としてますます技術に磨きをかけたという。終戦後はサラリーマン生活をしていたが、メカトロニクスに造詣が深かった氏は、大学時代の恩師の薦めでストロボスコープを作るべく1954年に東京新宿区に菅原研究所を設立した。
「技術には、特徴がなければならない」が口癖であったという同氏は、その後も新製品としてボールベアリングの振動検査器や、小型モータ用動力計トルクメータなどを次々と開発して当社の技術的基礎を築いた。当時それらの商品は外国製が主流であったが、海軍で培った技術と経験を活かし、改良を重ね新製品として世に送り出していったのである。これらの技術が認められて1982年には科学技術長官賞を、1984年には藍綬褒章を受賞している。
現社長の菅原重信氏は1998年に47歳で社長の職を父親より引き継いだ。社長として最初の仕事は赤字であった経営の改善である。社員への経営状況の公開や、生産方式の改善を含めいろいろな改革をしたが、「一番は、製品の技術に相応しい価格で売るようにしたことです、その結果、翌期には黒字になったのです、それ以来10年たった今でも黒字を続けています」と気負いもなく言うものの、技術に対する目利きと自信がなければ出ないことである。先代は技術開発に熱意を燃やし当社の基礎を築いたが、現社長はまた違った面から経営を見直して当社を発展させたのである。

企業理念の達成のために

当社では検査機器の製造販売だけでなく、お客様のモータやベアリングを預かり、自社の検査器でデータ取りをするサービスを提供している。「当社に何が求められているのかを技術者が直接、ユーザの生の声を聞く良い機会であり、大切にしていきたい」と菅原社長は言う。これらの積み重ねが当社の技術力と提案力の向上につながると見ている。
今後の課題は、ストロボスコープの応用分野を拡大することである。最近は咽喉の振動の測定、紫外線照射など医療や美容など、今まで考えてもみなかったところに利用されている。このような応用分野を考えていくことがさらにストロボスコープの需要を広げることになる。また、実力世界一のベアリング検査機器を世界ブランドとすべく、手始めに中国の市場開拓を図ろうと動き出している。ベアリングは機械の精度を決定する重要なファクターである。それゆえ、いずれ中国でも精度の高いベアリングが要求されるようになり、当社の検査機器が必要となってくると菅原社長は見ている。「性能には絶対の自信があります、あとは知名度を上げるだけです」と意欲を燃やす。企業理念にある“小さくてもひときわ輝く会社”として“スガワラ”が世界ブランドになる日も近い。

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