厚付け・超大型・難素材の無電解ニッケルめっきのリーディング企業
社長 石田 幸兒
事業内容 | 半導体製造装置関連の精密・厚付け・大型無電解ニッケルめっき セラミックス無電解ニッケルめっき、エンジンシリンダー硬質クロムめっき |
企業名 | 株式会社 ブラザー |
創業 | 1955年(昭和30年)3月 |
所在地 | 〒210-0854 川崎市川崎区浅野町3-8 |
電話 | 044-322-7571 |
FAX | 044-322-7780 |
従業員 | 70名 |
代表 | 代表取締役会長 石田 孝 氏(イシダ タカシ) 代表取締役社長 石田 幸兒 氏(イシダ コウジ) |
資本金 | 2000万円 |
URL | http://www.brotherplating.co.jp/ |
川崎区浅野町の川崎市メッキ工業団地のほぼ中央、株式会社ブラザーの正門の前に立つと、本社工場の正面に掲げられた大きな看板「RELIABILITY AND CREATIVITY」が迎えてくれる。その意味するところである「“信頼”と“創造”」は、当社の創業以来の経営理念と経営姿勢を現わしている。
創業以来、顧客ニーズ実現のため“創造”し、築いた“信頼”の歴史
(株)ブラザーの歴史は1955年に川崎区で、石田孝氏(現会長)が自動車部品の表面処理工場として創業したことに始まる。当時はまだ自動車産業の黎明期であり、先見の明であったと思われる。以降需要の拡大に伴い横浜工場を新設し、硬質クロムめっき、長尺円筒研削加工と業容を拡大した。1978年には、めっきむらが無く厚付けが可能で、顧客ニーズが高いが技術的課題の多かった無電解ニッケルめっきの操業を開始している。
現在の主力工場である本社工場(後に第二工場も新設)は、川崎市のメッキ工業団地招聘に応じて1984年に進出、生産の徹底合理化と無公害化を実現しつつ、さらに戦略経営情報システム(財務管理や生産管理など)の構築にも挑戦し現在の経営基盤を築いた。(現在の川崎市メッキ工業協同組合の理事長は、石田 孝・現会長が務めている。)
その後、半導体や液晶などの製造装置の大型化・高精密化を支える精密・長尺・大物めっきのニーズを先取りし、1991年には高さ2mの大型無電解ニッケルめっき設備を新設し、これを2000年には3mにかさ上げ、さらに2006年には、規模で4m×2m×3m、最大荷重10tまで対応できる国内最大級の超大型無電解ニッケルめっき専用ラインを竣工している。これによって鉄鋼・銅・ステンレスなどの他に、従来はめっき槽に入らず塗装で防錆していた大型鋳物もめっきが可能となった。ほぼ同時期にこれも国内最大級のアルミ用2m×1m×3m無電解ニッケルめっき設備も稼働した。
当社の“超大型無電解ニッケルめっき(メガニッケルと命名)”は、その高い技術力を評価され、第5回川崎ものづくりブランドとして認定を受けている。
無電解ニッケルめっきの特徴を生かし、難素材へも挑戦を続ける
身の回りにも多くみられる“めっき”は、素材の物性機能を高めるために行われている。特に高硬度、耐摩耗性、耐腐食性等々が求められる工業用製品への電気めっきは、硬質クロムめっきが主流であり、当社も農業用エンジンシリンダーへの硬質クロムめっきがビジネスの一つの柱となっている。しかし一般的に電気めっきは、めっき材(陽極)と素材(陰極)の位置、角度、距離などで微妙にめっきむらが発生し、均一な厚付けめっきを得ることが難しい。
一方無電解めっきは化学的還元作用により、素材表面にめっき金属を析出させる方法で、複雑な形状の素材へも均一で厚付けが可能である。また厚付けが可能なため、強い耐腐食性が求められる部品も、ステンレスに変えて安い鉄材で代替可能であり、客先のコストダウンにつながる。しかし無電解ニッケルめっきは還元剤のリンの含有率で物性(硬度、耐食性、磁性など)が左右され、かつ、めっき液のリフレッシュ管理と温度調節が非常に難しく、大型になればなるほどその困難性が増すが、これを克服した管理ノウハウが当社の大きな特徴(強み)の一つである。
当社は長年、関東学院大学表面工学研究所との連携で難素材へのめっき処理にも挑戦している。発塵を抑えクリーン環境に耐える大型カーボンへの無電解ニッケルめっきや、導電性の確保と金属同様の精密加工を可能としたセラミックス上への厚付け均一無電解ニッケルめっき、さらに電気接点の確保や耐久性を向上させる大型ガラス基盤への無電解ニッケルめっき等に成功している。
“経営の基本はスピード”を実践し、社員とともに成長を続ける企業
現社長の石田幸兒氏は、1989年に(株)ブラザーに入社、2000年には44歳で代表取締役社長へ就任している。社長就任時に会長から言われたのは、(1)大きな声で理路整然と、(2)身だしなみに気を配り、(3)常に健康に留意すること、であった。トップとして率先して社員の手本となれ!とのことである。
「経営の基本はスピードです。トップとしてタイミングを見計らった決断・実行に努め、社員からの報告には素早いフィードバックを与え、アクションの迅速を促しています」という。
その一例として、当時売上の6割を占めていた半導体製造装置の部品に対するめっき技術の打ち合わせで、ISOの考え方や用語が頻発し、「ISOを知らなければお得意様とも十分な意思疎通や高品質の納品が出来ない」と悟った社長は、早速社内に全社規模のISO推進チームを結成した。2003年に本社工場でISO9001認証取得、翌2004年に同ISO14001認証取得を達成した。この活動は社員一同の大変な努力を必要としたが、全社員の一体感や帰属意識などが大いに高まったと言う。「2009年は品質、2010年は環境と2度目の更新時期を迎えるが、自信があります」と胸を張る。メッキ業界で品質と環境をダブル取得しているところは少ない。
社員教育には、このISOを中心として4つのコース(ISO、営業、コンピュータ、一般教養)を設け、本社敷地の一角に“STAFF TRAINING ROOM”の看板を掲げた研修室を建てて、社外講師や社内のマスター取得者などで、連日学習会を開催している。さらに“鉄は熱いうちに打て”、新入社員教育は徹底しているとのこと。座学だけでなく、社会人としての礼儀を重んじているという石田社長の言葉通り、すれ違う従業員からは礼儀正しく気持ちよい挨拶の声があがる。
家庭では奥様と一姫二太郎に囲まれ、お酒と読書、音楽鑑賞などで、厳しい経済状況でのストレスが解消されていると言う石田社長。社員とともに成長を続ける企業、そして新しいことに挑戦を続ける石田社長の手腕が注目される。