株式会社 フューチュアテック

川崎から世界に発信する硬度計のトップメーカー

フューチュアテック 代表写真
社長 松澤 健次
事業内容 硬度計その他精密機器及び関連機器・部品の製造・販売
企業名 株式会社 フューチュアテック
創業 1995年(平成7年)2月
所在地 〒210-0804 川崎市川崎区藤崎3-5-1 トークピア川崎ビル
電話 044-270-5789
FAX 044-266-6779
従業員 30名
代表 松澤 健次 (マツザワ ケンジ)
資本金 2,470万円
URL http://www.ft-hardness.com/

硬度計専門メーカーである株式会社 フューチュアテックは、川崎発のナショナルブランドを持つ世界的企業である。国内トップシェアを誇り、海外35カ国の代理店を通じて40カ国以上に納入している。自動車、鉄道業界などを中心にユーザーからの信頼は厚く、顧客ニーズを先取りした新規製品への取り組みは他社の追随を許さない。

飛び込み営業で培った販売網と商社を使わない海外戦略

㈱フューチュアテックの創業は1995年と意外に新しい。しかし、そのルーツは戦後の硬度計トップメーカーと言われた㈱明石製作所の下請けとして、松澤社長の父・栄七氏が松澤精機㈱を創業したことにまで遡る。やがて松澤精機は、下請けからメーカーとして自ら硬度計の開発・製造を開始。栄七氏が開発・製造に専念し、営業部長を任されていた松澤社長が営業担当として日本中・世界中を走り回っていた。「当時業界は過当競争にあり、一流企業に受け入れてもらうにはかなり長い時間がかかった」と松澤社長は振り返る。
1995年、松澤社長は、松澤精機の硬度計を販売する会社として、東京都品川区で㈱フューチュアテックを創業。しかし、その矢先に、松澤精機が倒産。売るものがなくなったフューチュアテックは、松澤精機の技術とノウハウを引き継ぐ形で、メーカーとして再スタートを切ることとなった。
フューチュアテックは後発メーカーとして厳しい再出発をせざるを得なかったが、松澤精機時代からの知名度のおかげで、早くから業界内で頭角を表し、日本を代表する自動車メーカーや、その1次、2次の下請企業への製品の納入が進み、早々と国内市場での地位を築くことに成功した。大学卒業後の商社勤務から一貫して営業畑の松澤社長。松澤精機時代、父親が開発・製造した製品をライトバンに積み、自らハンドルを握って全国を奔走した。その経験を、フューチュアテックの営業担当者たちが引き継ぎ、同じように今日も全国を走り回っている。
その一方で、松澤社長は、松澤精機時代から目を向けていた海外への販売を、フューチュアテックでも積極的に展開している。商社勤務で培った海外営業の経験を生かし、社長自ら単身で米国、欧州、東南アジアを飛び回った。「商社は敢えて使わず、現地の展示会などを通じて、日本のモノづくりを理解する信頼足り得る代理店を選んできた。きめ細かいサービスを続け、現地で信頼を得るには、モノを売りっぱなしにする商社では続かない」との理由だ。代理店は日本で必ず研修を受けるか、技術者が現地で技術指導を行う。代理店に対するサポート体制にも配慮している。技術的な問い合わせや難しいクレームは本社の貿易部員が英語や中国語で対応する。「代理店との密接な関係を築くことが現地の顧客へのサービスにもつながる。代理店からの要望は、グローバル仕様での製品開発の重要な情報にもなっている」と松澤社長は言う。
1999年、米国の大手分析機器メーカー「LECO」に全硬度計のOEM供給をスタートした。2006年にはタイ・バンコクに保守・サービス拠点を設立、翌年にはイタリア・ミラノに「ヨーロッパ駐在員事務所」を開設し、アジア、欧州圏を強化。さらに10年には中国担当の営業要員として新卒の中国人留学生の採用を内定しており、中国市場への本格進出に備えている。

アフターサービスが重要

硬度計とは、工業製品の製造過程で重要となる、金属材料の硬さ測定に使われる試験機。特に安全性の問われる自動車や鉄道、航空宇宙関連の開発には絶対に欠かせない機械だ。たとえば自動車1台あたりに採用される部品は2万~3万点あり、そのすべてが試験対象となる。部品の開発段階で試験が行われるため、完成車メーカーだけでなく、部品メーカーにも必ず設備されるため、顧客のすそ野は幅広い。
フューチュアテックでは、専門メーカーとして各種試験法に応じた製品をそろえ、ロードセル式や全自動システムなど顧客仕様に沿った製品ラインナップの充実を図っている。最も精密な試験である、ビッカース硬さ試験用の試料を作製する、切断機をはじめ埋込機、研磨機も用意しており、硬さ試験をトータルでカバーできる体制を構築し、きめ細かいサービスを提供できるのも大きな強みの一つだ。また、早くから台湾の協力企業からの調達を進め、2006年に現地と合弁会社を設立。日本は開発、組立・検査に特化し、トータルでコストダウンを図っている。 松澤社長は「試験機は20年~30年という長寿命の製品。それだけにアフターサービス・保守は大切な仕事になる。顧客との信頼を築くとともに、現場からのニーズを吸い上げていくことが次の商品開発に結び付く」と地道な活動の重要性を強調する。すでに国内では大手自動車メーカーをはじめ全国に顧客を持ち、国内シェアはトップクラス。国外にも販売網を広げ、売上高に占める海外比率は実に約70%にも達する。「顧客の海外移転に加え、中国、インド、ロシア、ブラジルといった新興市場の拡大が進む中、この傾向はますます高まる」と海外市場に対する視線は熱い。

中国、インドがこれからの重点市場

川崎市に移転してきたのは2002年。以降、同社は順調に業績を向上させてきた。最近の円高も「部品調達はドル建てのため、影響はそれほどない」という。リーマンショックによる世界同時不況の影響はあるが、09年末から中国、インド向けの受注が動き始めてきた。「試験機は設備投資の中でもギリギリになるまで発注が決まらない商品。これが昨年あたりから動き始めているということは、それだけ中国、インドの自動車を中心とした需要が本格化し始めている証拠だ」と景気回復への動きを示唆する。 ただ、中国市場への期待とは裏腹に、現地メーカーのダンピングやコピー商品への危機感もある。「すでにコピー商品は出回っている。中国にマネのできない製品を投入し、市場をどれだけリードしていけるかが今後の課題」と松澤社長は言う。すでに硬さ試験の自動化ニーズに応えたシステムなどを投入。さらに最近では新製品の「ロードセル式マルチビッカース硬度計」が注目されている。荷重や材料によって異なる試験方法の硬度計を1台に合体させた製品だ。ロードセル式負荷機構の採用で、幅広い荷重領域を安定して計測でき、試験荷重も50g~50㎏と幅広く、マイクロからマクロまでの領域を1台でカバーできる。平成21年度の「第6回川崎ものづくりブランド」の認定製品にも選ばれており、市場開拓の戦略商品として期待がかかる。「“Maid in Japan”は今でも世界で通用するブランド。その名誉を汚さぬよう、当社はいつでも日の丸を背負った日本代表という意識で世界に出ています」と語る松澤社長の体内には、ものづくり大国日本の血が流れている。

川崎市産業振興会館
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