川崎花卉園芸 株式会社

マーケットインの発想で流通を変革する花き業界のイノベーター

川崎花卉園芸 代表写真
社長 柴崎 太喜一
事業内容 花きの受託販売事業、切花受託販売卸売業、鉢物受託販売卸売業 他
企業名 川崎花卉園芸 株式会社
創業 1960年(昭和35年)5月
所在地 川崎市宮前区水沢1-1-1
電話 044-975-2714
代表 柴崎 太喜一 (シバザキ タキカズ)
URL http://www.kawasakikaki.co.jp

川崎花卉園芸は、観賞用植物(花き)の卸売会社である。同社には「市場の定温庫化」等の“業界初”となる取り組みが数多くある。「女性セリ人の育成」にも力を入れ、2012年3月時点で3名がセリ人資格を取得し、女性の感性と細やかさを生かした場づくりをしている。同社代表の柴崎太喜一氏は、今も勉強し続けている経営理論を伝統的な業界に注入してイノベーションを起こしている。

花屋の四代目が電子商取引のシステム化を先導した

柴崎氏の一族は、東京都中央区八丁堀の花屋を発祥として、京橋生花地方卸売市場を経営していた。四代目にあたる柴崎氏は、1986年の父の死により29歳の若さで代表となり指揮を振るっていた。その3年後、東京の花き業界に画期的な変化が訪れた。1989年、40近くあった民営の小さな花きの地方卸売市場が東京都の運営する5つの中央卸売市場に統合・集約され、流通の合理化が図られたのだ。京橋市場は、その中の一つである大田市場内の卸として新設された社大田花きに統合・再編され、柴崎氏は営業担当取締役として立ち上げに奔走した。
大田花きは1997年に上場することになるが、柴崎氏は会社での役割に安住せず、今後の時代を読み解き、花きの電子商取引システムの構想を抱いていた。「生産者は、自分の子供のように育てた花を、適正価格ではない一瞬の需給バランスに従って販売せざるを得ないことが多いのです」と語るように、生産者は前年に高い値付けがされた時期を目指して生産計画を立てる傾向にあり、翌年は供給過多で必ず安値となる。 相場の価格変動リスクは生産者負担となり、廃棄品や機会ロスは、最終消費者の価格(花屋の小売価格)に乗せられる。よりマーケットを広げる方法として、生産者と小売店の直接取引こそが、最良であると柴崎氏は考えた。価格が統制されずに発生した余剰在庫のコストは生産者と小売店・消費者に転嫁されるため、「もっと生産者と、販売者である小売店とが直接に情報交換を行いながら、商流をコントロールするべき」だと柴崎氏は考えていた。一方卸売会社の視点では、市場外取引が増加すれば、事業基盤が揺るがされる恐れがあった。
ちょうどその時、新日鉄が電子商取引システムを開発していた。両者の目標が一致し、1997年にワイズシステム(現:シフラ)を設立、大田花きを離れた柴崎氏が取締役に就任した。このシステムに携わる中で、卸売会社が有する花きの価格形成機能が流通において大変重要であることを再認識した。
そのため、柴崎氏は生産者や小売店以外に卸を引き込むべきだと考え、営業活動を推し進めた。川崎花卉園芸はその中の1社であった。

再建役として川崎に来て、卸売のあるべき姿を実行した

川崎花卉園芸は、川崎市の北部市場、南部市場と横浜市に3拠点を有する1960年創業の歴史ある花き卸業であった。しかし、オーナーが経営から離れた2000年前後から業績不振に陥り、経営の立て直しが必要となった。そこで大田花きで卸の運営ノウハウを持っていた柴崎氏に、再建役として白羽の矢が立つ。外様としての改革が大変なこともわかっていた。それでも十字架を背負うことを臆さないのが柴崎氏の美学であり、2003年に社長に就任した。
就任後は、経費の削減から着手し、取引口座の整理や会社の方向性を共有できる人員だけで構築した。それが功を奏し、同社は黒字を続け成長軌道に乗った。また、柴崎氏は単なるコストカッターにならず、卸業者としてのビジョンを提示した。「我々は、自らリスクを背負っても、必要な時期に必要な量、必要な価格で流通できるよう生産者支援を行う事、すなわちマーケットインの発想で市場を運営し、調整役として機能する必要がある」と“ALL WINの関係”構築が理想にあった。 したがって、同社には、生産者や小売店などへのコンサルティング業務を担当する販促部門があり、生産者には消費動向などのデータから次年度の生産戦略のアドバイスをし、小売店には、事業や収支計画などの経営管理から接客やディスプレイなどの具体的方法まで指導をしている。また生産者と量販店のマッチングを実施、ただの引き合わせでなく、双方の要望や得意な品種なども考慮している。花の寿命のデータ収集なども行い、適正な流通在庫を取り決める支援もする。全ては流通全体への目配りから進めている事業である。 花き市場業界では唯一(2012年3月時点)、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001を取得した。こういう同社の取り組みは業界の中では革新的であるが、一方で市場の原点である伝統的な手ゼリは残している。風習を大事にしているということもあるが、「生鮮物の取引では、文字情報だけで判断することは難しく、実際に見ることが必要なのです」と原則に忠実に進めている。

フランスの大手小売店と提携して、生花が身近なライフスタイルを提唱する

2007年には、フランスの大手フラワーショップチェーンである『モンソーフルール』と提携した。それを決断した理由は「同社の持つ運営システムに感動したのです。消費者が好みの花を自分の手に取って選べるというような喜びを提供したり、花の販売価格を明確に表示したり、品種別にせず色別にディスプレイし毎日並べ方を変えたりと我々には気付かなかったマーケティング技術を彼らは確立していました。花を飾ることはその国の文化を表すとも言われますが、残念ながら日本の総世帯の三分の一は、1年に1度も花を買わないというデータもあります。
もっと花の価格をリーズナブルにして、ギフト用だけではなく生活と密着した花をお求めいただきたいのです」と説明する。国内に複数あるモンソーの店舗は、ネイビーブルーを基調としたシャープな感じの配色で男性も入りやすく、幅広い消費者にアピールしている。 設立50周年を迎えても、花のマーケットはまだまだ開拓できていないと感じている。マーケットニーズに応える高品質の商品を日本の生産者から供給を受けていくことにも力点を置いていく。2011年には、胡蝶蘭の品質管理専用温室を北部市場内に開設した。
国内トップクラスの生産者であるモテギ洋蘭園のスタッフが常駐し、24時間365日最適な条件で管理している。常に300鉢以上が出荷状態にあり、贈答などの急な注文に最適な状態で応じることができる。寄せ植えや希望の器への植え替えなどにも対応し、午前中に注文が入れば、午後には都内や川崎、横浜近郊へ配送できる体制を整えた。これも生産者と討論した時、「最高の状態で出荷した蘭も市場でどう保管されているかがわからなければ消費者に品質を保証できない」という意見を受けとめて、解決した結果である。 一方で、今後コスト面を優先する売り先には海外調達も検討しなくてはならないことは認識している。しかし、花きに限らず過度に低価格化が進行している日本の風潮には、「流通を担うそれぞれが付加価値に応じた利益をとり、適正な価格を形成しなくてはならない」との柴崎氏の持論がある。同社では、利益を再投資して小売店や生産者の便宜を図り、ステークホルダーから「在って良かったと思われるような存在価値のある会社になりたい」という企業理念を守り、描く理想像へ近づいていくことであろう。

川崎市産業振興会館
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