株式会社 フロンティアインターナショナル

少数精鋭のフロンティアは目利き力で畜産業界に新しい轍をつける

フロンティアインターナショナル 代表写真
社長 大貫 勝彦
事業内容 畜産関連資材輸入・販売・種畜の輸入・販売・育種 他
企業名 株式会社 フロンティアインターナショナル
創業 1990年(平成2年)3月
所在地 川崎市麻生区五力田2-9-1
電話 044-980-2226
代表 大貫 勝彦(オオヌキ カツヒコ)
URL http://www.frontier-intl.co.jp

“Way Ahead”「より前を求める」「前進して探究していく」という言葉を社屋入口の看板に掲げているフロンティアインターナショナルは、社員9名(2012年1月現在)、豚の人工授精関連機器などにおいて先駆的な事業展開をしている畜産関連商社である。社名の通りフロンティアスピリッツ溢れる同社社長大貫勝彦氏に話しを伺った。

大学探検部で培ったフロンティア精神が経営の礎

「大学時代は畜産学の勉強より、探検部の活動に熱中していました」。
都会育ちの大貫氏が畜産の仕事に出会ったのはそんな“探検”が理由であった。まだ海外旅行が一般的でなかった時代に、探検部で訪れた海外での経験に憧れを募らせ、「もう一度海外へ」と決意をした。卒業後の就職を止め、以前にマレーシアのキナバル山でたまたま出会ったドイツ人の伝手のみを辿って横浜から船に乗り、鉄道を乗り継ぎドイツのヴェストファーレン州へと向かった。「生き物が好きだったし、学生時代も専攻していた」ためドイツの現地農場で2年間の畜産実習を経験した後、「このまま帰ると中途半端だから」とミュンヘン大学でさらに2年間畜産を学び、その後日本へ帰国した。既に大学卒業から4年と長い“探検”だったが、運よく今までの海外経験を評価してくれた畜産系商社に就職することができた。
入社後は当時専門家が少なかった豚関連の仕事に従事して、さらに知識と経験を備えると同時に、“畜産は文化を支えている”と一生の仕事としてやり遂げる確信が強くなっていった。
「人間が生きるためにはタンパク質を摂取しなくてはなりませんが、中には直接食べられないものもあります。それを一旦、様々な家畜に食べさせることで食肉や卵として人間が摂ることができる。従って畜産は、食文化を左右する大事な産業なのです。そして畜産技術と動物に接する愛情を両立させなければ、この循環の一端を担うことはできないと思っています。それには関係者の個人対個人の信頼感が重要であって、それを育むことに仕事の醍醐味を感じます」と語る大貫氏の社外人脈は自然と強まっていった。そして「チャレンジしてみたい」との思いから退職を決意、1990年に同社を設立した。
設立といえば聞こえは良いが、当初は自宅の子供部屋の机を占領してFAXを置くだけの創業であった。しかし、海外との取引では、会社の体裁を知らせる必要はなく、「何の不都合もなかった」という。まずは商品を動かすのではなく、牧場視察の案内や解説、コンサルタントのような仕事をしながら、畜産技術の論文翻訳や原稿書きをして自らの存在をアピールしていった。そして資金ができるようになってから商品販売へシフトしていった。 そんな中、他社とのプロジェクトも増えてきた。代表的なものが、豚の人工授精である。日本の人工授精はビジネス規模が小さく海外に比べて普及が進んでいなかったため、同社の規模の小ささと広いネットワークが幸いし商流を形成、人工授精の普及に大きな役割を果たした。

少数精鋭ながら、豚の人工授精やHACCPをリード

現在の主要事業は、豚・養豚の人工授精関係機器、家畜用添加剤や、畜産用器具/機材などの輸入・販売である。一人で始めた会社も業務の規模が大きくなり、知名度も上がってきた。このまま拡大させるという選択肢もあったが、「増員は状況を見て進めています。急激な拡大はできません。我々の仕事は特殊性が強く、泥臭い面も多いので誰でもできるというものではないですね」と少数精鋭を貫いている。
創業し5~6年を経た時、大貫氏の視界に入ってきた新しい“頂”は、HACCP(食品衛生法における危害分析重要管理点)であった。当時HACCPは、飲食店など食品を提供する側の食中毒防止の手法として日本でも注目されてきたが、そもそも食材を生産する側である農家の視点に立った活用手法としてはほとんど浸透していなかった。必要性を感じた同氏は早速勉強を開始して、アメリカのワシントンへ飛びインストラクター資格を取得した。
「弊社のHACCPでは、“農場から食卓までの安全管理”と言うスローガンで、農場、流通、販売そして消費者が一貫して生産物の安全性を確保する事を目指しています。農場でのHACCPの目的は安全性を伴った生産性向上にあります。農場の経営環境が厳しくなる中、安全でも生産性・収益性が上がらなければ対策を継続することに意味がなくなります。
そのため、まずは家畜の管理工程の中で大事故につながってしまう部分を発見するための危害分析が必要です。例えば家畜が下痢して死亡する問題が発生した場合、原因を掴むのに建物、掃除、餌、人間の管理など様々な方面から見ることが必要になります。次に日常の作業手順を決める際には、人間はミスをするという視点を考えることです。 こういう手順や視点を一緒になって勉強しましょうと申し上げて、農場が主体となって一つ一つ問題点を解決していきます。
常に現場を見ているわけではない私が勝手に決めては駄目なのです。農場が自ら問題の真因を発見し、実行する解決策を積み上げていきます。そうすると同じ労働力でも年間の収入が目に見えて違ってくるのです」
同氏はインストラクターとしても、全国を忙しく飛び回っている。

商品の目利き力を活かした異分野への展開

現在、開発進行中のプロジェクトに豚の凍結精液がある。フレッシュな精液と同等の能力を保つことを目標に、広島大学と連携して実験を進めている。導入にはまだ業界内での抵抗感があるというが、世界を見据えて一歩一歩進めていく、まさに同社の“探検”的な新規事業である。
大貫氏は、新しいものに対する目利き力を研ぎ澄ますため、毎日の経験で仮説・検証を繰り返しながらアンテナの感度を上げている。「世の中には多くの良い技術があり、もっと人間と畜産の分野を近づけて横展開すれば面白いと思います」と業務領域は畜産分野にとどまらず、食の安全や環境改善などの周辺領域に広げている。人間と畜産に共通する消臭液、衛生用資材、農場用の冷却用ドライミストなどの取り扱いや、災害時の水上通路にもなる樹脂製の浮桟橋(ポンツーン)と少し毛色の変わった商品も取り扱っている。 飽くなきフロンティアスピリッツについて大貫氏は自己分析する。「理論が7で勢いが3、それが“探検”です。やみくもに挑戦するわけではありません。5:5だと冒険になり、死ぬか生きるかの世界になってしまう。7割の確信を得るまでは結構考えますよ」。同社は“探検”精神を守り、今後も畜産分野に新しい轍をつけていくであろう。

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