直流電源の技術に精通!調光機能のあるLED照明システムを開発
副社長 加藤 章利
事業内容 | 蓄電池充電用整流器・蓄電池充放電装置・直流電源装置・非常用電源装置・自家発電用直流電源装置・AGV用急速充電装置等の設計、製造、販売 各種蓄電池の販売 |
企業名 | 東京整流器 株式会社 |
創業 | 1971年(昭和46年)7月 |
所在地 | 〒214-0021 川崎市多摩区宿河原5‐30‐10 |
電話 | 044‐922‐3737 |
代表 | 加藤 富雄(カトウ トミオ) |
URL | http://www.tohsei-kk.co.jp/ |
直流電源装置とは整流器と蓄電池を組み合わせて、万が一の事故発生時にも停電させることなく電力を供給する装置のこと。東京整流器はこの直流電源に関する技術に強みを持つ。当社が開発した『調光機能のある直流給電式LED照明システム』は、“かわさき環境ショーウィンドウ・モデル事業2012”に採択された。今、最も注目を集める元気企業の一つ、東京整流器の挑戦を紹介しよう。
直流電源の技術を蓄積し、AGV用の急速充電装置を開発
技術者であった加藤富雄氏(現社長)は、「整流器工場をやってくれないか」という取引先からの依頼に応え、1971年に東京整流器を設立した。そして、産業用蓄電池の充電器を設計し製造することから事業をスタートさせた。以来、直流電源の技術を磨き上げ、今ではこの技術蓄積が当社の大きな強みとなっている。事業の大きな柱である直流電源装置は、防災設備、非常照明用、自家発電起動用、通信機器用、制御用など、重要施設のバックアップ電源として使用されている。
加藤章利氏(現副社長)は、他社での数年間の修行を経て、1992年に当社へ入社。最初は自社工場で、部品製作や組立等のものづくりを担当した。父親である社長の『現場主義に徹する』という教えを守り、納品の際は必ず自らも立ち会うようにしているという。「どうなっているのか、どんな不具合があるのか、お客様は何に困っているのか等、現場に行けば、ハッキリと分かります。これにより問題の解決が早くできますし、お客様のニーズを的確に把握して製品の開発や改良を進めることができます」と加藤副社長は現場主義の大切さを強調する。
1990年代初めになると、工場を無人化・省力化するためにAGV(無人搬送車)の需要が高まってきた。そこで当社は、AGV向けの急速充電装置の開発に着手し製品化した。そして、製鉄工場の鉄鋼コイルや新聞の印刷工場の紙ロールなど、大きくて重いものの運搬が欠かせない様々な業種の工場に納入している。例えば、数百トンもあるH2Aロケットを発射台まで運ぶAGV向けの制御装置も当社製だ。今では、日本各地の工場内で使用される大型AGVの急速充電装置の市場において、90%を超えるシェアを誇っている。
当社の納入先は、大手メーカーを始め、鉄道会社、電力会社、放送局、病院、警察署、自衛隊など多岐にわたっており、当社製品のユーザーからの紹介や口コミで、新規顧客から注文が舞い込むことも多いという。『東京整流器を使えば、間違いないよ』という評判は、長年にわたる地道な営業努力の賜物だ。「製品を納めたお客様から、24時間365日呼び出しを受ける覚悟はできています。例えば、AGVが故障等で動かなければ、工場の生産が止まってしまい大騒ぎになるからです。当社の責任でなくても、関連しているというだけで呼ばれることもありますが、仕方ないですね。九州でも北海道でも、対応に必要な機材を積み込んだ車に乗って駆けつけます。適切に処置して工場が再び動き出すと、お客様はこれまで以上に信頼してくれます」と加藤副社長は笑顔をみせる。
直流給電式LED照明システムを開発! 消費電力を1/1000刻みで調整
当社では、『調光機能のある直流給電式LED照明システム』を開発し、今年の4月から販売を開始する。本システムは、交流/直流変換装置、個別に調光する基板、調光制御装置、無線LAN、調光プログラム等で構成される。当社の得意技術を使い、交流電源を直流に変換(整流)してから、LED照明を点灯させる。照明器具1個単位で調光することができ、無線LANを通じパソコン画面で簡単に遠隔操作が可能。直流給電により電流を自在に制御できるため、時々刻々と変わる室内の環境に応じて、各照明器具の照度や消費電力を1,000 分の1刻みで調整できることが、最大の特徴だ。これにより、省エネルギー効果が期待できる。また、照明や電源のノイズを低減できるという。
本システムは“かわさき環境ショーウィンドウ・モデル事業2012”に採択され、昨年11月に八千代銀行久地支店に設置された。導入工事は、装置の据付、蛍光灯からLED照明への交換、電気配線、システムの調整等を2日という短期間で終了。1階ロビーの天井には、LED照明が50個程度設置されている。また、開店前、開店時、閉店時、夜間、深夜、晴天、雨天など15のモードが設定されていて、パソコンからモードを選んで登録しておけば、自動的に点灯・消灯する仕組みだ。さらに、窓口の脇のカウンターにモニターを設置し、消費電力、調光率、CO2排出量等の省エネ効果を来店客が見て分かるようになっている。本システムを導入したことで、従来の蛍光灯を使っていた時に比べ、消費電力量を約3分の1に低減できたという。「窓際だけ照度を下げる、人が席を外して居ない場所の照度を下げるなど、管理者がノートパソコンを使って、きめ細かく調光することが可能です。照明をムダなく使うことができるため、省エネ効果は抜群です」と加藤副社長は解説する。
本システムには拡張性があり、太陽光発電機器や風力発電機器と接続し、自然エネルギーの利用が可能である。また、蓄電装置と組み合わせることで、停電時には非常用電源としても使用することができる。
販売先は官公庁、学校、商業施設や店舗、オフィスビル等を予定しており、照明を多く使う場所ほど、大きな省エネ効果が期待できる。
直流を扱う技術を活かし、温暖化や災害時の電力供給の問題を解決
当社の課題は新たな市場での認知度を上げること。そこで当社では、様々な機会を捉えて新製品や自社技術の情報発信・PRに取り組んでいる。その一環として、川崎市などが行う事業や展示会にエントリーし、直流給電式LED照明システムは、“第9回川崎ものづくりブランド”に認定された。また、川崎国際環境技術展では“2013ベストブース大賞”を受賞している。「おかげさまで、私達のような中小企業が普段お会いすることができないような重要なポジションを担われている方々と、つながりができました。また、思いがけない副産物として、賞状をいただいたり、新聞に掲載していただいたりすることが社員にとって良い刺激となり、モチベーションのアップにつながっています」と加藤副社長は語る。
当社は大きな災害が起きて停電しても、電気を供給できるシステムを開発中である。このシステムでは、ガソリン車やディーゼル車等のアイドリング運転から電気を取り出して蓄電し、夜間の照明等に必要な電気を供給できるという。「直流を扱う技術を活かし、エネルギー消費量の削減や災害時の電力供給等に貢献していきたい」東京整流器の未来への挑戦は続く。