ブリマー・ブルーイング 株式会社

川崎の地に本格的なクラフトビール(手作りの地ビール)が誕生した

ブリマー・ブルーイング 代表写真
社長 小黒 佳子
事業内容 ビール醸造・販売
企業名 ブリマー・ブルーイング 株式会社
創業 2011年(平成23年)4月
所在地 〒213-0032 川崎市高津区久地4-27-14
電話 044-281-0541
代表 小黒 佳子(オグロ ヨシコ)
URL http://www.brimmerbrewing.com/

森と渓流の奥多摩から続く長い丘陵が、川崎の地に入り生田緑地丘陵・東高根森林公園を経て、関東武蔵の平坦部に流れる地点、清流多摩川と森林公園に挟まれた二ヶ領用水の畔に、本格的な地ビールのブルワリー(醸造所)が生まれた。
ここはブリマー・ブルーイング㈱の小黒佳子社長が生まれ育った故郷である。

米国留学時に、地ビールの醸造に魅せられた青年と出会う

小黒佳子氏は十数年ほど前に北アメリカ・カリフォルニア州の州立大学に4年間留学し、国際関係論を学んだ。サクラメント市郊外の町での学生生活は快適であったという。多くの学友と知り合ったが、その中の一人が同大学で哲学を学ぶ、ブリマー・ブルーイング㈱で現醸造責任者をしているスコット・ブリマー取締役である。ブリマー氏は当時アルバイトとして地元醸造所の併設レストランで働く“地ビールに魅せられた好青年”であった。佳子氏は1999年に一旦帰国したが、ブリマー氏とはメールでコミュニケーションを続け、2002年に再渡米して結婚生活に入った。
ブリマー青年はクラフト(手作り)ビールの魅力にひかれ、大学卒業後、全米で十指に入る地元のSNBC(シェラネバタ・ブルーイング・カンパニー)に就職し、2006年までブルーワー(醸造者、ビール職人)としての腕を磨いた。そこでSNBCの創業者ケン・グロスマン氏に出会い、「地ビール・ビジネスの成功者となっても驕り高ぶることのないケンの人間性と、環境に配慮した経営理念に心酔し、自分の進むべき人生の目標と考えるようになりました」とのこと。
夫妻は「日本に本物のクラフトビールを広めたい」との思いで2006年来日、日本の文化、習慣やビール事情などを学ぶため「ブルワリーレストランとしては日本一の醸造量を誇る“御殿場高原ビール株式会社”」の醸造者として5年を過ごし、独立の準備をすすめた。2011年佳子夫人の実家のある川崎市高津区久地にブルワリー(醸造所)を設立し、翌2012年春に精魂込めて作り上げたエール(ビール)の初出荷をはたした。そして同年秋には、日本で一番歴史が有る世界的規模のビール審査会“インターナショナル・ビアコンペティション2012”に、ゴールデンエール及びポーターの2つのカテゴリーで見事入賞を果たした。
ブリマー・ブルワリー(ブリマーさんの醸造所)から生まれたエール(ビール)は、“外観”、“香り”、“味”のバランスが世界一級のレベルに達していることが証明されたのだ。

良質の原材料と伝統的な製法、そしてブルーワーの職人技

ビール職人のブリマー氏は、ビールの原料である水、大麦麦芽、酵母、ホップなどに最高級品を求める。麦芽(モルト)は、その製造過程の微妙な違いにより何百にも上る種類が存在するのだが、ブリマー氏は、その中から7~8種類のモルトを厳選し、繊細な組み合わせと伝統的な製法により、「輝く金髪を彷彿とさせるゴールデンエール」や「ブラウンから黒まで楽しめるポーター」などの色彩そして深い味わいを生み出している。どのモルトを、どのような配合にするのか。ビール職人の腕の見せどころのひとつである。
麦芽の甘みと調和のとれた苦みをビールに与えるホップは、麦汁の煮沸中に添加される。煮沸時間により苦みの強さやホップの風味や香気が左右され、これもビール職人の熟練技とSensibilityによる。麦汁の煮沸冷却後にビール酵母が添加され発酵が始まるが、発酵温度や時間は使用する酵母の種類やビールの濃さによって微妙に変化する。この工程はビール職人が昼夜分かたず、つきっきりで状態を見守るほど、繊細なものだという。
発酵法によるビールのスタイル(分類)は、“エール”と“ラガー”の二つに大別される。前者は常温(20℃前後)で発酵し、発酵が進むにつれて酵母が浮上し上面に層をなす「上面発酵」、後者は低温(10℃以下)で長時間熟成させ酵母が下層に沈み込む「下面発酵」と呼ばれ、量産向きで日本を含む世界の大ビールメーカーのほとんどがラガービールである。
エール(上面発酵ビール)の複雑な香りと深いコク、フルーティーな味のビールを味わうためには、地域のマイクロブルワリー(小さな醸造所)の存在が貴重である。

より多くの人に味わい納得してほしい最高級のビール

現代のビールは培養技術、生産技術、保存技術などの進歩により、安価で大量に供給され世界の津々浦々に普及している。この反動として世界的に「伝統的なビアスタイルを尊重しながらも、自己のオリジナリティーを強く主張したビール造りを目指す“ニュージェネレーション・ブルワリー”の活躍が目立ってきた」という(日本地ビール協会)。
まさにブリマー氏のブルワリーはこのニュージェネレーション・ブルワリーの旗手と言えるだろう。「長年の夢であった自分のブルワリーを持ち、最高級品のビールを送り出すところまで来ました。この最高級品のビールを多くの皆様に味わって頂き、納得頂く事が出来ればこれほどの喜びはありません」という。そのためにはタンクを増やし、スタッフも増やし、多くのファンの需要に応えられる体制づくりが課題であるとのこと。

小さくて清潔なホームメイド的なマイクロブルワリ―であった

当社の瓶ビールラベルは、ブリマー氏が若い頃によくサーフィンに行った、カリフォルニア州のサンタクルーズにあった、松の大木をモチーフとしている。その松の木の下でのんびりと釣りをする人のシルエットを加えることにより、このビールを飲んで、のんびりとリラックスしてほしいとの願いを込め、そしてシルエットの背景で“朝焼け(ペールエール)”“昼の青空(ゴールデンエール)”“夕焼け(スペシャル)”“夜の星空(ポーター)“を表現し、「いつも僕のビールがPersonal(身近な存在)でありますように!」との願いを込めている。
「24時間飲み続けになりますね!」の当方のつぶやきに、大笑いとなった。家庭的で楽しい、心温まる訪問であった。

川崎市産業振興会館
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