ナノフュエル株式会社

世界初 ナノテクノロジーを応用した次世代燃料“ナノエマルジョン燃料”の開発に成功

ナノフュエル 代表写真
社長 松村 健彦
事業内容 ナノエマルジョン燃料事業、液体バイオマス発電事業、燃料改質事業
企業名 ナノフュエル株式会社(旧社名:ナノマイザージャパン株式会社)
創業 2006年(平成18年)10月
所在地 川崎市川崎区殿町1-19-4
電話 044‐270-1611
代表 松村 健彦(マツムラ タケヒコ)
URL http://www.nanofuel.co.jp/

「物質をナノメートルレベル(100万分の1ミリメートル)まで微粒化、乳化、分散することにより、さまざまな新しい可能性を発見することができます。当社はナノテクノロジー分野で、30年以上にわたり展開してきた実績を有し、一貫して微粒化装置“ナノマイザー”の製造販売を行ってきました。“ナノマイザー”は、紛体工学用語辞典にも掲載され、医薬品、化粧品、食品、塗料、電子材料など各分野の世界中の大手メーカー約800社に納入した実績があります」と松村社長は語る。
現在は、環境エネルギーを中心に事業展開しており、ナノエマルジョン燃料事業、液体バイオマス発電事業、燃料改質事業の3つの事業を展開する。

薬品成分の微粒化で当社のナノ化技術のレベルの高さを顧客として実感する

「ナノテクノロジーには、いろいろな種類があります。ナノレベルの物質の生成に関しては、大きく分類すると、物質を細かく粉砕してナノレベルにする技術と、分子レベルで化学的にナノレベルの物質を生成する技術の2つがあります。当社の微粒化装置“ナノマイザー”は前者の技術を用いています。例えば、ある液体中で分散しにくいシリカ、トナー、インク、カーボンナノチューブなどの物質を“ナノマイザー”を用いて、ナノレベルに微粒化することにより均一に分散することができます。また、“ナノマイザー”を用いて、油の中に水を細かく分散・乳化させ、高性能なエマルジョンを生成することにも極めて有効です」と松村社長は難解な技術を分かりやすく説明する。
微粒化装置“ナノマイザー”は、材料を高圧ポンプによりジェネレーターと呼ぶ特殊なノズルを通過させることで高速流を作り出し、発生する超高速せん断力・衝撃波・キャビテーション等の作用により乳化、分散、破砕を行う装置だ。キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象で、空洞現象とも言われ、古くは船舶のスクリューを極度に劣化させるなど負のエネルギーとして研究されていた。
松村社長は、6年前、海外でバイオベンチャー企業を経営している実兄とともに、皮膚から直接薬物を浸透するパッチ経皮吸収薬を開発した際に、薬品成分を微粒化する技術を探していた。その時に初めて当社の存在を知ったと言う。
他の技術では解決できなかった研究課題をナノマイザー技術で解決できたことから、顧客としてその技術レベルの高さを実感した。
当時、“ナノマイザー”は、極めて専門性の高い限定された分野でのみ使われるため、製品としての汎用性に乏しく、業績が低迷するとともに、資金的にも逼迫していた。そのため当社の依頼を受けて資本の投入を行い、同時に、松村社長は当社の経営に参画することになった。

次世代の新燃料“ナノエマルジョン燃料”の研究開発に経営資源を集中する

「元々は装置としての“ナノマイザー”を売っているだけの会社でしたが、医薬品、化粧品、食品、塗料、電子材料など応用範囲が広いので、新しい製品や素材を自分達で作った方がいいと考えました。そこで横浜市鶴見区の横浜市産学共同研究センターに入居して新たな製品の開発に取り組みました。設備を導入し、エンジニアを雇用して、様々な研究テーマの実現可能性を調査しました」と松村社長は語る。
まずは、抗ガン剤のドラッグデリバリー(医薬品搬送)システムの開発や大豆飲料の開発など製薬や食品メーカーのパートナー企業としてナノ化技術を応用した製品開発に注力した。
次に、船舶向け燃料のナノエマルジョン化の研究開発に取り組んだ。燃料油に微粒化した水を分散させると、その沸点の差から先に気化し膨張する水の微細粒子が、油を吹き飛ばすことにより、油滴表面積が急速に広がり、そのため燃焼効率が上がり、燃料をほぼ完全燃焼させることができるので経済性が向上する。同時にNOxやSOxなど、排ガス中に含まれる有害物質を大幅に減少させることができる。そもそもエマルジョン燃料は、約50年前から多くの企業で、その研究開発が行われてきたが、十分な基本性能が得られず、多大なコストがかかるなどの問題を解決できず、大手エンジンメーカーも研究の実施と中断を繰り返してきた。
当社はナノテクノロジーを用いたエマルジョン燃料の生成に着目し、その技術の開発に大きな可能性を見出し、経営資源を集中させてきた。
水と油の粒径サイズやどのように分散しているのかを研究した結果、従来10マイクロメートルの水粒子径を0.3マイクロメートル(300ナノメートル)、油膜厚を約32分の1と細かく均一なナノエマルジョン燃料を作ることに成功した。第一段階として、当社の実験工場内で、発電機用エンジンとバーナーエンジンを用いて実験し、その効果を証明した。さらに、実用化に向け造船メーカーやエンジンメーカー複数社とナノエマルジョン燃料の実証実験により評価した。
燃費削減効果は、陸用・船舶用エンジンで約3~8%、ボイラーで約7%、リサイクルキルンバーナーで約15%を実現した。エンジン等の業界では1%の燃費を削減するのに約5年かかると言われており、画期的な成果を得られたものと言える。

産学共同で高性能かつ低価格のコア部品の研究開発に取り組む

「当社のナノマイザー装置は高圧化技術と微粒化技術がコア技術であり、プランジャーポンプとジェネレーターの構造で特許を保有しています。ライバル企業よりも技術レベルを向上するために、当社顧問で慶応義塾大学の鈴木哲也教授との産学共同研究開発により高圧ポンプでも壊れない低価格ジェネレーターを開発しています」と語る松村社長は競争優位性を確保する。
ジェネレーターのコア部品の素材である単結晶ダイヤは高価であるため、金型で量産できるセラミックスをDLC(ダイヤモンドライクカーボン)でコーティングしたジェネレーターを開発した。これにより低価格で高圧に耐えられる硬さを実現した。
その結果、高純度の薬や電子材料分野でジェネレーターの使い捨てが可能となり、流路が小さく複雑形状のジェネレーターの洗浄工程を不要とした。今後も企業パートナーを開拓して、新しい素材製品を作ることに注力する。
「以前入居していた横浜市産学共同研究センターは研究開発段階の企業が対象のため、事業化段階に入った当社は準工業又は工業地帯で物件を探しました。偶然に川崎市の現在地を見つけて、昨年4月に転入しました。川崎市に移転してきてから、その立地も含めて、事業環境が素晴らしく、展開が急速に進み始めました」と松村社長は笑顔だ。また、植物原油を直接燃料に使用する世界で初めてといわれる液体バイオマス発電所を、川崎キングスカイフロント近隣に建設し、売電事業の展開を行う企画を実現すべく関係各社と協議をスタートさせた。
「民間企業である限り、収益を上げ株主に報いることは当然ですが、当社が環境エネルギー事業に注力するのは商売だけが発想の原点ではなく、事業を通して如何に社会に役立つことができるかが大切だと考えています」と松村社長は語る。今後もナノマイザー技術を活用して社会に貢献する新たなビジネスの創出に邁進していく方針だ。

川崎市産業振興会館
トップへ戻る