株式会社NENGO

100年後も残したい 住みたい・遊びたい・働きたい街つくり

NENGO 代表写真
社長  的場 敏行
事業内容 不動産事業、リノベーション事業、断熱工事・耐火被覆工事、ポーターズペイント事業(PORTER’S PAINTS)、ミャンマーチーク家具・建具販売事業(MUKU)、ブランディング・コンサルティング事業など
企業名 株式会社NENGO
創業 1983年(昭和58年)3月
所在地 川崎市高津区下作延7‐1‐3
電話 044‐829‐3324
代表 的場 敏行 (マトバ トシユキ)
URL http://www.nengo.jp/

どこにでもありそうな駅前の風景写真を手に「どこの街だか、わかりますか?」と質問するのは、(株)NENGOの的場社長。「便利さを追求するあまり特徴のない街が増え、その土地独自の街並みが失われつつあります。美しい景色が美しい心を育みます。私たちは、その土地にあって然るべき建物を建てていきたいのです」との理念で、塗装、リノベーション、不動産業と業容を拡大してきた同社の街つくりへの取り組みを伺った。

美しい街並みをつくる第一歩として自然由来の塗料を取り扱った

美しい街つくりに取り組む的場氏だが、当初からその思いがあったわけではない。大学時代は体育会のアメリカンフットボール部に所属し、練習と飲み会に明け暮れる毎日だった。卒業後は、藤田観光に就職しホテル業務などを経験した後、父が創業したオリエンタル産業株式会社に転職した。NENGOの前身となるオリエンタル産業は、当時、耐火被履工事を専門としていて、的場氏も現場で経験を積んでいたが、さしたる目標があったわけではなく漫然とした日々を過ごしていた。それから1~2年経ち、自分の周囲の優秀な友人たちの会話についていけないことに、ふと気づいた。「自分は必要な能力を身に着けてこなかった。これはまずい…」焦りが的場氏を突き動かした。「すごい人たちから学びたい」と徒手空拳で建築業界の著名人に電話や手紙で面談を申込んだ。20人ほどに面会でき、様々な刺激を受けて、仕事への見方も変化した。
そうすると当時担当していた発泡ウレタンを吹き付ける断熱工事で出る廃棄物が膨大なことが気になった。大学の卒論のテーマにするなど環境への意識は人並み以上にあったが、それまでビジネスの視点で考えたことはなかった。建築現場の産業廃棄物処理は事業として成立しそうだと考え、実行に移すため、27歳の時に別会社を立ち上げた。しかし、思いだけが空回りし、「今、振り返ると稚拙な事業計画でした」という事業は思い描いた形にはならず、子会社は本社に吸収された。それでも、環境に関するビジネスへのアンテナは立て続けていた。
そんな的場氏は、“住環境”をとても意識するようになっていた。開発の進む街では便利さを追求するあまり、古い日本家屋が次々と取り壊され、諸外国を模した新しい住宅が建っていく。周囲の風景や自然とかい離し、いつの間にか街や自然の良さを実感することが少なくなっていた。「その土地らしさのある街をつくる」という使命感に駆られた同氏は、2003年に社長に就任し、理想の街つくりに向けて第一歩を踏み出した。
その時期に出会ったのが、ポーターズペイントというやさしい風合いを持つ塗料だった。それは、1900年代初頭にオーストラリアの建築士が開発したレシピを基に、その孫が改良を加えながら自然由来の成分で作り上げた塗料である。塗り方により仕上がりの質感が変わる面白さがある。「昔は、家の柱にキズをつけて身長を測ったことなどの思い出が、住宅への愛着を生み、ひいては家を住みつないでいく意識を強めていたように思います。今の住宅には、愛着を生む仕掛けがない。自分の家を塗る作業などで住宅への愛着を取り戻したかったのです」と語る的場氏は、塗料販売を始めた。単なる販売に留まらず、壁の塗工を体験するワークショップを毎週開催して、その良さを説き続けている。
ポーターズペイントは、個人のユーザーだけでなく、色へのこだわりなどが建築家にも支持されて広がっている。実際に質感を感じてもらうために、社員が出向いて塗料の説明をしている。また、色味を再現するためにも、外注化せずに当社での責任施工に限定するなどの手間もかけている。こうした取組が支持され、建築家のネットワークも広がった。

街を読み解き、気候、歴史、風土を読み込んだ家つくり

理想の街つくりの追求のため、2004年には、建築・リノベーション工事を手掛け出した。「私たちが関わった建物は自然にその土地になじみ、いつの日かその土地の慣習・文化・歴史の一部となります。それがその土地・街への愛着となり、街つくりにつながるのです」という信念のもと、会社としても大きく舵を切った。
もともと保有していた断熱工事のノウハウも活用しながら、土地毎の自然環境を活かした美しく・気持ちの良い住まいを作り上げている。例えば、首都圏でも環境によってはエアコンを殆ど使わず住めるため、夏に風の吹く方向を調べたり、日照から計算してひさしの長さを決めたりして家つくりをしている。
また、同年末には不動産業にも進出した。同社のリノベーション工事では、古き良き物件を確保するのが必須条件だったからである。そして、『おんぼろ不動産マーケット』という刺激的な名称の中古不動産売買専門サイトを立ち上げた。これは日本の不動産業界に一石を投じたいという思いからであった。「35年ローンなどで購入する新築住宅ですが、20年経過すると資産価値はほぼゼロになってしまいます。古くて良い物件は沢山あるのに、日本は建物が低く評価され過ぎです」と的場氏は、その理由を説明する。築年数が古いマンションは、建材の老朽化も進み、間取りも現在の流行には合っていない。しかし、一朝一夕では醸し出せない部屋の風合いを持っている。そのため、全てを新しくせず、必要な部分だけ手を入れる。古い味わいのある柱などは、壁を取り払い、敢えてその魅力を見せる形にすることもある。流行に流されず、古いものの持つ価値を引き出していく。長い間使える住まいを監修し、物件の資産価値を高めていくことが同社の競争力となっている。
それが端的に表れているのが、2011年から進めている『仕立てる賃貸』である。魅力的であっても入居者が付きにくい古い賃貸物件を、同社のプロデューサーが複数のリノベーションプランを提示して、先に入居者を募集する。それから、オーナー、入居者、同社の3者によりイージーオーダー的にリノベーションプランを作り上げる。入居者にとっては好みの住空間を手に入れられ、オーナーにとっては定着率の高い賃貸物件ができあがる。賃貸物件オーナーと入居者双方にメリットのある仕組みだ。

サービス業のマインドで、更なる場つくり・コミュニティつくりを進める

2013年1月の創立30周年の節目に、「100年後の街つくり」からとり、社名を株式会社NENGOに改めた。実績が増えるにつれ、NENGOのコンセプトに共感してくれる入居者、オーナー、建築家等とのつながりが強まっている。「むこうさんげんりょう隣の会と称して、関係者の交流の場を作っています。バーベキューパーティーなどもしています」と的場氏はコミュニティ化していることを嬉しそうに語る。入社時は数名の家業だったが、様々な取り組みが支持されて会社が成長した現在は30名を超え、街つくりを担うことに確かな手ごたえが出てきている。今後は、地域のため、独立したい人々向けにシェアオフィス、シェアカフェなどを立ち上げる構想がある。そういう場つくりの媒介役は、モチベーションの高い同社の若手社員である。「従来の不動産業のイメージを変えたい。そのためにサービス業のマインドを持った人材は重要です。そのためにも建設・不動産業界で日本一就職したい会社になることが目標です」と語る的場氏は、不動産業界のフロントランナーとして今後も美しい街つくりを進めていく。

川崎市産業振興会館
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