株式会社 目黒電波測器

GNSS全世界的航法衛生システムの信号発生器にてカーナビ向け国内市場シェア5割

目黒電波測器 代表写真
社長 渡真利 泉
事業内容 各種電子計測器の設計・開発、製造、販売及び輸出入
企業名 株式会社 目黒電波測器
創業 1992年(平成4年)11月
所在地 川崎市幸区南加瀬4‐11‐1
電話 044‐589‐0805
代表 渡真利 泉 (トマリ イズミ)
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「当社は、一般的によく知られているGPS全地球測位システムを10年以上前から製品化し、現在はGPSの拡張版であるGNSS全世界的航法衛星システム用の信号発生器を開発・製造・販売しています。GNSSは米国のGPS衛星、ロシアのGLONASS衛星、EUのGalileo衛星、中国の北斗衛星、そして日本の準天頂衛星など衛星測位システム全てを対象に地球上での位置を測定出来るように拡張したシステムです」と渡真利社長は語る。
HD Radio米国のデジタルラジオ放送用の受信機を評価検査する信号発生器、携帯電話・カーナビ・デジタルカメラ・建設機器等に搭載され、位置情報の記録や運行制御に広く活用されているGPSやGNSS等の受信機を評価検査する信号発生器、NHKが開発したFM多重放送やVICS道路交通情報通信システム機器を評価検査する測定器を製造している。

信号発生器と測定器という両側面を合わせた技術を追求する企業

「当社は、音や電波の標準信号発生器を数多く手掛けてきた測定器メーカーです。信号発生器や測定器は製品の検査や評価を行う目的で使用される為、それらの製品以上の精度や安定度が要求されます。具体的には、測定確度や出力信号の精度、温度環境における安定度、ノイズレベルなどがあります。また、最近のデジタル通信はセキュリティの為の暗号化処理や多重通信の為の変調方式の高度化・複雑化が進んでおり、データの確実な伝達、リトライ(再試行)、ルーティング(通信経路)、同期運転、分割転送などの処理も増えています。これらの要求を満たす為に、当社はデジタル通信の為の機器と測定器という両側面を合わせた技術開発に取組んでいます。」と渡真利社長は語る。
㈱目黒電波測器は吉澤晴幸氏が1992年11月に、横浜市港北区に設立した。旧目黒電波測器㈱の販売チャネルを活用して、測定機器の製造・販売と校正サービスで事業を拡大して来た。2011年7月からは横浜市都筑区に在る㈱計測技術研究所と関連会社となり、一方ではそれぞれの得意分野を活かしつつ、他方、管理業務などでは互いに業務協力を図りながら事業を進めている。
リーマンショック後の不況は当社にも大きな影響が有った。既存顧客からの受注が減少し、しかも中々元には戻って来なかった。そんな中、「従来は開発部門、営業部門及び管理部門が別々のフロアで仕事をしていましたがそれを一つのフロアに集めました。これによりお互いの仕事ぶりが良く分かる様になり社員間の風通しが良くなりました。また、情報共有を強化する為、ネットワーク上で動作する業務管理システムを導入しました。そして、経理と購買部門を関連会社に業務委託しました。この様にして組織のスリム化と一人一人が複数の役割をこなす多能工化を図って体質改善に取組みました」と語る渡真利社長は当時を振り返る。

ターゲット市場はITS高度道路情報システム向け車載機・路側機の測定器

2015年8月に「新VICSの実証実験用の測定器開発」が「平成25年度補正 中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」に認定された。
VICSとは、ドライバーの利便性の向上、渋滞の解消・緩和等を図るため、都道府県警察や道路管理者が集めた渋滞状況等に関する道路交通情報を処理・編集して、道路上に設置した無線機器やFM多重放送により、カーナビへリアルタイムに情報提供するシステムで、1995年から運用が始まり、現在、多くのカーナビに搭載されている。
当社は10余年以上前からカーナビのVICS受信機能検査に使われる測定器を提供し、また各地のNHK放送局のFM多重放送の電波を監視するシステムの開発とメンテナンスも請け負ってきた。
また、新VICSは、現在のVICSの機能を拡大して、より精密なプローブ情報を集めてさらに高度な交通情報システムを創り上げよというもので、イベントによる広域情報などを配信するシステムとして、内閣府が2020年の東京オリンピックへ向けて掲げている、次世代ITS(高度道路交通システム)の一翼を担うシステムである。
国は次世代ITS高度道路交通システムを日本各地へ展開する事によって交通死亡事故の半減や約60兆円に上る渋滞による経済損失を削減しようと目指している。
今回、新VICSシステムが開発され、2014年10月から路上での実証実験が全国20ヶ所で開始されることになったが、その実証実験では旧来型の車載器と新型の車載器のそれぞれに対して、新しいVICSの情報が正しく伝達されるか、また路上の様々な電波環境や高速走行において通信不具合が発生しないか、といった点が検証の要点とされた。具体的には、現場における車と路側機との通信を記録し、それを持ち帰って解析や再現実験を行って検証するといった方法がとられた。
当社は、これまで培ってきたデジタル信号技術や放送通信技術のノウハウを活かして今回の実証実験の評価解析用の測定器を開発したが、今後も位置情報活用システムや次世代のDSSS安全運転支援システム、Wi-Fiに代表されるワイヤレス通信制御システム等の新産業の進歩に大きく貢献すべく新たな意欲を燃やしている。

中小センサーメーカーなど他社と連携した情報通信システムの構築を目指す

当社の企業理念は「顧客優先を第一に、お客様満足度を高め、優れた価値を提供し、安全で豊かな社会に貢献する」だ。基本方針として、「1顧客から信頼され、期待される会社をめざす。2新しい知識、新しい技術で会社を変える。3社員の人格と個性を尊重し、一人ひとり自由と夢を実現する」を掲げている。
今後は、市場ニーズに対応して、アナログ回路をデジタル回路とソフトに置き換えて処理する技術を使って新しい付加価値の製品を開発する計画である。カーナビの生産ラインでは検査の種類が多く、製品の機種も多岐に渡る為、検査と機種変更に相当の時間を要している。また、コストダウンの要求や、生産の効率化を求められている顧客の要求に応える為、多種類の検査を統合した機器を開発する予定だ。さらに、Wi-FiやBluetoothをはじめとするISMバンド(産業・科学・医療分野で汎用的に使える周波数帯域)の普及により、農業・漁業・畜産業、医療や介護分野で電波を手掛ける中小企業が増えてきた中でネットワークからデータ処理まで提供できる企業がまだまだ少ない状況を踏まえ、当社は中小センサーメーカーなどと連携してセンサーネットワークによる情報通信システムの提供を図って行きたいと考えている。
「今後重要な人材は電気回路図だけでなく、プログラミングや数学・物理など論理的な思考に強く、新たな取り組みに挑戦する柔軟な思考を持った人だと思います。その為にも社員が仕事を面白いと感じる職場を目指しています」と渡真利社長は事業の再構築に今後も取り組む意向だ。

川崎市産業振興会館
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