S’NEXT 株式会社

イヤホンで臨場感のある音を再現!マニアから愛される音響機器メーカー

S'NEXT 代表写真
代表取締役社長
細尾 満
事業内容 オーディオ機器の開発・製造・販売、オリジナルブランドfinalの展開
企業名 S’NEXT 株式会社
創業 2007年(平成19年)11月
所在地 川崎市幸区北加瀬3-12-7
電話 044‐789‐5795
従業員 25名
代表 細尾 満(ホソオ ミツル)
URL http://snext-final.com/

S’NEXT(エスネクスト)はイヤホンやヘッドホン、スピーカー、オーディオシステムなどを開発する音響機器メーカーである。音楽マニア向けの商品開発を中心に、人の感性に訴える音を追求し続けてきた。当社のイヤホンからは、ライブ会場にいるような臨場感のある音楽が流れ出す。自社ブランド『final』のファン(愛好者)から愛情を込めて『変態会社』と呼ばれる元気企業を紹介しよう。

イヤホンやヘッドホンに着目し、ODM事業や『final』ブランドを展開

当社は音響分野に着目した外資系企業が出資して2007年に設立された。大手家電メーカー向けに薄型TV用のスピーカーを開発し、製造を受託することから事業をスタートさせた。その際の設立メンバーの一人が現社長の細尾氏だ。
細尾社長は、店舗デザインの会社で施工管理や営業を経験した後、独立して会社を設立し、新商品の企画・デザインや営業のコンサルティングなど、顧客に対しさまざまなサービスを提供していたという。S’NEXT設立時の代表者の一人とは、それ以前から仕事上の付き合いがあり、会社の設立や運営への協力を依頼されたのが、当社にかかわるきっかけとなった。
2009年には、利益率の向上を狙って、ハイエンド(高級品)のイヤホンやヘッドホンのOEM、ODM事業を開始。同時に自社ブランド『final』でイヤホンの製造、販売も開始した。また、 2013年に、自社ブランドによるヘッドホンの販売を始めている。なお『final』ブランドは、設立時の代表者の一人であった髙井金盛氏が1974年に創業した音響機器メーカーで使用してきたブランド名であり、マニアの間では名が通っていた。この『final』の知名度や信頼度を自社商品の拡販に利用するのが狙いだ。
現在、当社の事業には2つの柱があり、1つ目は『final』ブランドによる直販、2つ目は他社向けのOEM、ODM対応である。ただ、OEMはコスト競争が厳しいため、商品企画、デザイン、設計も含めたODM受注が殆どを占めるという。
生産体制は、日本国内での生産が6割、海外生産が4割を占める。高額な製品、およびイヤホンやヘッドホンの基幹部品であるドライバーユニット等の製造は川崎の本社工場で行っている。音質の良さや作りやすさを追求する結果、生産設備や治具は自分たちで製作ことが多いという。また、愛知県の協力工場でも生産しており、国内における供給能力を確保している。一方、中国、フィリピン、タイの工場に製造を委託し、ヨーロッパや香港市場などへ商品を供給している。
マーケティングの面では、蓄積された販売データを営業活動に活かしたり、家電量販店の商品の売り方や組織を研究して効率的な営業活動を展開したりしている。

3Dプリンタを活用してイヤホンを共同開発、広大な音場を実現

「私たちはNTTデータエンジニアリングシステムズと共同で、3Dプリンタを活用してチタン製筐体のイヤホンを開発しています。当社は主に、化学研磨や電解研磨を用いて、筐体の表面・内面の平滑度や光沢度を上げるところを担当しました。3Dプリンタで筐体を造形することにより、従来の製造方法では不可能であった形状を実現し、高域特性や低域特性等を改善して、これまでにない広い音場を実現しています。 製造原価を反映させるとイヤホン1セット当たりの販売価格は45万円と高額になってしまうのですが、圧倒的な音の臨場感が評判となり、音楽マニアの皆さんから多数の注文をいただいています。」と、細尾社長は笑顔をみせる。
当社ではヘッドホンの開発も進めており、従来品とは別の原理で動作する新しいドライバーユニットの開発に取り組んでいる。将来的には、開発した技術を用いてバーチャルリアリティ音響への展開も視野に入れている。開発に関しては、今後他社への技術供与も行っていくという。
また、当社は売上の拡大を図る為、従来に比べ少し安い価格帯(1セット1万円を切る水準)のイヤホンやヘッドホンを今春以降、順次発売していく予定である。『final』ブランドで認知されている高品質なイメージを活かしながら、コストパフォーマンスの良さで勝負していく戦略だ。

限界を超えた先にフロンティアは広がっている!

S‘NEXTの強みの1つは裏方や兵站を大事にすること。当社では技術開発といった派手な面だけでなく、組織を支えるための仕組みづくりなど、地味な面にも注力している。例えば、社内の情報システムを構築するに当たり、既存の仕事のやり方に合わせて情報システムを作るのではなく、市販のシステムを導入して、それに合うようにワークフローを見直している。これにより、システム担当者は不要で、軽くて安上がりな情報システムを実現している。10年経ったら、古くなった情報システムをバッサリ捨てて、新しいシステムに乗り換える方針だという。
社員の教育方法も独特だ。「社員の『できない』に対しては、『どうして』と尋ねるようにしています。そして、できない要因を分解してツリーに描いてみて、一緒に考えるようにしています。それで解決できなかったら、その問題について詳しそうな社員を集めて検討します。それでも解決できなかったら、私が社外の専門家に相談に行くことにしています。好奇心を持って問題に当たれば、解決できない問題はないと思います。」と細尾社長は解説する。
「将来的には、大手優良企業と同等の平均年収を実現し、仕事を面白いと思う人が活き活きと働ける組織を作っていきたいと考えています。仕事とはいえ、人が決めたこと、人に言われたこと、納得できないことをやるのは苦痛です。逆に、自分が決めたことは、大変な仕事でも耐えることができます。当社では社員が自主性を発揮できて、幸せに生きていけるような職場環境を提供していきたいですね。仕事を通じて身に付けたスキルやノウハウを活かして、起業することもありだと考えています。」と細尾社長は組織のあり方や人材育成について語る。
一方、今後の商品開発について、「まずは、現在の商品をさらに進化させていきます。他社品に対し、誰にでもわかるような差別化ができると思います。次に、素材に関するノウハウの蓄積も進んでいますので、素材の開発に注力します。例えば、微生物を利用して、振動板用のフィルムの開発を進めています。さまざまな制約や限界を乗り越えることで、フロンティアは広がっていきます。素材、加工技術、製造技術について好奇心を持って勉強し、チャレンジしていくことで、世の中にない技術の開発も可能になるのではないでしょうか。」と、将来を見据える。

イヤホン 写真

製品写真
写真:3Dプリンタ造形による特殊形状を持つダイナミック型earphones「LAB II」

川崎市産業振興会館
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