株式会社 カサイ

伝統製法を守り「ぬか漬け」のおいしさを伝える

カサイ 代表写真
代表取締役社長
河西 哲夫
事業内容 漬物製造販売業
企業名 株式会社 カサイ
創業 1963年(昭和38年)3月
所在地 川崎市幸区南加瀬3-8-11
電話 044‐588‐3104
従業員 8名
代表 河西 哲夫(カサイ テツオ)

塩・米ぬか・唐辛子。そんなシンプルな材料のみの「ぬか床」を半世紀以上も継ぎ足しながら、日本の伝統食である漬物を作り続けている。株式会社カサイのモットーは、一品一品に手間をかけた“味”で勝負すること。食品添加物は一切使わない。大量生産・大量消費の時代にも流されない。昔からの味を継承した、本当の漬物のおいしさを消費者に伝えている。

半世紀以上継ぎ足した「ぬか床」

当社は1963年3月に川崎市幸区小倉で創業。今年で54年になる漬物一筋の会社だ。浅漬けも季節ごとに商品を出すが、主力は「ぬか漬け」。材料は塩・米(ぬか)・唐辛子のみで、ぬか床は半世紀以上にわたり継ぎ足している。そんな伝統が込められたぬか床に、その日市場から仕入れた新鮮な野菜を漬ける。「素材のおいしさが味わえるぬか漬けです」と河西社長は言う。
カサイのぬか漬けの特徴は、食品添加物を一切使わないことだ。そのため、化学調味料を使う量産品に舌が慣れてしまった消費者からは「味にパンチがない」とまれに言われることがある。だからといって“レシピ”を変えることはない。「食べたときの一口目のおいしさを感じさせるのが化学調味料なんです」と、河西社長の長男・貴司氏は説明する。当社は小細工なしの直球一本勝負なのだ。
創業当初は河西社長と奥さん、社長の兄の3人でやっていた。乾物屋や八百屋の片隅で売っていたという。河西社長は「量や売り上げを追わず、その季節に合ったものを作って納めるような商売のやり方でしたね」と当時を語る。やがて、高度経済成長期を経て、取引先の業態が進化してスーパーやコンビニエンスストアに変わった。しかし、そこにも商品を卸すようになると以前のようにはいかなくなる。生産体制を拡充するため、20年ほど前に現在の工場へと移転した。
社員さんは8人(パートさんは25人)。河西社長を中心とした家族経営を進める。貴司氏夫婦は営業などを担当、その弟の哲也氏は仕入れ、妹の鈴木夫婦がぬか漬けを受け持っている。パッケージング以外、ほとんどの工程が手作業。野菜の洗浄や皮むきから始まる。創業時は2社だった取引先だが、今では大手スーパーを中心に25社となった。「素材の味を引き出したぬか漬け」を求める“本物志向”のファンを地道に増やしており、入れ替わりが激しいスーパーの食品売り場の棚を根強くキープしている。

存続の危機を家族で乗り切る

製法や味と同じくこだわっているのが、地域密着の販売戦略。商品販売量の8割は県内と都内で占めている。ほかは千葉や埼玉、静岡、せいぜい山梨までだ。「鮮度や物流のことも考え、あえて全国展開はしません」と貴司氏は言う。鎌倉野菜や三浦大根を使った商品を開発したり、シニアの客層が多い店舗に対し伝統のぬか床を渡し、店舗の野菜でぬか漬けを作ることも試験的に始めている。
こうした地域密着の姿勢は、商品ブランドにも出ている。ほとんどの商品には、当社が立地する地名をそのまま採用。「南加瀬三丁目のあさづけ」と名付けた河西社長の顔写真入りラベルが貼られている。2005年からこのラベルを使用するようになったというが、次第に認知もされている。“ラベルの人(社長)”を訪ねて工場にやってくる人や、ラベルを目印にスーパーで商品を探すコアなファンも出てきたという。
そんな当社だが、実は4年前に危機も経験した。ぬか漬けの製法を熟知した河西社長が突然病気になり現場に入れなくなった。それでも生産をストップする訳にはいかない。ぬか漬け作りをどうしたらよいか…。緊急家族会議が開かれた。
「(製法の)マニュアルもないし、特に教えてもらったこともなかったのですが、弟と妹夫婦、妻が順番で、河西社長のそばで見ていたことを無我夢中にやってみました」と貴司氏は振り返る。試行錯誤の連続だったが、今では妹夫婦がぬか漬けを継承するまでになった。河西社長は職人らしく“感覚”で最高のぬか漬けを作っていたが、妹夫婦は温度や塩分、PH(水素イオン指数)などを測りながら数値で管理。米ぬかも手作業でふるいにかけることで、酸っぱさなど微妙な味の変化を防ぐ。感覚に頼らずとも、毎日同じ品質のぬか漬けが作れるようになったのだ。

若い世代、そして後世にも

日本人の食卓に欠かせない漬物だが、実は市場は縮小傾向にある。総務省の「家計調査年報」によると、1世帯(2人以上)が年間で漬物にかける金額は2013年が7,900円程であり、10年前(10,600円程)と比べると大幅に減っているのが分かる。ぬか漬けの主な購買層は団塊世代だが、年とともに収入が減っていく高齢者層にとっては、ぬか漬けを“嗜好品”ではなく、“贅沢品”として考える人もいるという。
とはいえ、市場縮小の背景にあるのが、やはりサラダの台頭だ。スーパーやコンビニエンスストア店頭では、パスタが入ったものなど、以前と比べてもサラダの種類が豊富になった。その分、漬物の種類が減った。さらに、若い世代にとっては、食卓に漬物が並ぶことは少ないという。「スーパーで見ていても、若い家族が漬物を買うことは珍しいです。夕飯の献立に悩んだとき、隣の食卓を参考に漬物を並べることがないんでしょうね」と、貴司氏は目を細める。
こうした中、当社では伝統食・ぬか漬け本来のおいしさを子どもたちに知ってもらおうと、地元小学校からの工場見学を毎年受け入れている。見学時には「きゅうりのぬか漬け」を試食してもらう。普段、漬物を食べる機会の少ない子どもたちだが、ひと口食べると「おいしい」と必ず喜んでくれる。その様子を見た貴司氏は、子どもたちにこう話す。「お父さん、お母さんにも『ぬか漬けはおいしかった』と伝えてね」と。
確かに市場は縮小しているが、漬物はなくなることはない。ただ、若い世代にとっては、食べる機会が減っただけなのだ。「業界は厳しくても、喜んでくれるお客さんがいるので続けています。そこに、当社の存在意義があります。創業者である社長がやってきたことを大切に守り、ぬか漬けという伝統食を後世に伝えていきたいです。」と、貴司氏は意気込みを見せている。

漬物 写真 社員 写真

販売商品(ぬか漬け、浅漬け)       (左)河西社長、(中)(右)貴司氏ご夫婦

川崎市産業振興会館
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