ミクロの世界を家庭用テレビで5,000倍まで観察できる顕微鏡「科学のカメラ」発売中!
代表取締役
渡辺 忠一
事業内容 | 光学機器の設計、製造、販売 |
企業名 | 有限会社 シーロシステム |
創業 | 1987年(昭和62年)10月 |
所在地 | 本社 川崎市中原区下小田中4‐7‐14 工場 川崎市高津区蟹ヶ谷157‐3 |
電話 | 044‐751‐3594(本社) 044‐753‐5920(工場) |
従業員 | 4名 |
代表 | 渡辺 忠一(ワタナベ タダイチ) |
URL | http://www.coelo.jp/ |
「当社は、スマートフォンやデジタルカメラなどに使われているカメラ用レンズの組立に必要な光学測定器等の設計、製造、販売まで一貫して行っております」と渡辺社長は胸を張る。
現在、光学測定器として、コリメーター、オートコリメーター、レーザーオートコリメーター、スポット測定器、解像力投影機、レンズ調整器、焦点距離・曲率半径測定器、顕微分光測定機、LED光源装置、デジタル顕微鏡(マイクロスコープ)等を製造販売している。
コリメーターは、レンズの焦点にスリットかピンホールを置き、入った光を平行光線にする装置だ。
社名の由来は太陽光を1ヵ所に映し出す装置「シーロスタット」
「福井県の高校を卒業後、光学メーカーに就職して技術屋として働き始めました。当時、東京タワーの望遠鏡や福井天文台の天体望遠鏡の据付設置を担当しました。その後、この光学メーカーの従業員4人が設立した会社に転職しました。その会社では、外国製の映写機を使っていた映画館から映写機の修理や光学調整の仕事を頂いていました。その際に使用する光学測定器オートコリメーターの製造販売、レンタルも行っていました。」と渡辺社長は語る。
オートコリメーターは、対象物の微小な角度差、振れなどを測定し、真直度、平行度、たわみなどを検査する光学測定器だ。しかし、テレビが登場すると映写機の修理や光学調整の仕事は減少し、その会社の光学事業部は閉鎖することが決まった。そこで、渡辺社長は手を挙げて事業を引き継ぎ、同僚と二人で会社を設立した。専務取締役として陣頭指揮を執り、借入金の保証人となり、毎月、損益分岐点売上高の達成に邁進した。
その結果、コンパクトディスク(CD)用光学レンズ測定器の販売量が大幅に増えて、借入金を完済できた。その時点で社員数は25人に増えていた。これを機に渡辺社長は独立を決意した。
「独立後すぐは知り合いの電気屋さんの所に間借りしました。半年後には現在の下小田中に工場を見つけ、1987年10月に会社を登記し、法人として活動を開始しました。独立したての頃は幾つかの会社の社長様から光学機器の製作依頼の仕事が頂け、幸運であり、有り難く思いました。その後、オリンパス様や他の会社様からもコンスタントに仕事が入るようになり、自社でも製品開発を行い、何点かはオリンパス様に採用となり、海外にも製品は行っています」と渡辺社長は笑顔で語る。
社名の由来は、シーロスタットと呼ぶ太陽光を1ヵ所に写し出す装置で、太陽観測に用いる。「プラネタリウムは、星や惑星をドームの中に写し出す装置で、今では誰もが知っていますが、シーロスタットやヘリオスタット(太陽光を反射して一定の方向に送る反射鏡)などの装置は光学の専門家しか知りません」と渡辺社長は丁寧に説明する。
デジタルカメラ用レンズ向けスポット測定器を100台以上販売する
当社は光学測定器に関する加工技術やノウハウを蓄積しているので、競争優位性を維持できている。その証拠に、スポット測定器は、デジタルカメラのレンズ測定用に複数の大手光学メーカーに販売した。渡辺社長は前職で培ったCD用光学レンズの測定技術を応用した。大手光学メーカーからの仕事は試作機から10台程度までは受注できたが、自動機になると発注は来なくなった。それでも100台以上のスポット測定器を製造販売できた。
スポット測定器以外の売れ筋製品は、コリメーター、オートコリメーター、レーザーオートコリメーターなどのコリメーターシリーズだ。現在もオートコリメーターの受注がある。当社の装置は故障しないことが特長であり、修理の依頼は無い。
しかし、他社が販売を中止した装置の修理依頼は来る。例えば、他社が販売を中止した干渉計のレーザーを交換する仕事だ。レーザー交換の際の光学調整は技術的に困難なため、他社では簡単に出来ない。また、メッキ後のレンズ表面の反射率を測定したい企業からの依頼で、他社製の反射率測定器(干渉計)を評価するために、反射率データを試験測定する仕事にも取り組む。当社の光学測定器に関する専門的な知識量と技術力を顧客が高く評価している。川崎市に立地した理由は、川崎市中原区木月住吉町の団地に住んでいたからだ。また、前職時代の外注先が東京都城南地域や川崎地域に多くあったことも影響した。但し、仕入先や加工先が元の会社と重複しないように新規開拓し、川崎地域に集約した。
「当社は、光学測定に関する細かい作業や目による作業に自信があります。少量の特注品にも対応できます。一番重要な事は当社が設計・製作した光学測定器が検収時に不具合があった場合、即座の設計変更と部品加工に対応できる事だと思います。現在は、開発の仕事は少なくなり、部品製作の治工具の設計、干渉計の修理などを行っていますが、今後は自社製品の販売に注力する所存です」と渡辺社長は熱く語る。
医療器具「カテーテル」の製作ノウハウを確立、試作器と治工具を譲渡する
企業理念は、「過度の利潤を追求するより適正な価格で営業を行う事」だ。当社の強みは、顧客が要求する装置の設計、製作、光学調整まで一貫して出来る事だ。最も苦労したのは、7~8年前に取り組んだ医療器具「カテーテル」の製作だ。医師の要望を聞いた企業から受託した。医療機器に使用する全ての材料には規格がある。例えば、鉛フリーのレンズ、生体に無害な接着剤など最適な材料を選択するのが大変だった。その結果、試作器と治工具の製作に1年を要した。最終的には、試作器と治工具を譲渡して対価を得た。
今後強化したい分野は、一般教材になるような光学機器の開発、製造、販売だ。一つ目は、簡単にミクロの世界を観察できるデジタル顕微鏡「科学のカメラ」の販路開拓だ。製品の特徴は、①組立式、②家庭用テレビで見える、③レンズの組み合わせで倍率200、2,000、5,000倍になる、④LED光源の落射・透過照明が可能、⑤XYステージZ軸微動装置付だ。二つ目は「非接触型厚み計測器」の製品開発だ。「科学のカメラ」の製作過程でアイデアが浮かんだ製品で、現在開発中だ。
「夢は太陽光投影装置の開発です。シーロスタット又はヘリオスタットを使って、スクリーンに太陽を100倍から200倍に写します。子供達が太陽の黒点を観測できる理化学実験器材として開発、製造、販売する計画です」と語る渡辺社長は持ち前のチャレンジ精神で長年の夢の実現を目指す。
製品写真
写真:デジタル顕微鏡「科学のカメラ」